<留学生も高座に上がって小噺披露!>に沸く「日本語学校落語鑑賞会」

 

イーストウエスト日本語学校では、毎年1月になると上級クラスは落語を楽しみます。そのきっかけは、私と桂扇生師匠との出会いでした。まんじゅうこわいビジネスマン対象の講演会で話し終えると、「日本語教育の話、面白かったです……」と扇生さんが挨拶に来てくださいました。訊けば何と落語家!私は即座に「留学生に落語を愉しむ機会を作ってくださいませんか」と、初対面にも関わらず、その場でお願いしたのでした。

 

こうして始まった落語鑑賞会は、そろそろ20年、今年は念願だった新しい企画を取り入れることができました。それは、「学習者自身が小噺を作り、高座に上がって披露する」というものでした。毎回、落語鑑賞会を学習者は楽しんでいますが、「もっと学習者が主体的に関われる形にしたい」とずっと思ってきたのです。

 

高座に上がったのは、タイ出身のモットさん。まだ来日して1年4か月にしかならないモットさんですが、実に楽しそうに3つの小噺をやってくれました。それも、観客(学習者)とアドリブでやり取りをしながら進めていったのです。では、「東西亭モット」さんの小噺を2つご紹介しましょう。本当は、スクリプトではなく、素晴らしい演技をビデオでお見せしたいところですが……。(関心のおありの方は、どうぞアクラスにお越しください)

 

♪   ♪   ♪

 

 

皆さんこんにちは。モットと申します。皆さんは、日本で留学していますね。皆さんは、1年間、入学式をあげて

高座に上がったモットさんと「掛け合い」をする桂扇生さん

高座に上がったモットさんと「掛け合い」をする桂扇生さん

から、いろいろなことがある、かもしれせんね。私は、まあ、電車に乗ったり、旅行に行ったり、髪を切ったりすることで、日本語が苦労したことがあります。これらのことは多分、皆さんも経験がある、かもしれませんね。

 小噺1 「いくつ」と「いくら」

 

私は日本に来たばかり、まあ、京都に旅行しました。その時は、帰る時は、えーと、お土産を買う、買いたいんですが、値段票がわかりにくいので、まあ、店員さんに質問しました。

私… あの、すみません。

店員…はい。毎度。

私… えーと、いくつですか?

店員…えっ?今年はもう51歳ですね。

私… いえいえいえいえ、何歳じゃなくて、これは何円ですか?

店員…あぁ!外国人ですよね。はい、これは500円ですよ。「いくつ」じゃなくて「いくら」ですよ。

私… はい、ありがとうございます。すみません。

みんなは、こんな経験がありますか。<口々に「ない」という答え>ないかもしれませんね。

 

小噺2 「床屋で」

いよいよ「東西亭モットさん」の落語が始まります。

いよいよ「東西亭モットさん」の落語が始まります。

私は、まあ、日本の大学を進学したいですから、日本のオープンキャンパスに行ったことがあります。行く前に、ちょっと私の髪が長いと思いました。その時は、床屋で切ってもらいました。その時は、私の日本語はよくできなかったと思います。

店員:こんにちは。どうなさいますか。

私… あの、すみません。ちょっとだけ、お願いします。

店員…はい、わかりました。

あと、10分ですよね。

店員…お客さん、いかがですか?

私… えっ?短すぎる!

店員…あの、さっきお客さんは、ちょっとだけ、と、おっしゃいましたよね。

私… わたしのちょっとは、ちょっとだけ切ってもらいたいんですが。

店員…あ、申し訳ないんですが、私はちょっとだけ残りほしいと思いました。お客さんは大丈夫ですか。

私… もういいです。大丈夫です。

皆さんは、日本で髪を切ったことがありますか。私と同じ経験がありますか。<口々に「ない」という答え> いいですね。

 

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終始笑顔で、観客の顔を見ながら楽しそうに小噺を披露していた「東西亭モット」さん、大学に進学してからも日本の文化を楽しみながら、留学生活を送ってくれることでしょう。扇生さんからも、「モットさん、うまかったねえ。みんなにすごく受けてたねえ」とお褒めの言葉をいただきました。私は、「そうだ!せめて羽織を借りてきておけば良かった」と反省することしきり。

 

今年も、客席の学習者は皆よく笑っていました。1年、2年の日本語学校生活の中で、楽しい体験としていつまでも心に刻まれていることでしょう。あるクラスでは、すぐに桂扇生に「お礼の手紙」を書きました。いくつかご紹介したいと思います。

※学習者が当日提出したものを、そのまま記載しています。

 

■R(インドネシア・男性)

桂扇生様へ

今回の落語鑑賞会を見ました。すごくよかったと思っております。すっと昔の日本のことに興味を持ちまして、卒業する前にたくさん日本の伝統的なこと体験してみたいと思いました。

本日の落語の中で一番よかったと思うのは、やっぱり出演の真似方だと思います。そばの食べ方とか、障子の開け閉め方とか、いろいろな道具と動作したりするのは大変感動しておりました。

 

 

着物の説明もしてくださいました。

着物の説明もしてくださいました。

■Kさん(台湾・女性)

桂扇生様の話を聞いて、すごくおもしろいと思います。顔や動作をみているだけで、話の登場人物が現れてきました。ネコの小話、面白くて覚えました。日本の文化と着物について、教えてくれて、留学生にとって話もわかりやすいと思います。もし、時間があれば、みなさんは是非行ってみてください。落語は2時間経ったのに、内容はすごい充実だと思います。

私は初めて見て、絶対忘れません。桂扇生様、本当にありがとうございます。

 

 

■F(ベトナム・男性)

落語を聞いて、よかったです。ネコの落語をベトナム語で聞いたことがありますが、初めて日本語で、そして桂扇生さんの話し方はとてもおもしろかったです。「まんじゅうこわい」を聞いて、最後に「あっ、なるほど」と気づきました。この話は「ドラエもん」にも出たということです。落語を聞いて、いつもの日本のイメージと全く違う面がわかりました。今度の落語で勉強になりました。

 

 

■A(ロシア・女性)

みんな大きな声で笑いながら、熱心に聞き入っていました。

みんな大きな声で笑いながら、熱心に聞き入っていました。

桂扇生様

お世話になります。

今日の落語は有難うございました!

落語が始まる前にネーティブ日本語でやっているので分かりにくくなると思いましたが、先生は私達がちゃんと分かるようにお話したので全部分かりました。有難うございます!

私が一番気に入った物語は「まんじゅう怖い」と言う物語でした。ロシアでも仲が良い友達もこう言う冗談をよくしますので「まんじゅう怖い」と言った人は頭が良いと思います。でもそれより気に入ったことは先生の役者としての動き方でした。私も女優になりたいので、とても良い勉強になりました。また見に行きたいです!

 

 

■Y(中国・男性)

桂扇生様

今日の落語鑑賞会はとても素晴らしいでした。桂さんの落語を聞くと、日本の江戸時代の伝統的な言語文化がもっと明らかにわかっていました。

私の国も落語みたいな演出「相声」というものがあります。しかし、国の相声は大体2人で話すことが多いです。桂さんは1人で何人のキャラクターも完璧できました。声からはじめて、働きの様子までもまねできて、私は本当に感心しました。

今日の1番好きなのは「まんじゅうこわい」です。桂さんの言葉はおもしろかったし、動きや表情なども生き生きとしていました。次の演出もぜひいってみたいと思います。

 

 

■P(韓国・女性)

私はらくごを見たのが初めてでした。ぜったいむずかしいと思ったんですが、せつめいといっしょうに聞いたらわかりやすかったです。

「まんじゅうこわい」はとくにはなしがおもしろかったです。韓国でもともだちとことばでよく遊んだ時が思い出しました。

「ときそば」のはなしは江戸時代のことばを知ってるようになってよかったと思います。

また桂扇生さまのえんぎがあたまの中にのこっています。はなしだけだったらそこまでおもしろくないかも知らないですが、おと、うごきのおかげでもっとおもしろかったと思います。

らくごがおもしろいというのをわかってよかったです。またきかいがあるとまた見たいと思います。

 

 

 

 

 

 

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