放送大学は「人財」の宝庫(2) :正規生として学び続ける90歳の矢代さん

今年も6月に、放送大学文京学習センターにて、面接授業「多文化共生と日本語教育:実践編」を行いました。いつもながら年齢、職業、学習目的などさまざまな方が参加しての授業は、まさに多様性の中での「対話」による学び合い。見事な化学反応が起こり、最後の「振り返りタイム」では、思いもかけない言葉が飛び出しました。

 

お昼休みにお仲間と

お昼休みにお仲間と

今回は、90歳の受講生、矢代聖子さんが、一番前で熱心に授業を受けていらっしゃる姿が印象的でした。休み時間にアレコレお話しするうちに、是非多くの方に矢代さんの学ぶ姿を知っていただきたいと思い、2日目のお昼休みにインタビューさせていただきました。

※私の面接授業は、朝9時50分から17時20分までの4コマ連続が2日間続きます。しかも、どんどんグループワークをしたり、発言をしたりと、参加型授業。矢代さんは、全く疲れを見せることなく、実に楽しそうに受講なさっていました。

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■戦争で学べなかったことの無念さ:いつかもう一度学校で学びたい!~

 

1929年生まれの矢代さんは、学徒動員で女学校2年生で学校での学びは終わってしまいました。学ぶことが大好きだった矢代さんにとって、それはとても残念なことであり、「いつか学び直したい」という思いをずっと持っていらしたと言います。しかし、ご結婚をされ、そして、35歳からは知り合いの会社で働き始めたことから、とても学校に通う時間的余裕はありませんでした。

 

何とそれから50年間お仕事を続け、満85歳でリタイア。そこで、「やっと時間ができた!」と、晴れて放送大学の正規生になられたのです。

 

 

■放送大学で学ぶことの魅力:新しい友達ができる楽しさ!

 

知的好奇心が旺盛な矢代さんにとって、放送大学は魅力的な科目がいっぱい!勉強したいものがずらっと並んでいましたが、最初に取ったのは、ヨーロッパの美術の歴史でした。そのうち、アジアのことも学びたくなり、韓国の歴史、中国の歴史と興味は広がっていきました。

 

所属している多摩学習センターでは、サークル活動も始めました。こうした活動を通して、新しい友達も飛躍的に増え、友達と語り合うことは、何物にも代えがたい貴重な時間となりました。矢代さんに、放送大学の魅力について伺ったところ、以下のような答えが返ってきました。

 新しい友達がどんどん増えることが嬉しいですね。若い友達と話ができ、時代に遅れないで

 いられること、本当に幸せです。また、新しい知識が得られることも、嬉しいですね。

 

 

 

■卒業は100歳の時!?:そして、一生学び続けたい!

 

十数年前にご主人をなくし、今はご主人の妹さんとご一緒にお住まいだそうです。90歳になった今でも、家事はご自分でなさり、お体が不自由になられた義妹さんのお世話もなさっている毎日です。「すごいです矢代聖子さんね!」と感心するクラスメイトに、「いえいえ、他の方の面倒をみられる存在でいられることって、本当に幸せですよ」と、笑顔で答えてくださいました。

 

文京学習センターまでは、片道1時間半の通学時間ですが、ちっとも苦にならず、元気に通っていらっしゃいます。近くの多摩学習センターは、30分程度で気楽に行けますが、こうして遠くの学習センターにも足を運んで学ぶことで、さらに学ぶ楽しさを実感することができるのです。「いつまでお続けになりますか」という質問に対しては、「歩ける間は学生でいたいと思っています。まあ、卒業は100歳でしょうか。学ぶに年齢は関係ありませんよね」とおっしゃっていました。

 

 

■好きな文学に夢中!:サークル活動は、楽しみ倍増

 

やりたいことは山ほどある矢代さんですが、今は、ロシア文学を楽しんでいらっしゃるそうです。プーシキン、トルストイ、ドストエフスキー……昔読んだものを読み返していますが、また新たな味わいがあり、読書の楽しみは格別です。

「眼も耳も若い頃のようには・・・」とおっしゃってはいますが、授業中も真剣に集中して聞き、休み時間に資料をさらに読み込んでいらっしゃる姿は、クラスメイトにとっても大きな刺激となります。ロシア文学を読むサークルもあり、そこで仲間と文学について語り合うのも、楽しみの一つです。

 

  一人で読んでいたら一つの本でも、感覚が偏ってしまいます。

  みんなで話し合うからこそ視野が広がっていくのだと思います。

 

 

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放送大学の卒業生の最高年齢は、101歳。今年3月に卒業なさった加藤栄さんですが、95歳で最初の卒業をしてから、コースを変えて学び続け、今年3月に4度目の卒業を果たされたのだそうです。

https://www.asahi.com/articles/ASM3T5721M3TIIPE010.html  (朝日新聞2019.4.6)

 

矢代さん、いつまでも「放送大学の学生さん」をお続けくださいね。

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【参考】

放送大学は「人財」の宝庫(1)~潜水艦で仕事をするということ~

http://www.acras.jp/?p=4596 (2015.9.27)

放送大学文京学習センター(文京学習センターのサイトより)

放送大学文京学習センター(文京学習センターのサイトより)

 

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