荻野さんによる「ニュージーランドの日本語教育事情」レポート

梅雨明けの7月21日、ニュージーランドで日本語を教えていらっしゃる荻野さんから、こんなメッセージが届きました。

 

「ニュージーランドの荻野です。今年は15高校、2大学から300人以上が参加し、『ようかいたいそう』ビデオを作りました。『ようかい体操』としてはたぶん世界最大規模、海外日本語学習者のコラボビデオとしても世界初だと思います。最後に全員が心を合わせて行った手締め(上り締め)も収録しました。先生は全国を飛び回っていてお忙しいと思いますが、移動中などの隙間時間に見ていただけるとうれしいです」

ようかいたいそう サムネネイル写真

ようかいたいそう サムネネイル写真

 

どんなふうに、あの「ようかい体操」でビデオが出来ているのだろう?と早速拝見してみました。みんなの楽しそうな顔、たくさんの機関のつながり・・・。見ているうちに、もっともっとニュージーランドの日本語教育事情を知りたくなりました。そこで、荻野さんにレポートを書いてくださるようお願いをしたところ、本日すてきな写真と一緒に送ってきてくださいました。どうぞレポートをお読みください。また、ぜひ「恋するフォーチュンクッキー」「ようかい体操第一」もご覧ください。

 

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ニュージーランドの日本語教育状況

(海外の日本語学習者による最大規模の『ようかい体操第一』)

 

  荻野雅由(ニュージーランド カンタベリー大学)

 

■ニュージーランドの日本語教育

 

NZ日本語学習者数の推移

NZ日本語学習者数の推移

ニュージーランドの人口は450万人ですが、日本語学習者数は世界第11位。親日家・知日家がとても多い国です。1980-90年代にかけて、日本の経済成長に合わせるように急激に日本語学習者数が増加しました。1990 年代半ばには、中等教育(12-18才)で学習者が最も多かったフランス語を抜いて第1位となりました。その後学習者が減少、現在はピーク時の45%となってしまい、今も減少傾向が続いています。

 

ニュージーランドの日本語学習者は中等教育に集中していますが、外国語は必修科目ではなく選択科目となっています。そのため日本語を選択する生徒数が少ない場合は科目としての日本語が廃止となってしまいます。廃止とならなくても、高校1−3年の生徒を一つのクラスにまとめて教えているというケースもあります。

 

 

■学習者数減少の理由

 

NZ日本語ワークショップ 

NZ日本語ワークショップ

中等教育の日本語学習者数の減少には主に次の理由が挙げられます。

  • ●日本の経済不振により、将来の仕事のために日本語を学ぶメリットは少ないと考えられていること
  • ●他科目と比べて、日本語でよい成績を取ることが難しいこと
  • ●STEM重視のカリキュラム(中等教育の後半では5、6科目しか学ばないため、STEM関連科目の履修が優先されることが多い。そのため日本語が好きでも日本語を履修できない。)

●教科としての外国語が重視されていないこと

 

 

■『ようかい体操』クライストチャーチVer.

 

学習者減少への対策として、より充実した学習経験と動機づけの機会として、クライストチャーチの高校と大学の日本語教員が連携してイベントを企画することにしました。それがクライストチャーチの高校生を対象とした「日本語1日ワークショップ」です。そしてこのワークショップにダンスビデオプロジェクトを組み込むことにしました。

ようかい体操写真

ようかい体操写真

 

昨年の『恋するフォーチュンクッキー』https://youtu.be/CQE8kGwWsv8

に続き、今年は『ようかい体操第一』に挑戦しました。高校生は学期末の忙しい時期でしたが、クライストチャーチの15の高校とカンタベリー大学、クライストチャーチポリテクニック工科大学から合計300人以上が参加し、日本語学習者による『ようかい体操』としては最大規模のビデオが完成しました。https://youtu.be/g95Q3qXL76wxw

 

大学の大講義室でワークショップ参加者全員で踊る『ようかい体操』は壮観でした。同じリズムに合わせて同じ動きで踊ることは、集団行動の機会があまりないニュージーランドの若者にも新鮮な一体感を感じさせたようです。『ようかい体操』を踊った後で行った手締めは、一本指から手拍子を始め、指の数をだんだん増やしていく上り締めの変形です。参加者全員がリズムと心を合わせた手締めには若いエネルギーがあふれていました。

 

 

■つながり

 

完成したビデオはクライストチャーチの日本語教育の協働のシンボルです。そして多くの人とのつながりを作ってくれています。このつながりが日本語教育のアドボカシーの力を強め、その力が日本語教育の発展に結びつくことを願っています。『ようかい体操』クライストチャーチ Ver. を通して、南半球の片隅にも熱心に日本語を学んでいる若者がいることをより多くの方に知ってもらえるとうれしいです。

ようかい体操

ようかい体操

 

 

 

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