会員からのレポート(平井辰也さん):介護福祉士養成コースにおける外国人の在留資格「介護」の取得に関して

アクラス会員の平井辰也さんから貴重なレポートをいただきました。ぜひご覧いただきたいと思います。

 

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介護福祉士養成コースにおける外国人の在留資格「介護」の取得に関して

日本アジア医療看護育成会 EPA事業部マネージャー 平井辰也

2015/4/8作成

 

問題の背景

平成27年3月6日政府は在留資格に「介護」を設けることなどを柱とした入管法改正案を閣議決定しました。これにより来春には日本で介護福祉士の資格を持つ外国人に在留資格「介護」が与えられる見通しです。

 

毎日新聞記事

http://mainichi.jp/shimen/news/m20150306dde001010087000c.html

 

法務省資料

http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri05_00010.html

 

また、厚生労働省は2月25日、介護福祉士の資格取得方法について、2022年度から養成施設卒業生に国家試験の受験を義務付ける方針を固め、17年度から21年度までの卒業生について国家試験受験は任意とし、卒後5年間は介護福祉士とすることとしました。

これにより2021年までに養成施設を卒業したものは5年間介護福祉士の資格が与えられ、継続して介護福祉士を続ければ6年目以降も介護福祉士の資格は保持できることとなります。

 

福祉新聞記事

http://www.fukushishimbun.co.jp/topics/8232

 

そのような状況から、日本語学校、介護福祉士養成機関、介護福祉施設などが協力して留学プログラムを作成し、現地において日本で介護の仕事をしたい外国人に対して募集を始めています。

 

現状で考えられる介護福祉士養成コースの留学プログラムは

 

・現地において日本で介護の仕事をしたい人材を募集する

・日本語学校に1年(現地もしくは日本)、介護福祉士養成コースに2年通学する(在留資格「留学」)

・卒業後は提携している介護施設で介護福祉士として働く(在留資格「介護」)

・3年間の学費・生活費は奨学金の形で貸与し、卒業後指定した施設で就労することにより返還を免除する

 

という形が考えられますが、現在インドネシアでは国家試験に合格できず帰国した元EPA候補者向けに学費や生活費がすべてアルバイトで賄えるかのような内容の募集が出ています。

 

過去にも日本語学校の募集で「日本ではアルバイトで月に20万円以上稼げる」などと誘われ、来日時に多額の謝金を背負い、その後借金返済のためアルバイトに追われる外国人留学生のことが社会問題となっています。このままでは介護の留学生についても同様なケースが起こることが予想されます。

 

関連記事

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150113-00010001-shincho-soci&p=1

 

尚、入管法改正後に日本で「活動に基づく在留資格」により介護の仕事に従事できる外国人は以下の3つになります。

 

①EPA介護福祉士候補者(在留期限4年)及び介護福祉士国家試験に合格したEPA介護福祉士(在留期限なし)

②介護分野における技能実習生(在留期限3年、改正後には5年?)

③日本に留学し介護福祉士の資格を取得した外国人(在留期限なし)

 

それぞれの資格における日本語能力については以下のようになっています。

 

①EPA介護福祉士候補者

入国時の日本語能力

フィリピン 要件なし

インドネシア N5程度

ベトナム N3

なおフィリピンとインドネシアは現地で6か月、来日後6か月の日本語研修があり、施設で就労を開始する前に1年間日本語研修を受けていますので、就労開始時にはN3程度の能力はあると考えられます。

ベトナムは12カ月の日本語研修後N3合格者のみが来日し、2か月ほど適応研修を受けたのち施設で就労を開始します。

 

②技能実習生

「外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会」

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000073035.html

 

の中間まとめでは、1年目(入国時)N4程度、2年目(2号移行時)N3程度とされています。

 

③介護福祉士

現時点では介護福祉士国家資格を持つ外国人が対象とされるとされていますが、検討会で日本語能力については特に言及されておらず、在留資格「留学」で来日時には専門課程の授業についていくために最低でもN3が必要であると考えられますが、現状では日本語能力についてはチェックする機関はありません。

 

また、①EPA介護福祉士候補者②技能実習生については公的な管理団体が監督し外国人の人権などを保護することが決められていますが、③介護福祉士については民間の留学プログラムであり、人権を保護するような公的な機関は設けられていません。

現状では公的な機関に管理されているはずのEPA制度や技能実習制度でさえ、人権問題となる事案が少なからず起きていることを考えれば、介護福祉士の留学プログラムが民間主導で監督する機関もなく、借金で縛るような形で悪質なブローカーの関与があれば、人権問題が多発する恐れもあります。

 

以上のことから、介護現場における外国人人材の日本語能力の確保や留学生の人権保護の観点から、早急に現地における介護福祉士養成コース留学プログラム募集内容について調査し、関係各位でこの問題について広く議論する必要があると考え問題提起のためにこのレポートを作成しました。

皆様からのご意見をいただければ幸いです。

 

以上

One Response

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  1. 興味深く拝見しました。
    実はフィリピン人EPAでも同じような問題が起きていると危惧しています。
    EPA期間中に合格できず帰国した候補生を学生ビザで入国させて、試験合格したら3年間施設での就労を約束させている組織があるようです。
    学生ビザで介護福祉士試験に合格したのちEPA特例に切り替えることができるのか、学校に行っている間の費用がいくらで、どのような契約をしているのか、まだ十分把握は出来ていないのですが、なんか怪しげで・・・
    また情報交換させてください。

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