モンゴルの日本語教育は熱い!

ドルゴル先生(モンゴル日本語教師会会長)のご挨拶

ドルゴル先生(モンゴル日本語教師会会長/モンゴル国立大学)のご挨拶

今年3月初旬、モンゴルのウランバートルに出かけました。マイナス15度という時期でしたが、その寒さを感じさせないほど、2日間にわたるモンゴルの日本語教育シンポジウムは、充実した時間でした。これまであまりモンゴル日本語教育事情を知らずに過ごしていた私には、驚くことがいっぱい! モンゴルの人達の日本語力の高さ、ネットワークの素晴らしさ、日本語教育への熱い思い……。「これまでなぜ日本にあまり知られていなかったのだろう? これはぜひ発信しなければ!」と思いながら、年度末・年度始めで延び延びになっていました。

■学習者数だけでの比較は片手落ち!

「日本語教育の課題」は・・・

「日本語教育の課題」は・・・

国際交流基金の2009年度調査によると、日本語学習者は11,604人となっています。世界の日本語学習者ランキングを見ると、上位3カ国は、韓国=965,014人、中国=827,171人、インドネシア=716,353人となっています。こうした国と比べると、いかにもモンゴルの学習者数は少ないのですが、そもそも人口が違います。モンゴルの人口は2,801,600人(2011年調査)、やはり学習者数を人口比で考えると、かなり日本語を学ぶ人達が多く存在していると言えます。国際交流基金の2009年度の結果を見てみると、「日本への留学生数は2009年5月1日現在1,282人となっている。これは、出身国別では第11位だが、人口比では世界第1位である(2009年JASSO調査による)」という記述がありました。単に数字だけで比べるのではなく、さまざまな角度から比較することが重要なのだと改めて思いました。http://www.jpf.go.jp/j/japanese/survey/country/2011/mongolia.html

講演をする鄭起永先生

プサン外国語大学の鄭起永先生

■すばらしい日本語力にびっくり!
今回モンゴルを訪れ、「日本語教育シンポジウム」で大勢のモンゴル人の日本語の先生にお会いしました。そして、その日本語力の高さには、本当に驚きました。言語的知識だけではなく、コミュニケーション力も高く、そのバランスの取れた日本語力には、舌を巻きました。シンポジウム開始前に私は、「講演では、どの程度のスピードでお話しすればいいでしょうか。注意すべきことがあったら、教えてください」と、スタッフの方にお聞きしたところ、「何も心配くださらなくて、結構です。先生のいつもの調子でなさってください」という返事が返ってきました。そのとおりで、質疑応答の時間も実に活発に意見交換がなされました。素晴らしい日本語力は、モンゴルの方の熱心さと、日本語との言語間距離の近さ、日本語教育の質の高さによるものでした。

■「モンゴル日本語教育スタンダード」にチャレンジ!

まだまだ旧態依然とした文型積み上げ式の授業も行われているようですが、「真の日本語力が

講演をするエルデネバートル先生

内モンゴル大学のエルデネバートル先生

つくような授業を展開したい」と、さまざまな新しい取り組みをしています。2008年よりモンゴル日本語教師会の一組織である日本語教育研究会のワーキンググループが中心となって、スタンダードの作成作業を進めてきているのも、その1つです。その成果として2012年度には、「モンゲニ統合学校」と「メルゲド総合学校」で、新しい教育実践が開始されました。今回のシンポジウムでは、この2校からDVDを用いての実践報告がありました。これまで行われている方式・コンセプトと異なる実践を埋め込んでいくのは、苦労が伴います。それも、仲間と一緒に共有しながら進めていくからこそ、「小さな一粒」が「大きな木」になっていくのだと思います。<モンゲニ・メルゲド → ウランバートル → モンゴル>と、少しずつ円を広げていこうという心意気に感動しながら、授業実践に聞き入っていました。

では、「モンゲニ統合学校」実践報告の一部をご紹介したいと思います。

ビデオを見せて実践報告をするモンゲニ学校の先生

ビデオを見せて実践報告をするモンゲニ学校のオユンゲレル先生

○スタンダード授業の流れ
復習 → Can-doの提示 → 気づきを促す活動をする → 学習者から新しい言葉を引き出す → 学習者同士で活動 → 発表 → 評価(自己評価・教師評価)

○学習者の変化
・話す能力が伸び、自発的に勉強するようになった。
・勉強した話題について自分のことを自由に話したい気持ちが表れた。
・話す機会が増加したため定着しやすくなった。
・学習者同士で話すようになり、遠慮しないで楽しく話すようになった。

教師の変化
・トピックに合わせて日本文化、習慣、社会について紹介しやすくなった。
・学習者中心の授業をすすめるようになった。

さまざまな機関のネットワーク、協働のすばらしさ!

バトトルガ先生の総括「今回のキーワードは……」

バトトルガ先生(モンゴル国立大学)の総括「今回のキーワードは……」

今回のシンポジウムの主催は「モンゴル日本語教師会」、共催として「モンゴル・日本人材開発センター」、そして後援は「在モンゴル日本国大使館」「国際交流基金」でした。私が特に感心したのは、高等教育機関と初等中等教育機関との連携の素晴らしさです。今回のシンポジウムの企画・運営はもちろんのこと、さまざまな形で協働が進められています。ともに夢を語り合い、「モンゴル日本語教育を盛んにするために力を合わせて頑張ろう!」という思いが、しっかり伝わってきました。また、国際交流基金とJICAとの連携も、モンゴル日本語教育を支えていると言えます。職掌分担を明確にしながら、共に手を結ぶことの大切さを改めて痛感しました。

実は、この連携のお陰で、『できる日本語』「できること一覧」のモンゴル語版が生まれました。シンポジウム終了時に、JICAの浮田さんから「これ、モンゴル語版があるといいですね。モンゴルの先生にお願いしてみましょうか」と嬉しいご提案がありました。その話を聞いたオノン先生が、「私がやりましょう!」と、引き受けてくださったのです。そして、5月上旬に初級、初中級のモンゴル語版が送られてきました。早速アクラスのホームページにアップしましたが、「えっ、モンゴル語の訳もあるんですね。すごい!」と、いろいろな方から感想を頂きました。これもモンゴル国内の日本語教育のネットワークのお陰です。http://www.acras.jp/?p=1073

さらに、4月、5月には、以下のような記事を載せましたが、これも人的ネットワークのお陰です。こうして日本語教育において、どんどんモンゴルと日本の結びつきが深まっていくことを願っています。

・「新モンゴル高校のサマープログラムの大学生募集」http://www.acras.jp/?p=1355

・「モンゴル派遣の日本語講師急募!<名古屋大学日本法教育研究センター>    http://www.acras.jp/?p=1336

みんなで記念撮影

みんなで記念撮影

 

 

 

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