個性豊かな四国大学を訪問して ~「藍の家」「書道文化学科」の魅力~

12月1日、徳島市にある四国大学にお邪魔しました。それは、文学部の学生さんを対象にした特別授業のための訪問でしたが、前泊をし、朝からずっと大学内を見学させていただくことになりました。授業を見せていただいたり、学長をはじめ、さまざまな方と意見交換をさせていただいたり、とても有意義な時間を過ごすことができました。そこで、皆さまに「藍の家」と「書道文化学科」についてお伝えしたいと思います。

 ※写真は、すべて筆者が撮ったものであり、掲載については許可をいただいてあります。

 

藍の絵概観①

■藍染研究施設「藍の家」

~阿波の伝統を守り、育む活動~

 

私がぜひ見たいと思っていたのは、「藍の家」でした(1979年設置)。藍の家の1階には2つの実習室があり、4基の藍甕が備えつけられています。学生さんたちは、ここで自ら藍を仕込み、作品制作に取り組んでいくのです。

 

 

藍染実習室

藍染実習室

主にオープンキャンパスでは一般社会人、出張授業やオープンキャンパスなどでは、大学進学希望者はもちろんのこと、小中学校児童生徒にも開放し、一緒にハンカチを作るなど藍染の普及に努めているのだそうです。藍の研究に取り組む大学は散見されますが、四国大学のように研究に特化するのではなく、作品作りにも力を注ぎ、さらには、地域の伝統を守ることを使命と考え、普及に尽力していることは特筆すべきことだと思います。

 

「藍の家」を拠点に学生指導や作品づくりに力を注ぐ有内さんに、2階の展示品の説明をしていただきました。阿波藍が地域の伝統として根付き、「藍といえば阿波」と言われるまでには、昔から今に至るまで、さまざまな工夫があったのだと、改めて思いました。

 

「『藍の家』がある大学って、魅力的ですね」と、学長にお伝えすると、「いや、できれば博物館にしたいんですよ」というお返事が返ってきました。いつの日にか、今度は「藍の博物館」にお邪魔したいものです。今後、さらに藍を学ぶ人や藍に関心を持つ人々が増え、「ジャパン・ブルー」が世界に広がっていくことを願っています。

2階の資料展示室に飾ってある「お布団」

2階の資料展示室に飾ってある「お布団」

 

 

参考:徳島県のサイトには、「藍の未来」という記事が載っています。関心のある方は、こちらをご覧ください。

https://www.pref.tokushima.lg.jp/kenseijoho/koho/kohoshi/5008062/5008632/

「藍の家」を拠点に、学生への指導や自らの作品づくりを続けていらっしゃる有内さんとご一緒に。

「藍の家」を拠点に、学生への指導や自らの作品づくりを続けていらっしゃる有内さんとご一緒に。

藍の家で元木さんとご一緒に記念撮影

藍の家で元木さんとご一緒に記念撮影

 

 

 

 

 

 

 

■書道文化学科1年生の作品に感動!     ~幅広い専門科目に育てられ……~

 

四国大学では、「東洋の書道文化を総合的に探究する」ことを目的に、20年前に書道文化学科が設置されたのだそうです。書道文化館の1階には広いギャラリーがあり、ちょうど1年生の作品がたくさん飾ってありました。それぞれに個性があり、みごとな作品で、とても今年4月に入学した1年生の作品とは思えないものばかりでした。DSC_0915

 

私が訪問した時間帯には、書道の時間はありませんでしたが、料紙(加工を施した書道用紙)を作っている授業を見せていただきました。少人数である上に、2人の教師がついて丁寧に指導している光景を見て、ちょっとお尋ねしたところ、「一人ひとりの作品に向き合うには、とても一人では……」という答えが返ってきました。さらに、去年からのオンライン授業について、次のように話してくださいました。

 

去年は大変でした。もちろん書道など書画カメラを使って手元を写したり、動画を作成したり、いろいろ工夫をしました。でも、やっぱり書道や物づくりの授業は、対面ですよね。特に、今日の授業のように、紙を選んで貼り合わせて・・・といった作業は、対面でないとできません。オンラインでは、手触りや奥行きは伝わりませんから。書③

 

「手触り」と「奥行き」は、すべての教育において忘れてはならないことだと思います。

オンライン授業に慣れきってしまった今、対面でないことで得にくくなっていること、手触り、香り、そしてモノ・コトの奥行きなどに気をつけることが大切だと改めて思いました。

 

 

 

 

■毎年、「青春川柳コンクール」を実施~上位入賞した全作品を、先生方で揮毫!~

 

廊下を通ると、「青春川柳コンクール」という文字が目に飛び込んできました。そして、額に入った入賞作品がず川柳③らりと廊下にかけてありました。この「青春川柳コンクール」は、2003年に始まり、今年で19回目となるそうです。年齢を問わず、地域を問わず、誰でも応募できるのだそうです。「もっと早く知っていたら、日本語学校の留学生にも応募を勧められたのに・・・」と、これまでコンテストの存在を知らなかったことを残念に思いました。

 

川柳コンテストは、他でも実施されていますが、四国大学でのコンテストは選句した後、入賞作品はすべて書道文化学科の先生方が揮毫し、色紙となって手渡されます。入賞者は、色紙に書かれた「自作の川柳」を見て、嬉しさも倍増したことでしょう。2020年度の『青春川柳作品集』をいただきましたが、そこには一つ一つの句に丁寧な評が記されていました。

大賞となった青春川柳

大賞となった青春川柳

作品集には、入賞作品10句、入選作品40句が載っています。先生方皆さんで、コンテストの実施に当たっていらっしゃるのが、目に見えるようです。ここで、受賞した残りの8句も紹介したいと思います。どうぞ「青春川

学長賞を受賞した青春川柳

学長賞を受賞した青春川柳

柳」をお楽しみください。

 

*理事長賞

故郷からお取り寄せする母の味(光 風 雫)

 

*副学長賞

先生の怒らんけんは信じない (丸山 暁)

 

*文学部長賞

漱石の髭をなぞって五時間目 (菅 伸明)

 

*文学部長賞

眠くなりノートの文字が古代文字(八幡 光)

 

*学生支援担当部長賞

マスクよりホントは欲しい支援金 (茨木 拓行)

 

*学生支援担当部長賞

休校で募るばかりの片思い (ニャンツ)

 

*図書館長賞

十二支に入れぬ猫を抱き寄せる (山下 舞桜)

 

*図書館長賞

未練などないがしょっちゅう夢に出る (角森 玲子)

 

 

 

■「一人一人の顔が見える」学校文化~「2021年日本留学アワード」受賞~

 

四国大学のアチコチの授業を見せていただいたり、応接室でお話を伺ったりする中で、学生への温かいまなざしを

松重学長ともお話をさせていただきました。

松重学長ともお話をさせていただきました。

感じました。松重学長は、お話の中で「学生と教職員とのコミュニケーション」「地域社会への貢献」などを大切にしていること、AI応用人材の育成についても熱く語っていらっしゃいました。

 

確かに、大学のサイトのグローバル・バーを見ると、そこに「留学・国際交流」と並んで「社会・地域連携」という項目がしっかりと並べられています。クリックしてみると、学生さんのさまざまなボランティア活動の紹介もありました。海岸の清掃、果実の収穫支援ボランティアなど、地域性を強く感じました。

 

こうした「一人ひとり顔の見える触れ合い」は、この大学で学ぶ留学生からも高く評価され、日本語教育振興協会主催「2021年度 日本留学アワード【私立大学文科系部門】」で入賞を果たしました。

 

※「日本留学アワード」は、日本留学をめざす外国人留学生の環境整備に少しでも貢献したいという思いで、2012年に始められました。毎年、「留学生に勧めたい進学先」として日本語学校の教職員が投票をして選ばれることになっており、今年度は、166の日本語学校から450票が集まり、延べ50の大学・専門学校が発表されました。

https://www.ryugakuawards.org/

 

介護福祉専攻の留学生たちの学び、日本語教員養成課程の学生さん達の取り組みなど、まだまだお伝えしたいことがありますが、ここでは「藍の家/書道文化学科/青春川柳コンクール」の話題に留めることとします。

四国大学

 

 

 

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