7月11日(土)、日本語ボランティア講習会のため東広島を訪れました。事前に担当の方から次のようなご連絡をいただき、ボランティア教室に参加することができました。
もしお時間をお許しいただけるなら、前泊していただき、
土曜朝に行っている「大人+子どものクラス」をご覧いただいて、
ご意見をお聞かせいただければ幸いです。
実は、この教室には2年前に研修会で伺ったときにも参加させていただいているので、その後の変化にも大いに関心がありました。
参考:「東広島市に見る『多文化共生町づくり』」 http://www.acras.jp/?p=2042
東広島市に住む外国籍の方は、一次若干減ったものの、最近また増加傾向にあり、2015年5月現在、4,918人の人が住んでいます(総人口の2.7%)。また、永住25%、留学生と技能実習生がそれぞれ20%ずつという点が、東広島市の特徴として挙げることができます。
今回、多様な外国籍の方々が通う「日本語自習学習サポート」教室に参加して、外国にルーツのある子どもさん達との対話から、さまざまなことを考えさせられました。
■がんばれA君!:大きくなったら日本語の先生になりたい!
ハルピンから来た小学校6年生のA君は、来日してまだ1年にもなりません。彼は、一生懸命算数の問題を解いていましたが、こんなことを語ってくれました。(S=嶋田)
S:今、何に興味があるの?
A:日本語の勉強。N1取る。そして、英語も勉強する。それから、韓国語。お母さんは韓国語ができるから。
S:大きくなったら何になりたいのかな?
A:日本語の先生。この教室の先生は、ほんと~~にやさしいから。ぼくも日本語の先生になりたい。
ドリルをやりながら、周りにいっぱいいる中国出身のお兄さん・お姉さんと母語で話せるのが楽しくてしょうがないという感じで、2時間を過ごしていました。机の上には、図書館で借りた分厚い「平凡的世界」という中国語の本が置いてありました。ちらっと覗くと、イラストも写真もなく、ただただ文字ばかり。
S:字ばっかりで、難しそうな本ね。写真もイラストもないんだ。A君、すごいね!
A:うん。中国の本はね、字ばっかり。でも、面白いよ。
目をキラキラさせながら、「毎日楽しい」というA君。きっと母語が使える楽しさ、自分のことを分かってくれる仲間・支援者と過ごせる嬉しさが、彼の大きな原動力になっているのだと思いました。
■夢に向かってがんばるBちゃん!:医者になって、人を助けたい!
ペルーから来た6年生のBちゃんが初めて日本に来たのは3歳の時。それ以降、親の仕事の都合で何度もペルーと日本の間を行き来し、今回来日したのは昨年の2月のことでした。彼女は、何度か日本語を学んだ経験があることから、他の子ども達と比べ、日本語学習が楽なようでしたが、社会科の教科書を見ながら、「もうすぐテストだから、覚えるのが大変」と言っていました。
慣れた環境で学校生活を続けたいのに、親の都合で「移動する子どもたち」にならざるをえないケースがどんどん増えています。子どもにとって、「今、この時」はとても大切であり、ことばが分からないことによる「空白の何年間」などは許されないのですが、なんと支援の薄いこと! これからの日本社会では、こうした課題に真剣に向き合っていくことが重要だと言えます。
S:Bちゃんの夢は?
B:医者になること。
S:どうして?
B:人を助けたいから。
S:得意な科目は?
B:えっ?
S:算数とか、社会とか・・・。
B:ああ、算数と理科。おもしろい!
S:ずっと日本で勉強したい?
B:スペイン語で考えると、もっと分かるから、勉強はペルーがいい。
でも、大人になってずっと住むのは日本がいい。日本が好きだから。
まっすぐ私の目を見て、将来の夢を語るBちゃんを見ながら、「このまますくすくと成長してほしい」と思いながら、教室を後にしました。
■日本語教室に戻ってきたC君:高校の授業が分からない!
中国出身の高校2年生のC君は、高校に入る前少しだけサポート教室に通っていました
が、運よく高校に入学することができ、来なくなりました。しかし、また最近「学校の授業が分からない」と、自ら望んで通い始めたのです。
ニコニコと同じ中国出身の友達と並んで勉強をしていますが、取り組んでいるプリントといえば、基本的な物が多く・・・・・・。動詞の活用や生活の言葉などもやっていました。このレベルで高校に進学しても、「授業が分からない」「友達はできない」などと結局学校をやめていくことになりかねません。
一方で、いくらチャレンジしても夜間高校にも入れなかったと、がっくりする学習者もいます。そんな時には、一人一人にしっかりと寄り添いながら、次の道をともに考えることが大切です。なんと東広島市では夜間高校受験は、20歳をすぎると受験科目は5教科から「作文と面接」へと変わるのです。そういう情報を知っていればこそ、高校受験にどうしても成功できなかった人達も、何年間か仕事をしながら日本語を勉強し続けることで、新たな道も開けてきます。情報収集、情報の取捨選択、情報の適切な伝達……さまざまな機能・役割が地域日本語教室には求められています。
■コーディネーターのつぶやき:年少者の日本語支援は課題が山積!
東広島市でコーディネーターとして活躍する間瀬さんは、この道何十年の大ベテラン。さまざまな事例を紹介してくださり、また、課題の解決策についても熱く語ってくださいました。
◆「考えてもしょうがない」という中学生に接して、もっと将来に夢が持てる道を探してあげたいと思っています。全く日本語が分からない状態で、親の都合で連れて来られた子ども達。最近は、5,6年生になって来日するケースも増えています。それは、日本に働きに来ている親が、生活が安定してきたので、国に置いてきた子どもを呼び寄せることも1つの理由ですし、国で孫の面倒を見ていたお祖父ちゃん、お祖母ちゃんの高齢化も影響していますね。いろんな要因が重なって「今、ここにいる子ども達」、彼らがいきいきと学校に通い、明るい将来が描けるように支援したいのですが、難しい問題が多いですね。
◆学校によっては、外国籍の子ども達には「いいよ、君たちはやらなくていいよ」と、宿題を出してくれないこともあります。そうやって特別扱いされることで、「どうせ自分達は・・・」と受け取ったり、「ああ、自分達はしなくていいんだ」と楽を覚えてしまうことにつながったりします。こういうことを学校の先生達に理解していただくためにも、もっと連携が進むように、努力していきたいと思っています。
◆これまで子ども達は、いろいろな作文を書き、
(間瀬さんのご厚意で、
参考:ハルピン出身
来日は、2011年1月(中学2年生)
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今、ぼくの中学校生活はとてもいいです。先生も同級生も、ぼくに良くしてくれます。
でも、授業の時は、あまりできないので、とてもいやです。
同級生がぼくに話す言葉は(僕が習った日本語と)違います。まるでほかの言葉のようです。
数学の時はできるものとできないものがあります。だから、全部(ノートに)書こうと思いません。
国語は一つもわかりません。だから日本語のノートを机の上において読んでいます。
理科の時間はほかの人たちと一緒に勉強できるのでうれしいです。
美術の時は絵を描くことができるけど、話せないのでつらいです。
体育の時はみんなと一緒に活動したいと思うけど、話が全く分からないので、仕方なく運動着を家において来て、ただ、同級生が運動をしているのをそばで見ているだけです。つまらないと思います。
技術科の時は、ぼくができることは同級生にできず、同級生にできることはぼくにできません。どうしていいかわかりません。
家庭科と社会科の時は全くわかりません。だから、椅子に座っているだけです。
英語の時間は英語ができないので、やっぱりどうしていいかわからないという気持ちです。
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