２０１４年度の日本語教育シンポジウムのため、ウランバートルを訪れました。昨年は、「教材開発」についてお話をしましたが、今年は「スタンダード教育の実践と教材開発」というテーマでワークショップを実施することとなり、再度モンゴルに出かけました。
→テーマ：
「学習者のやる気を引き出す授業展開～スタンダードで＜わくわく授業＞を！」
今回は、シンポジウム前日に、新モンゴル高校と第２３学校を訪問し、授業見学もさせて頂くことができました。そこで、日本式教育を取り入れた、ユニークな教育システムの新モンゴル高校についてご紹介したいと思います。
新モンゴル高校は、ジャンチブ・ガルバドラッハ理事長によって２０００年に創られました。ガルバドラッハさんは、１９９５年に日本留学をし、翌年には奥さんと４人のお嬢さんが来日。ここから、お子さんを通して日本の学校との付き合いが始まりました。理事長は、次のように語ってくださいました。
「娘たちが通った日本の小学校、中学校、高校の教育システムは本当に素晴らしいと感動しました。長女は公立の中学校から山形西高校に進学しましたが、その校風やカリキュラム等にすっかり魅せられ、「いずれ西高のような学校をつくりたい！」と考え始め、それが「新モンゴル高校」として実現したのです」
新モンゴル高校は『日本語教育ジャーナル2013年春号』でも取り上げられ、「ジャンチブ・ガルバドラッハ校長が、「国づくりは、人づくりから。世界基準の教育を施して、これからのモンゴルの発展を担っていく人材を育成したい」という熱い思いをもって、２０００年に設立した私立学校」として紹介されています。
最近モンゴルの教育制度が変わり、今、１２年制に移行しているところですが、これまでのモンゴルの教育制度は、小学校１～５年生、中学校６～９年生、高校１０～１１年生であり、１１年しかないことになります。これでは、日本に留学するに際して年数的に課題が残ります。そこで、新モンゴル高校では、１２年生を特別設け、日本留学を目指して日本留学試験のための勉強するコースとしたのだそうです。
「卒業生の進学先は世界中に・・・」 「その中でも日本留学がダントツです」
この高校では、日本留学に特に力を入れており、日本留学試験対策もきめ細かに行われています。今回は、幸運にも化学、数学、総合科目の授業も見せていただき、担当している先生方とも教員室で話を伺うことができました。驚いたことに、総合科目は、日本の教科書を使って日本語で教えていましたが、化学・数学・物理は、日本語で書かれた教科書を使って、モンゴル語での授業です。生徒さんに近寄って、ノートを見せてもらいましたが、もちろんノートにはびっしりモンゴル語でメモが取られていました。なんだか不思議な気がして担当の先生にお聞きしたところ、「いやあ、日本語は分かりませんが、専門用語は分かるんですよねえ～～～」という返事が返ってきました。
ＥＪＵ対策「化学」の授業 「総合科目」の授業
生徒たちを見ると、女生徒はセーラー服姿、これはモンゴルの学校で唯一だと言います。授業の前には、「起立、礼、おはようございます」、授業が終わると、「起立、礼、ありがとうございました」と挨拶をします。そして、廊下で生徒達にすれ違うと、みんなにっこり「こんにちは！」と元気よく挨拶をしてくれます。なんだか日本の学校を訪ねているような気がしてきました。
毎年大勢の卒業生が日本の大学や日本語学校に留学しますが、なんと入学前の３月に日本で「１か月合宿」があるのだそうです。昨年は、１６名の新入生と１年先輩数名が泊り込み、日本の生活・日本文化、留学生活について学んでいきました。こうした体験から深い絆が生まれ、安心感も強くなっていきます。そういえば、新モンゴル高校の校舎には、「卒業生の記念館」という名前の＜卒業生のための部屋＞がありました。
日本から遠く離れたモンゴルで、日本の学校教育の良さを生かした小学校から高校までの一貫教育が行われている「新モンゴル高校」というユニークな高校があることを、いったいどれだけの人が知っているのでしょうか。もっともっと多くの人に知って頂きたいと思い、今回の学校見学をご紹介することにいたしました。夏には、日本の大学生との面白い交流サマープログラムもあります。詳しいことは、以下の記事をご覧ください。
・「新モンゴル高校のサマースクールで大学生募集」（２０１３年度分） http://www.acras.jp/?p=1355
「卒業生の記念館」 「モンゴルと日本の国旗を掲げた体育館」
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モンゴ関係の記事例：
・「モンゴルの日本語教育は熱い！ http://www.acras.jp/?p=1458
・「モンゴル日本語教師会、外務大臣賞受賞」http://www.acras.jp/?p=2098
※今回見せて頂いた第２３学校の「スタンダード教育」についてもぜひお伝えしたいところですが、いずれ他の学校の実践と一緒にご紹介したいと思います。「モンゴルにおけるスタンダード教育」は、これから大きな成長が期待できるプロジェクトです。