モンゴル日本語教師会、外務大臣賞受賞!(JICA浮田さんからのメッセージ)

受賞式でのドルゴル会長

受賞式でのドルゴル会長

10月24日、「モンゴル日本語教師会、外務大臣賞受賞!」のニュースが飛び込みました。今年3月ウランバートルに伺った時に、お世話になった浮田久美子さん(JICA派遣)からの嬉しいお知らせでした。受賞理由は、次のとおりです。

「モンゴル日本語教師会は平成5年(1993年)に設立されたモンゴル唯一の日本語教師の職能団体であり,各種勉強会や日本語教育シンポジウムの開催を通じてのモンゴルにおける日本語教師の専門性の強化,日本語教育スタンダードや日本能力試験の実施,日本語スピーチコンテストの実施等を通じて日本語教育水準の向上を図り、同国における日本語教育の促進に貢献した」

モンゴルは、日本語学習者数は8,159人(教師会調査による暫定値)と世界の学習者数と比べると10本の指には入らないのですが、その熱心さ、ネットワークは素晴らしく、ぜひ皆さまも知っていただきたいと思い、浮田さんに「モンゴル日本語教師会、外務大臣賞受賞で思うこと」というタイトルで、何か書いてほしいとお願いしました。

では、皆さま、浮田さんの熱いメッセージをお楽しみください。

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「モンゴル日本語教師会、外務大臣賞受賞で思うこと」
 浮田久美子(JICAよりウランバートル市教育局派遣)

私は、現在JICAからの派遣によりウランバートル市教育局で日本語教育を担当しています。この教育局は、ウランバートル市における幼稚園・初中等教育機関を管轄している行政機関です。私は、教育局に派遣されているとともに、モンゴル日本語教師会の会員でもあります。

みんなでワイワイ勉強会

みんなでワイワイ勉強会

モンゴル日本語教師会(以下、教師会)は、20年前に設立されました。今、私が教師会の一員として充実した仕事ができているのは、この20年間の教師会の努力の積み重ねのお陰であると日々感じています。私は本当にいい時期にモンゴルに来られたと思っています。

現在、教師会のプロジェクトの一環として国際交流基金の助成を受け、教師会・モンゴル日本人材開発センター・国際交流基金派遣専門家・教育大学・教育局・初中等教育機関の日本語教師が一丸となって、初中等教育用の「モンゴルにふさわしい教科書」作成に励んでいます。所属機関・私利私欲などを超え、「モンゴルの日本語学習者」が楽しく日本語で自分のことが話せて相手のことも聞けるコミュニケーションを大切にする力が身につけられることを目標にしています。

ワークショップの後で(2013年4月)

ワークショップの後で(2013年4月)

実は10年前にも、この教師会で『できるよ』という教科書を作成されたということなのですが、教師会の会長が3年前に日本でスタンダードに関する会議に出られたことをきっかけに流れはスタンダードとなり、新しい教材作成を目指し始めたということです。

教科書を作成するということは非常に大変なことであるにも関わらず、教え方の変化に柔軟に対応していることや、会長は大学の先生であるにも関わらず初中等教育(モンゴルは小中高一貫)の教科書作成に時間も情熱を注がれている姿は非常に素晴しく、このように頑張っている先生方を横で見ていたら、自分も頑張らずにはいられなくなる環境です。

3月のセミナーで開会の挨拶をなさるドルゴル会長

3月のセミナーで開会の挨拶をなさるドルゴル会長

実は嶋田先生との出会いもこの会長のつぶやきがきっかけなのです。会長が、嶋田先生が監修された『できる日本語』を手にして「この先生を、次のシンポジウムにお呼びしたいのよねぇ。この先生の考え方と、わたしたちが目指しているものが非常に似ているのよね。どうしたらお呼びできるのかしら・・・?」とつぶやいていらしたことから始まりました。

『できる日本語」のコンセプトについて話す嶋田

3月のセミナーで『できる日本語」のコンセプトについて話す

そして、今年3月のモンゴル日本語教育シンポジウムに日本から嶋田先生にいらしていただき、自分たちが取り組もうとしている教科書作成に関する考え方を伺い、誰もが砂漠に水が沁み入るように嶋田先生のお言葉を吸収させていただいたのでした。今は、嶋田先生の「教材作成が一番の教師養成」という言葉を胸に、現場の日本語教師の方たちと一緒に教材を作成しています。

話を教師会に戻します。

教師会は、モンゴル国立大学国際言語文化学部日本学科の先生方を中心に立ち上げられました。大学の先生方を中心に勉強会や学術会議を行っていましたが、このスタンダードプロジェクトから初中等教育機関の先生方を対象に勉強会を開催し始めました。

なぜ初中等の日本語なのでしょうか。その答えは、モンゴルの日本語教育の問題点にあります。モンゴルの初中等教育機関でせっかく日本語を学んでも、大学に入学したら、また初歩(ひらがな)から日本語を勉強しなければならないケースが多く、日本語をある程度学習していた生徒たちはやむを得ず違う専攻を選ぶことが少なくないそうです。

初中等教育機関でのカリキュラムを高等教育機関のカリキュラムに繋げることができれば、日本語学習時間がトータルで長くなり、モンゴルにおける日本語能力が全体的に向上することとなります。そのために、まずは初中等教育機関のカリキュラムの整備が必要なのです。

現在、ウランバートル市では22校の公立私立の初中等教育機関で日本語を勉強しています。早い学校では小学1年生から、開始が遅いところでも中学2年から日本語を学習していますが、学習時間・学習期間・使用教科書がどれもバラバラです。

その22校のうち、11校で11月2週目からスタンダード実践授業が開始されます。11月6日の勉強会で、直前にできたばかりの教材2週間分をコピーして渡したばかりです。本当にゼロから手作りの教材です。

来週からは、その11校の学校をまわってスタンダード実践授業の様子をビデオに撮り、更に生徒たちにとって楽しくて効果的な授業展開を共に考え、作成途中の教材に反映させ、よりモンゴルで使うのにふさわしい教科書の基を作っていくことが私の仕事です。

セミナーの最後に記念撮影

3月のセミナーの最後に記念撮影

この度、外務大臣賞をいただいたことを受けて思ったことは、見てくれている存在がいるということはなんとありがたいことだろうということです。

同様に、このように離れていてもモンゴルの日本語教育を気にかけてくださる嶋田先生の存在も私たちにとっては大変にありがたく感じています。

違う国にいる方に、モンゴルの日本語教育のことを知っていていただくためには、常に発信をすることが大切であるということも、嶋田先生から学びました。これからも機会を見つけて発信していきたいです。

モンゴルの子どもたちが日本語を使って自分たちのことを楽しく語り合えるようになることを目指して頑張っていきます。

参考:
在モンゴル日本大使館HP「2013年外務大臣表彰授与式の実施」
http://www.mn.emb-japan.go.jp/jp/kankei/20131023_daijinhyoushou.html

「モンゴルの日本語教育は熱い!」http://www.acras.jp/?p=1458

 

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