「多様性のあるやさしいまちを目指して」 ~第9回 なかの多文化共生フォーラム」に参加して~

12月8日(水)に、「第9回なかの多文化共生フォーラム~多様性のあるやさしいまちを目指して~」が行われました。ポスター第1部は、コロナ禍でも「今、自分達に何ができるのか」と仲間とともに問い続け、活動し続けてきた山脇ゼミ(明治大学)の活動報告です。昨年も、アクティブな活動に驚きましたが、今年は、活動がさらに厚く、広くなっていました。

※    昨年の報告は、こちらをご覧ください。

    http://www.acras.jp/?p=10632

今年実施された第9回フォーラムのプログラムは以下のとおりです。

第1部 山脇ゼミの活動報告

第2部 身近な暗黙のルールから考える多文化共生

             *一般参加者とゼミ生のトークセッション

                    *有識者によるパネルディスカッション

 

 

■広がりと深まりを見せるワークショップ~「協働」がアイディアとパワーを生み出す!~

 

始まる前に、みんなで話し合い(明治大学中野キャンパス)

始まる前に、みんなで話し合い(明治大学中野キャンパス)

例年通り「区長と外国人住民との懇談会」が行われましたが、これは2014年にスタートして、今年が8回目となります。このフォーラムも第9回であり、「始めたら続ける。活動は、後輩に引き継いでいく」という姿勢は、素晴らしいと思いました。山脇さんの話では、「このゼミに入ると、あんなことがやれる!」という思いで入ってくる学生も増えてきているそうです。

 

「継続する力」に加え、「発展する力」を強く感じました。昨年もコロナ禍の中、オンラインを活用して、「小学生などへのワークショップ」が実施されましたが、今年のワークショップはさらに幅が広がり、内容も充実したものになっていました。対象に関していえば、「小学3,4年生」「小学5,6年生」「中学生」「高校生」、そして区役所職員向けと、実に多様であり、それぞれに複数回行われるというものでした。

 

内容的にも、多文化共生をテーマに、アンコンシャスバイアスについてともに考えたり、やさしい日本語の意義を伝え、実践をしながら考えていったりする等、多様性に富んだものとなっています。中野区役所におけるワークショップでは、まずは職員の方に「役所内の文書」と向き合ってもらい、「どう書き直したら、区民の方々に分かりやすくなるのか」を実践してもらいました。こうしたことを大学生が企画し、関わっていくことは、とても素晴らしい

ことだと思います。

 

 

■さらに新しいことに挑戦!~アプリ作成、「ちえるあるこ」の計画

 

スタートする前に、いくつもの教室に分かれて作業を始めました。

スタートする前に、いくつもの教室に分かれて作業を始めました。

ワークショップがさらに膨らんだだけではなく、「多文化共生+ゲーム」という発想から、アプリケーションの開発も行っているのだそうです。<RPGの世界を楽しみながら学ぶ「やさしい日本語」と「多文化共生」>を考えるとは、さすが大学生ですね。

 

他にも、毎年参加している「東京都ダイバーシティ・プレゼンコンテスト」では、「ちえるあるこ」を中野の町で実現させることを提案しました。「ちえるあるこ」とは、エスペラント語で「虹」を意味しますが、ここには「交流エリア」と「協働エリア」を作り、単に交流するだけでなく、外国の方も「ともに作り、ともに活動する仲間」として関わってもらいたいという大学生の思いが込められています。ここでは、「ちえるあるこ」についての詳しい説明は省略し、次の報告を楽しみに待つことにしたいと思います。

 

こうしたことを実現するために、中野区の助成金獲得に向けて努力したり、アイディアを練り上げたり、大学生のうちから「社会とつながる力」を仲間とともに磨いていくことは、とても大切だと改めて思いました。

 

また、アクラスでも紹介をした「ラップミュージックビデオ『やさしい せかい』の制作に関わり、今はセミナーをするなど普及にも力を入れています。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

電通と山脇ゼミ(明治大学)の連携で、ビデオ「やさしい せかい」誕生!

~日本語学校の留学生も協働を楽しむ~

http://www.acras.jp/?p=12170

 

 

■第2部「身近な暗黙のルールから考える多文化共生」~芝園団地の事例から(岡崎広樹さん)~

3

第2部は、前半はブレイクアウトルームに分かれて、「共生社会とは何か/実現のためには何が必要か」など、それぞれの体験に基づいて話を進めていきました。高校生、大学生から、シニアまで、私のグループは、年齢層も経験もさまざまな6人のメンバーが、自由に話し合い、ともに豊かな時間を過ごしました。

 

こうした「自分自身で考えてから、2人のパネリストの話を聞く」というスタイルは、「自分ごと」として社会づくりを考える上で、とても良いデザインでした。こうした企画、人選もすべて学生さん達が決めていったことだと伺い、感心しました(もちろん日頃から、外部の先生方の特別講義が行われ、学生さんの中にさまざまな選択肢があり、イメージ化ができていることがあるのですが)。

 

パネリストのお一人は、芝園団地自治会の事務局長を務める岡崎広樹さんです。商社マンとしての海外勤務、そこで、日本人と他の人々との働き方の違い、さまざまな考え方の違いに触れ、多文化共生に関心を持つようになった岡崎さん。2013年に芝園団地の話を耳にし、「芝園団地では、一体何が起こっているのか」を知りたいと考え、出かけて行ったのですが・・・。何とそこに住み始め、自治会活動に関わり始めたのです。それは、7年前のことでした。

 

4,600人の住人のうち、2,600人が外国人という芝園団地では、さまざまな課題がありましたが、実は、「日本人:外国人」のコミュニケーションの問題というより「世代間の問題」だったのです。高齢者の日本人と若者の外国人という現実がありました。

「そうだ!日本人同士だって、顔見知りになっていないじゃないか」

と考えた岡崎さんは、まるで日本の将来の縮図のような芝園団地で「日常の中から多文化共生のタネを拾ってもらうこと」に力を注いでいきました。

 

「この7年、変わったようで、変わっていない。まだまだです」と語る岡崎さんですが、自治会に入った2014年には、外国人理事はゼロでしたが、今では、9人中4人が外国の方だそうです(バングラデシュ、ガーナ、中国)。これは大きな進展であり、まさに「ともに地域社会をつくる仲間」として、町づくりに参画している良い事例であると言えます。

 

 

■第2部「身近な暗黙のルールから考える多文化共生」

~高校3年で立ち上げた「カルモニー」(岩澤直美さん)~

 

もう1人のパネリストは、カルモニー(Culmony)代表の岩澤直美さんです。カルモニーとは、カルチャーとハーモニーをミックスした言葉であり、「異なる人々が対話を通して、違いを価値だと実感できる社会を実現すること」をめざして岩澤さんが高校1年の時に立ち上げた団体です。

 

岩澤さんは、チェコで生まれ、日本、ハンガリー、ドイツで育ち、さまざまな文化の中で育ちました。パネルでは、ご自身の体験を交え、「小さい時に、どんな体験をするかがとても大切だ」と語ってくれました。それにしても、高校1年で「人・社会をつなぐ団体」を立ち上げてしまうエネルギー、アイディア……すばらしいですね!

 

そんな岩澤さんは、こんなことも伝えてくれました。

 

私がハーフだと分かると、今でも毎日、こんな質問が飛んでくるんです。

・何人ですか。どこの国の人ですか。

・ハーフですか。

・日本語は、どこで学んだんですか。

・親はどうやって出会ったんですか。

・外国語名は何ですか。ミドルネームは?

 

日本社会で多文化共生を進めていくには、まだまだすべきことが山積しています。多くの人が出会い、対話をし、まずは知り合うこと、違いを認め合い、そこに価値を見いだすことが大切だと、改めて思いました。その上で、多様な人々が協働することで、一歩も二歩も進んでいくのではないでしょうか。

 

 

♪   ♪   ♪

 

今回もオンライン開催でしたが、私は中野キャンパスから参加させていただき、終わってからは山脇さん、酒井区長、岡崎さん、そしてスペイン語通訳のセサルさんと、5人で「対話」を楽しみました。「どうやって、多様な人々の力を生かし、みんなにとって住みやすい町づくりを進めるか」について話し合っていたとき、区長が「<橋渡し役>が必要なんですよ。つなぐ人が大切ですね」とおっしゃったことが印象に残りました。

 

「人つなぎ」を軸に活動をしてきた私ですが、これからはさらに一歩進めて、さまざまな「橋渡し役」の誕生に向けて、さらに力を注いでいきたいと思いながら、中野の町を後にしました。

 

 

Comments are closed, but trackbacks and pingbacks are open.