東京都主催「多文化共生プレゼンコンテスト」 ~大学生が「多文化共生都市」をめざして具体的な提案~

今年、第5回目となる「多文化共生プレゼンコンテスト」が、東京国際フォーラムで行われました。このプレゼンコンテストは、東京都主催、企画・運営は多文化共生プレゼンコンテスト実行委員会によって実施されます。参加は、中央・早稲田・東京女子・明治・法政の5つの大学ゼミの大学生達です。テーマは「多文化共生都市をめざして―大学生が考える東京の未来―」、趣旨は次のとおりです。

 

東京を国籍や民族などにかかわらず誰にとっても、人権が尊重され、住みやすい都市(多文化共生都市)にするには、どうしたらよいか、都内の大学に通う学生が東京都に提言することで、都民の多文化共生への関心を高める。

 

多文化共生プレゼンそれぞれのゼミでテーマを設定し、プレゼンを作り上げていきます。これまでの自分達の活動を生かしたり、調査やインタビューを行ったりしながら、訴えたいことを絞り込み、東京都に対して、多文化共生都市づくりのための具体的な提案をしていくのです。今年も、社会における課題を発見し、大学生らしい視点で課題解決法を提示している点、素晴らしいプレゼンばかりでした。こうした具体的な提案を、地域社会、大学間、さらには東京都との協働によって、ぜひ実現してほしいものです。

 

最優秀賞は、明治大学の「やさしい日本語でつくる、やさしいとうきょう~」、優秀賞は東京女子大学の「すべての人に伝えよう~防災活動における多文化共生~」と決まりましたが、どのプレゼンもよく考えられた、素晴らしいものばかりでした。では、内容をご紹介しましょう。

 

◆中央大学 森茂岳雄ゼミ

  お・て・つ・だ・い~夢がかなうTOKYO~

 

中央大学は、外国人の子供たちの課題について取り上げました。これは、非常に重要なテーマであり、大学生が真剣に「無支援状態の子ども達」の実態を憂え、将来の可能性を考えている姿に胸を打たれました。「日本語ができないために、勉強がわからず、そのことで自ら進路を狭めることになり、人生の選択肢が減ってしまう。こうした子ども達、<天井感を持つ子ども>を、これ以上増やしてはいけない!」と考え、そのための解決策を考えました。

 

具体的な提案は、学校の空き教室を活用した「おてつだいDay」の創設です。具体的な時間割も提示されました。教室を開く効果としては、無支援の子どもの存在の認知度向上、子どもへの機会提供、子どもの可能性の拡大が挙げられました。最後に語られた、「壁はとびらへ、天井は宇宙へ」という言葉は、インパクトのあるものでした。

 

 

◆早稲田大学 山西優二ゼミ

  メディア~私たちと共に生きる新しいプラットフォーム~

 

FBにあった事前のゼミ紹介では、「毎週先生と個性豊かなゼミ生と共に語り合い、相手の声に耳を傾け、協働しながら「共生・公正・平和」な社会に向けてさまざまな視点から研究を深めています」という言葉がありました。多文化とは、自分の中にある多層な文化もさすものであり、共生とは、誰も傷つけない状態を意味するのだという定義から始まったプレゼンは、学生さん同士で、日常的に深い対話がなされていることが窺えるプレゼンでした。

 

具体的な提案は、「市民がつくる市民のためのメディア:たぶんかメディア」でした。そこには、「ごめんください」「ありがとう」「これって?」という欄が用意されています。「ごめんください」欄は、ちょっと一声「ごめんください」と声をかけて話しかけるような雰囲気で、「嫌なこと/変えたいこと/相手に伝えたいこと」等を記します。「ありがとう」には感謝の気持ち、「これって?」は、疑問を解決するためのものです。運営主体は大学生とのことでしたが、さらに広がりが出てくると、より良いものになるのではないでしょうか。

 

◆東京女子大学 松尾慎ゼミ

  すべての人に伝えよう~防災活動における多文化共生~

 

東京女子大学チームと:西荻住民として、とても興味深いプレゼンでした。

東京女子大学チームと:西荻住民として、とても興味深いプレゼンでした。

言葉や文化の違いからさまざまな課題があるけれど、「すべての人が生き延びることが防災における多文化共生」であるとし、言葉がわからなくても「とにかく逃げよう」と手を引っ張ってくれる人がいれば、助かる

ことができるのだと訴えました。「自助と共助」がありますが、共助を進めていくには、地域の人々とのつながりが大切です。

そこで、人と人とが出会う場として「にしおぎ防災街歩き」ワークショップを提案しました。こうした提案は、これまで東京女子大学の学生さん達が地元西荻でやってきた「町のつながりの体験」ワークショップが土台となっています。常に、地域社会とともに歩むことを考えているチームならではの、力強い提案でした。「東京にある138の大学が、それぞれ防災ワークショップをすること」で、さらに共助が進むことでしょう。

 

 

◆明治大学 山脇啓造ゼミ

  やさしい日本語でつくる、やさしいとうきょう

 

明治大学チームは、中野にあり、イーストウエスト日本語学校とは、いろいろな活動を通して交流があります。

明治大学チームは、中野にあり、イーストウエスト日本語学校とは、いろいろな活動を通して交流があります。

事前のゼミ紹介を見ると「東京都や中野区など行政や企業と連携し、多文化共生に関する調査研究やイベントを実施しております。今年度、三年生は中野区長と外国人留学生の懇談会を開催し外国人も日本人も住みやすい街とは何かを討論したり、やさしい日本語を中野区に広める活動を行ったりしています」と記されています。「中野区長と外国人留学生の懇談会」には、私も参加し実際にやり取りを見てきただけに、今回のプレゼンを興味深く聞きました。(山脇ゼミ&中野区主催「中野区長との懇談会に参加して」http://www.acras.jp/?p=8737

 

「ありのままでいられる社会」を目指すことが重要であるとし、「やさしい日本語ひろば:やさいち」を提案しました。この市場には「かいもの通り/じまん広場/おしゃべり喫茶」の3つのエリアがあります。「やさいち」とは、「ありのままでいられる場所」であり、それが広がっていくことで「やさしい東京」が生まれます。最後に、来年11月3日には、「やさいち」を実施することを宣言して終わりました。11月の「やさいち」に参加するのが今から楽しみです。

 

 

◆法政大学 松尾知明ゼミ

  心のフィルター~東京から起こるカラフルムーブメント~

 

事前のゼミ紹介には「『多文化共生』をテーマに社会的マイノリティーに対する様々な課題と向き合ってきました。私達のゼミには日常的で感じる小さな気付きを各30秒で発表する時間があります。この2年間で発表や共有を繰り返ししたことで生活の中に潜む多くの多文化共生や課題を発見する力を養ってきました」と記されています。7人のチームで話し合い、共に考え、活動してきたことが窺えるプレゼンでした。

 

表面的には受け入れているものの、内面では受入れきれないことから起こる静かな偏見、まずはそれに気づくことが大切です。学生さんは、動画を作成し、それを山手線のような乗客が多い電車や、渋谷などで見ることで、人々に気づいてもらうという方法を提案しました。LGBTに関する動画を実際に作成し、プレゼンの際に映し出しました。最初の部分は言葉がなく、映像を見ながら「これって、どういうこと?」と考えてもらうという仕掛けもありました。学生さんの豊かなアイディアに感心しました。

 

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5つのプレゼンは、テーマも違えば、切り口も違い、実に個性あふれるものでした。しかし、そこに共通して流れるものは、「みんなで考え、みんなで行動し、東京に住むすべての人が住みやすい街にしたい!」という熱い思いです。プレゼンは、後日サイトにアップされるそうです(各10分)。一人でも多くの方に見ていただき、それをもとに対話の輪が広がることを願っています。

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明治大学のプレゼン動画

https://www.youtube.com/watch?v=l4et_6dLqyY&fbclid=IwAR1tdThLcnRhjES6INDnXXe989HhqjV9Mnwha-TMp8_5q2VjSI-HIy4L8dE

記念写真2019.11.16

 

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