「モンゴルで親日派台頭~政府に留学組400人~」(日経新聞7.26)を読んで

新モンゴル高校「ハイキング」

新モンゴル高校「ハイキング」

7月26日の日経新聞朝刊で「モンゴルで親日派台頭~政府に留学組400人 ビジネス橋渡し~」という記事を読みました。今年3月にウランバートルで大勢の日本語教育関係者とお会いした私は、特別の思い持って読みました。

実は、モンゴルでは、ここ数年日本語学習者数は減少しているのです。ちょっと国際交流基金の報告記事から「最新傾向」「外国語の中での日本語の人気」を引用して、ご紹介したいと思います。(下線は筆者による)

http://www.jpf.go.jp/j/japanese/survey/country/2011/mongolia.html

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★最新傾向★
2009年には、国際交流基金により海外日本語教育機関調査を実施したが、2006年からの変化として、機関数は90機関から66機関に、教師数は 354名から238名に、学習者数は12,620人から11,604人に減少している。モンゴルにおける日本語教育は、2006年の同調査実施時には、 2003年から大きな伸びを見せたが、ここに来て減少傾向にある。機関数については高等教育の減少が著しいが、主に私立大学での日本語教育機関数が減少していることによるものである。

★外国語の中での日本語の人気★
初等・中等教育機関では英語の学習者数が最も多く、中国語、韓国語、日本語、ロシア語などが続いている。近年は中国の孔子学院が進出してきており、中国語を学ぶ学生が増えつつある。また、私立の小中学校で、中国語イマ-ジョン教育を行う学校が増えており、中国語の隆盛につながっている。
また、富裕層の増大と共に、子供を海外の学校で学ばせるケースも増えている。1990年以前の留学先はソ連ほか社会主義国に限られていたが、近年は中国と韓国が人気で、韓国への留学生数は年間1,700人(朝鮮日報2008年4月24日)に上る。その他の留学先としては、アメリカ、ドイツなどが挙げられるが、日本への留学生数は200951日現在1,282人となっている。これは、出身国別では第11位だが、人口比では世界第1位である(2009年 JASSO調査による)。

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新モンゴル高校「詩の朗読会」

新モンゴル高校「詩の朗読会」

減ってはいるものの、日本語学習者数は、11,604人であり、日本語教育への熱心さ、日本語力の高さには感心させられます。そのモンゴルの日本語学習者数を単純に世界の国・地域と比較すると、世界上位国には程遠い状況です。しかし、人口280万人のモンゴルと、13億5千万人の中国や2億3千万人のインドネシアとの単純比較であることを考えると、当然の結果であると言えます。分析にあたっては、人口比、これまでの経緯などさまざまな角度から行うことが重要であり、それに基づく対応・支援が求められてきます。

今、モンゴルの内閣では閣僚2人が日本留学組。政府全体では日本語が研修語だった人々による語学閥、いわゆる「ジャパンスクール」関係者の数は約400人と新聞記事は伝えています。国費と私費をあわせた留学者は累計でなんと13万7千7百人に達すると言います。そして、「日本留学組の真面目さや緻密な仕事ぶりが政府や企業で話題になっている。日本の評価をあげるソフトパワーだ」と高く評価されています。

既に「タバントルゴイ炭鉱」「新国際空港」「石炭鉄道」「高架橋『太陽橋』」など日本企業とモンゴルとのプロジェクトが次々に始まり、今まさに太いパイプが生まれようとしています。だからこそ、そうした動きを支える日本語教育・支援が、しっかりと行われていくことが重要なのだと思います。

日本がモンゴルから国費留学生を受け入れたのは1979年。あれから30数年が経ち、その時日本語を学んだ人達が、今のモンゴルを支えるようになって、「大きな影響力」を持ち始めているのです。果たして今の日本は、こうした「深い日本理解者」を増やすことの大切さを、どのぐらい真剣に考えているのでしょうか。人が育つには長い、長い時間がかかるということを、もっと認識すべきだと考えます。今回のモンゴルの記事を読みながら、世界各国、そして日本社会における「日本理解者」の存在意義、そのためには「日本語・日本文化」の普及促進に向けて一層の努力が必要であると、強く思いました。

新モンゴル高校「安部昭恵氏を囲んで」

新モンゴル高校「安部昭恵氏を囲んで」

この記事に載せてある3枚の写真は、ウランバートルで知り合った関内彩佳さんに送っていただいたものです。関内さんが日本語教師として働いている新モンゴル高校のことは、次のサイトをご覧ください。最初の部分だけ、ご紹介したいと思います。

http://www.jasso.go.jp/eju/riyou_tonichimae_p1910_shin_mongol.html

「新モンゴル高校は2000年秋、数多くの日本人有志の方々のご支援により設立にいたりました。モンゴル初の3年制日本式高校として開校し、5期の卒業生を輩出しています。社会体制移行に伴う混乱期にあるモンゴルにおいて、国の自立・発展を支える若者たちの育成が急務となっています。「体制移行後の新たなモンゴルの未来を担う人材育成」を目標とし、学校名を「新モンゴル」と名付けました。卒業生が日本を始め、海外の大学へと羽ばたけるよう、従来の2年制の課程を3年制に改め、国際水準のカリキュラムを取り入れています。」(新モンゴル高等学校・校長、ジャンチブ・ガルバドラッハ氏による)

参考:

◆「モンゴルの日本語教育は熱い!」http://www.acras.jp/?p=1458

◆「新モンゴル高校のサマースクールで大学生募集!」http://www.acras.jp/?p=1355

◆「モンゴル派遣の日本語講師急募<名古屋大学日本法教育研究センター>」http://www.acras.jp/?p=1336

 

 

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