第8回「看護・介護にかかわる外国人のための日本語スピーチコンテスト」 ~みごとな日本語で、具体的な提言を述べる出場者に感動!~

 

11月2日(土)に、「看護・介護にかかわる外国人のための日本語スピーチコンテスト」が行われました。これは、AOTS(海外産業人材育成協会)主催、国際交流基金共催で毎年行われており、今年で8回目となります。毎年素晴らしいスピーチが続きますが、今年は、特に、具体的な提案や、現場での率直な声が述べ看護のスピコン2019①られました。終わってから会場でスピーチを聞いていた知人・友人から、「どのスピーチも本当に素晴らしく、感動で涙を流してしまいました。とっても心の温まる時間でしたねえ」などといった声がたくさん寄せられました。

審査をしていた私も、「そうそう、それが大切!」「この言葉は、大勢の日本人に聞いてもらいたい!」等と思いながら、メモを取っていました。このスピーチの評価のポイントとしては、日本語そのものが上手か否かということより、次のようなことに重点を置いています。

  ・看護・介護の現場で働く人ならではの視点があったか

  ・新たな気付きや提案があったか

11月8日(金)には、AOTSのサイトに動画がアップされました。ぜひご覧ください!

https://www.aots.jp/about/publications/action/japanese-speech-contest/

 

ここで、入賞したスピーチを中心に4つのスピーチについて、少し詳しく記したいと思います。

 

■眠れない利用者さんに、「夢で逢いましょう!」

これは、みごと1位を獲得したリスカ・ラハマティカさん(インドネシア出身:「施設で働いて学んだこと」)のスピーチでの言葉です。

 

ある日、リスカさんが介助をするために、利用者さんに「今から、立ちますよ」と言ったのですが、「いやだ、寝てるよ」と、立ってくれません。そこで、リスカさんは、「えっ、寝てる?じゃあ、夢で会いましょう」と言ったところ、「じゃあ、起きようかねえ」と言って起きて介助をさせてくれたのです。リスカさんのスピーチは、日本語でただコミュニケーションをするのではなく、そこにユーモアを交える心のゆとりの大切さを教えてくれました。

また、利用者さんからの「すみません」「何度もお世話になります」という言葉、スタッフ同士の「お疲れさま」という言葉が、どれだけお互いの関係をよくすることにつながるかについても触れています。さらに、日本人側の配慮の必要性も、さりげなく伝えてくれました。「手が空いている?」と聞かれて分からない顔をしているときに、「今忙しくしてる?」と聞き返してくれることのありがたさ。日本人の外国人スタッフへの配慮がどれだけ大切かについても、聞いている人たちにしっかり伝わってきました。

利用者さんと介護士とをつなぐ日本語の力はとても大切ですが、直線的なやり取りだけではなく、時にちょっと変化球を投げたり、言葉のやり取りを楽しんだりすることが大切です。リスカさんは、「利用者さんを、いつも未来の自分だと思っています。私だったら、どうしてほしいかを考えています」と語っていました。「こんな方に介護をしてもらえたら、幸だなあ」と思いながら、聞き入っていました。

 

 

■岐阜弁は、もう誰にも負けません!

これは、2位になったニ・ルフ・プトゥ・ウィドヤニンシーさん(インドネシア出身:「心の支え」)のスピーチでの言葉です。ウィさんは、最初は岐阜弁が分からず、本当に困りました。「もう辞めたい」と思ったこともありましたが、次第にその気持ちは消えていきました。6ヵ月経ったころ、こんなことがありました。

それは、ユキさんという利用者さんとの関わりなのですが、ある日、お茶の時間にユキさんは部屋に戻ってしまいました。部屋に行ってみると、ユキさんは服を着替えていました。実は、その日は、ユキさんのお誕生日だったので、「家族がきっと来てくれる!」と、張り切っていたのです。しかし、夜になっても、家族は来ませんでした。「大丈夫?」とウィさんは尋ねましたが、よく見ると、ユキさんは泣いていました。

ウィさんは、ユキさんを抱きしめて「大丈夫。私がいるよ。誕生日おめでとう」と言いました。ユキさんは、「ありがとう。私を励ましてくれてありがとう。どんなに忙しくても、両親を大切にしてくださいね。あなたが居てくれてありがとう」とウィさんに言いました。ユキさんは、どんなにか嬉しかったことでしょう。そして、ウィさんもユキさんの言葉を聞いて、「インドネシアの両親を大事にしよう。おばあさんと、おじいさんになっても、絶対に大事にするよ。ユキさん、ありがとう。ユキさんからプレゼントもらったよ」と、ユキさんに伝えました。

どんなに忙しくても、笑顔を大切にして、利用者さんの心の支えになろう、と心に決めたウィさんでした。そのウィさんも、最初は方言が分からず、とても大変だったと言います。それが、今では、「岐阜弁だったら、誰にも負けない」と、笑顔で言い切れるまでになりました。入賞後、感想を求められたウィさんは、「皆さん、利用者さんは大切にしましょう!」と大きな声で、会場のみんなに呼びかけました。

 

 

■日本に恩返しがしたいから「介護の道」に!

これは、3位となったギャワリ・ママタさん(ネパール出身:「私の未来」)のスピーチでの言葉です。ママタさんは、日本で仕事をするお父様に呼び寄せられて日本にやってきました。来た当初は日本語が全く分かりませんでしたが、県立高校を卒業し、その後、「お世話になった日本に恩返しがしたい」という思いから、医療福祉学校に進学し、今は介護の経験を積むために老人ホームでお手伝いをしています。

その介護施設に、ちょっと他の人と距離を置いていて、いつも一人ぼっち、一人で歌を歌っている利用者さんがいました。そこで、ママタさんは「兎追いしかの山、小鮒釣りしかの川」と、「ふるさと」を歌い始めました。すると、その利用者さんも一緒になって、とても嬉しそうに歌い出しました。とても生き生きとした顔の利用者さんの姿に、ママタさんもにっこり!

ある時、薬を飲むことを嫌がる利用者さんがいました。そこで、ママタさんは、「ね、〇〇さんが薬を飲まないと、私が困るのよ。私が病気になるかもしれないわ」と冗談ぽく言いました。すると、利用者さんは、「それは困るね」と答え、飲み始めてくれました。そして、会うたびに、ママタさんに「ちゃんと薬飲んでますよ」と言ってくれるのだそうです。何とすてきな関係なのでしょう!今も、私の耳には、ママタさんがスピーチの中で歌った「ふるさと」の出だしの部分が残っています。ママタさん、頑張って!

 

 

■どんなに大変でも「割れない石」になって、懸け橋になりたい!

これは、【マイナスをプラスへ逆転賞】を獲得したズオン・ハ・クイン・チャンさん(ベトナム出身:「化けて、勝つ」)のスピーチでの言葉です。このスピーチを取り上げたのは、日本語によるコミュニケーションという点で、いろいろ教えてくれると考えたからなのです。

ズオンさんには、日本語が難しく、利用者さんのいうことが分からず、自信がなくなっていった時期がありました。例えば、こんなことがありました。利用者さんに「これは何の魚ですか?」と聞かれましたが、分かりません。そこで、見にいったのですが、漢字が読めず……。そこで、ズオンさんは、翌日の献立をしっかり見て、魚の名前、料理の味つけをチェックするようになりました。そして、こんなやり取りをするようになったと言います。

   ズオンさん「〇〇さん、これタラですよ。明日の魚は……、何て読んだらいいですか」

   利用者さん「これは、サバと言うのよ」

そして、利用者さんは、魚の名前が書いてある湯飲みを見せてくれました。ズオンさんは「大切なのは、うまく日本語を話せることじゃない。分からなければすぐに聞けばいい。相手のことを考えていれば通じるのだから」と、結んでくれました。私はこの話を聞きながら、利用者さんのとても嬉しそうな顔が浮かんできました。利用者さんにとって、ズオンさんに漢字の読み方を教えるというのは、とても幸せな時間だったことでしょう。そんなひと時を作り出すのが、介護の仕事において大切なことだと思います。

「困難なことは、さまざまありますが、その時、その時、それをどう捉え、どう進めていくかが大切であり、自分の解釈があったからこそ、大きなプラスに逆転できたのだと思います」と語るズオンさんは、力強く、「介護のプロフェッショナルになって、ベトナムと日本の懸け橋になりたい」とスピーチを締めくくりました。

では、他のスピーチについては、ちょっとご紹介をするに留めます。ぜひ動画をご覧いただきたいと思います。

 ※このスピーチコンテストは、1位から3位までの授賞だけではなく、すべてのスピー

  チに賞が与えられるというシステムになっています。そうした出場者への配慮もとても素晴らしいと思います。

 

■さまざまなスピーチへのいざない(

 

◆【あきらめない力賞】 「茶色のズボン」 

フランシア・グライネット・アポストルさん(フィリピン出身)

「『茶色のズボン』は、まるで自分の人生のよう」と語っています。それはなぜでしょう?また、フランシアさんは、「皆さんは、自分を何かに例えると、何でしょうか?と、聴衆に問いかけました。その答えは何でしょうか。

 

◆【言葉の力賞】「私を支えてくれた両親の言葉」

 デラゾ・デニス・アルフォンソさん(フィリピン出身)

デニスさんは、あることをきっかけにして、「簡単な日本語でも患者の心に寄り添える」ことを実感したのだそうです。それは、どんなことだったと思いますか。そして、どこまでもデニスさんを支えてくれたご両親の言葉とは?

 

◆【届!心の声賞】「看護・介護に関して日本人に訴えたいこと」

  チョウ・キさん(中国出身)

「日本の介護現場は離職率が高いのは、人間関係に原因があると言われていること」を取り上げ、では、どうしたらいいのかを考え、3つの提案をしました。その提案とは?

 

◆【味わいのある人生賞】「介護を通して利用者に塩を」 

ホルダン・アルテタ・マルジャ・セシリアさん(ペルー出身)

マルジャさんは、「日本の素晴らしい介護を学びつつ、自分なりに「塩」を加えた味付けをしていきたい」と語ってくれました。「利用者さんに塩を」とは、一体どういうことなのでしょうか。

 

◆【仕事の楽しみ発見賞】「看護師があるあること」 

ヘンガル・プラムディヨさん(インドネシア出身)

「看護師は心の仕事であり、国籍・言語・文化が異なっても心が通じ合える」と考えるヘンガルさんが語った、お仕事で共通する「あるある」は、どんなことだったのでしょうか。

 

 

◆【双方の素晴らしい歩み寄り賞】「私が辞めない理由」 

マナロ・リー・マイリン・シニョさん(フィリピン出身)

どんなに大変なことがあっても「今の職場で、一日も長く働きたいと思う!」と語るシニョさん。そこには、どんな人間関係、職場環境があるのでしょうか?

 

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それぞれの立場で、介護というお仕事について、看護というお仕事について、「多文化共生」という視点で、考えてみませんか。「ともに社会をつくる仲間」としての外国の方々の声は、活気ある日本社会をつくる上で、とても大切なものだと考えます。

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