1月31日(金)は、恒例のイーストウエスト日本語学校の落語鑑賞会でした。もう四半世紀前から、毎年1月になると上級クラスの学習者を対象にした落語鑑賞会が開かれています。昔、私がビジネスマン向けの講演会で話をした時に、たまたま聞きに来てくださっていたのが桂扇生師匠です。終わってから挨拶に見えた扇生さんと名刺交換をしながら、「そうだ!イーストウエスト日本語学校で、落語をやっていただこう!留学生は、どんなにか喜ぶことだろう」と即座に決心。扇生さんは、「あ、留学生に落語ですか。いいですよ。面白そうですね」と、即座に快諾してくださり、そのご縁が今でも続いているのです。
今年の演題は「まんじゅうこわい」と「ときそば」です。第1部は、まずは落語の歴史、説明、そして「まんじゅうこわい」を楽しみます。休憩を挟んで第2部が始まります。さまざまな小噺、落語で使う「手ぬぐい」と「扇子」の役割を説明しながら、落語の面白さを伝えてくださいます。そして、いよいよ留学生が高座に上がり、桂扇生さんとの掛け合いが始まりました。こうして留学生の緊張をほぐしてくださっているのです。さあ、いよいよ自作の小噺を披露となりました。実演者は、中国出身の顔凱(ガン ガイ)さん、担任教師の話によると、一生懸命話を作り、何度も何度も練習をしたそうです。
顔さんは、最初は緊張していたようですが、次第にリラックスしながら話を進めていました。これだけのものを一人で作り、演じるとは!そして、顔さんの小噺を聞き終わった扇生さんが、それをもう一度やってくださったことにも感動です。この臨機応変さ、教師にもとても大切なものですね。
では、ガンさんの作った小噺、3人の学生さんの感想をご覧ください。
(落語鑑賞会のあと学校まで戻り、4時間目の授業を行います。そこでは、
落語について話し合ったり、感想文を書いたりします。アップしたものは、
授業中に書いて提出したものであり、一切教師の手を加えておらず、その
まま載せてあります)
・顔凱さん(中国・男性)
・禹秀彬さん(韓国・女性)
・グェン ティ マイさん(ベトナム・女性)
・
参考:
これまでにも、タイ、ミャンマー、ベトナムなどいろいろな国の留学生が
高座に上がり、小噺を披露してきました。
「<留学生も高座に上がって小噺披露!>に湧く『留学生の落語鑑賞会』」
http://www.acras.jp/?p=5092 (2016.2)
◇ ◆ ◇ ◆
【中国から来た顔凱さんの小噺】
ええ、ところで、皆さんは親と喧嘩したことがありますね。
いつも自分が一理あると感じた時、親からの一言で反論ができなくなることもありますね。
ええ、これから、私が知っているお話をさせていただきます。
高校一年生の新一君という男の子の話です。
ある日、新一君が家に帰って、自分の部屋に戻ったら、あることに気がつきました。
部屋に置いてあったフィギュアが誰かに壊されていたんです。
それを見たとたん、頭に血が上った真一君は自分の部屋からリビングへ行って、
ソファに座っていた両親のところへ駆け寄って、大きい声で怒鳴ったんです。
新一:「お父さん、お母さん、私のフィギュアが壊れて(い)る?何で?」
お父さんは新聞を読みながら穏やかな声で返事をしました。
父 :「知らん、お父さんたちは新一の部屋に入っていないよ」
新一:「じゃ、誰がぼくの部屋に入ったんだ?今日誰が家に来た?」
母 :「そうだね。今日、林叔父さんが息子さんを連れて私たちの家に遊びに来たんだけど」
新一:「まただ。これで2回目だよ。今まで四つのフィギュアがあの子に壊されたんだ。
あの子はまだ四歳の子供だよ。なんでぼくの部屋に入ることを許したんだ?
あの子はどうしてこんなに腕白でいたずら好きなのかな。こんな子供は一度
頭を殴っておとなしくさせなければなきゃ、だめだよ。」
母:「そんなことしちゃ、だめ。林叔父さんは、かわいそうに五十歳になってやっと結婚できて、
この子が生まれて、すごく可愛がっているんだよ。」
新一:「あの子が悪いと話してるのに、なんで叔父さんのことを話すの?」
母:「新一は知らないかもしれないけど。林叔父さんは十五年前に結婚するつもりだったんだ
けど、突然家が火事になってしまって、結婚したかった相手が林叔父さんの家がない
ことを理由に、小林さんとの結婚を断ったんだよ」
新一:「そのことは知っているよ、前、お母さんに聞いたことがあるから。でも、あの子が
悪いことをしたのに、なんでずっと林叔父さんのことを話すんだ?林叔父さんは
ぼくには親切だけど、叔父さんに話して、このフィギュアのお金を払ってもらう
かな。」
ずっと新聞を読んでいたお父さんがついに我慢できなくなって、新一に言いました。
父:「新一、お前、しつこいなあ。15年前の火事は誰のせいだと思っているんだ?
15年前の火事は新一、お前がやったんだぞ。お前、わかってるのか?」
新一「……」
新一は何も言えなくなりました。
【留学生の感想】