12月2日(日)に、アクラス研修がありました。中国で大活躍の笈川幸司さん、タイトルは、「『つかみ、くすぐり、おち』は、プロレベルを求めなければ誰でもできるはず!!」です。狭いオフィスの中で、全員が立ち上がってペアワークをしたり、学習者になったつもりでワークをしたり・・・。さまざまな気付きを与えていただいた研修会となりました。実施日は日曜日のお昼であったためレストランの予約ができず・・・。そこで、初めてオフィスでお寿司を取っての懇親会となりました。お店とは違う雰囲気で、思う存分対話を楽しみました。講師の笈川さんも、テーブルを回ってくださり、参加者全員大満足の懇親会でした。いつものように、研修会終了後急ぎレストランに向かう必要がないので、オフィスで記念撮影もできました。濃い研修内容については、どうぞ寺浦さんの報告レポートをお読みください。
12月研修のお知らせ → アクラス研修2018.12.2
当日使用の資料 → 当日の資料① 型の正体
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「『つかみ、くすぐり、おち』は、プロレベルを求めなければ誰でもできるはず!!」
笈川幸司先生(笈川江南学堂校長)
レポーター:寺浦久仁香(イーストウエスト日本語学校 非常勤講師)
待ちに待った笈川先生のアクラス研修。20分で満席になってしまったという盛況ぶり。実は私は一度、ZOOM会議でご一緒したことがありましたが、もちろん多数の中の一人、今日はじっくりとお話を直接うかがえるということでとても楽しみにしていました。求められるところには、ご自身が自費で世界中動いていらっしゃる、そして嶋田先生と日本語教育言語観が一緒で、嶋田先生も大いに期待していらっしゃるとのこと。学習者に寄り添う素晴らしい話がうかがえるだろうと期待に胸が膨らみました。
いつものように、参加者一人ずつ、今日何が一番知りたいかを順番に簡単な自己紹介とともに行ってからのスタートです。
・生徒さんが興味を引く教え方。
・わかりやすく伝えることと楽しく聞いていただける話し方が学べたら
・中国で笈川先生とは面識あり。学生は専門学校が決まりやる気が出ない。どうやったら楽しく授業ができるか。
・生徒にどうやってことばを引き出すかをべんきょうしたい。
・先生のご著書を読ませていただき、音声教育などを含めて伺いたい。
・楽しく教え楽しく学ぶを大事にしたいのでヒントを教えていただきたい。
・学生を引き付ける発話を身に着けたい。
・見て盗んで覚えろと言っても見せていただける機会は少ないので学びたいと思ってきた。
・発音、スピーチに特化した授業を持っているので音声(特に中国人が多いので)についてのお話が伺えたらと思ってきた。
・集団授業で教師がどこまで引き出せるか。
・やる気のない中国の学生に困っている。
・筑波大学の模擬授業を拝見し、その熱量とその裏にある細やかさに感動、秘密がしりたい。
・ワクワクする授業をしたいと思い。以前先生が、学生の名前を覚えて呼ぶことの重要性を話されていた。
・同じ学生を1年受け持つと、この時期だれてくる。試みはするがなかなか。自分でも解決できないところがある。ヒントをいただければ。
・自分が学生の立場に立って体感してそれを明日の授業に持ち帰りたい。
笈川先生は、参加者の要望に応えてくださるかたちでお話しを始められました。
〇やる気のない中国の学生がたくさんいる
まずは、学生たちに「日本語は簡単です」という話をする。それは、学生たちが日本語は難しいと思っているので、それを話すだけで学生は興味を持ってくれるという。
中国の学生にとって日本語の「これは机です」「これは壁です」など、和語を覚えるのはものすごく難しく、こういった単語ばかりをおぼえるはとても大変。「あれは山です」は覚えられないが「あれは山脈です」はすぐに覚えられる。「あれは海です」は覚えられないが「あれは海岸です」はすぐに覚えられる。
ある外国語専門家の方の「外国語習得法」では、最初の半年間はがむしゃらに1000単語覚えなければならない。1000単語覚えたら、宇宙に飛び出すロケットのようにあとは自由に飛んでいけるのだという。中国にいる日本語学習者は、大学4年間で1000単語覚えられない。そうなると、ずっとくるしいまま大学生活を送らなければならない。そこで例えば、
「安心」 あんあしんする 中国語で 「安心」 ān xīn
「意識」 いしきする中国語で 「意识」 yì shí
「移民」 いみんする中国語で 「移民」 yí mín
「運動」 運動する中国語で 「活动」 huó dòng
「殴打」 殴打する中国語で 「殴打」 ōu dǎ
など、
実は、意味も同じで漢字も同じ同義同形語と、類義同形語と、異義同形語、こういった単語が2000も3000もある。これはすごいこと。1000単語を半年間で覚えれば、その外国語を習得できるわけだから、中国人学生にとって、「あ、い、う、え、お」などの50音さえ覚えれば、だれもが外国語を習得する許可証のようなものを手に入れることができる。半年どころか1週間も必要ない。読めれば意味がわかっていて、覚えたことになる。それを1年生に教えた瞬間に1年生はスイッチが入るので、日本語は簡単だと、大学4年間思い続けながら勉強する。先に、1000や2000の単語を覚えた学生に「これは机です」は覚えられる。 (中国の笈川先生の)教え子は、このことを教えていない学生と比べると、「永遠に追いつくことができないくらいの差がつく」「追いつこうとも思えないくらいの差ができる」ことになる。
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〇発音について
(日本に行ったことがない広東省の学生のスピーチの映像を見る、とても流暢であった)
中国の学生の特徴は、「たなかさんです」というとき、母音「あ」の発音の際には、開けて閉じてを繰り返す。50音を勉強するときに、口の開け方のような写真や絵などで勉強するため、一つ一つはっきりと発音することになる。そのため、とてもはっきりと「た・な・か・さ・んです」となってしまう。そこで紙やタオルなどでいいが、かんだ状態で「たなかさんです」と口を開けずに話す。また、「あ」の時の口の形は「い」、「い」の時も「い」、「う」も「い」、「え」も「い」、「お」も「い」の口の形にして話すと指導する。
発音指導を2001年からやってきて、様々な問題があり、いろいろやって遠回りをしたが、発音に関する8割の問題はこの方法で解決できた。
韓国の学生は「う」の口の形をしているので、「う」ではなく「い」にしてください」と言っている。 「どうぞ」が「どうじょ」になっている場合など、この方法で解決できるのではないか。
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〇中国の学生が、アクセントを数字でメモするが、それは意味があるのか。
中国の学生はアクセントのところで上がるので、「食べる」の「べ」のアクセントで不自然に上がってしまう。まさに、アクセントのある場所で音が下がる!と教えていて、そのことを伝えた学生の方が自然に発音ができる。数字をメモするのは意味がないのではなく、捉え方の問題なのではないか。アクセントで音を下げるのであれば、数字には意味があるのではないか。
更に、中国の学生は「日本語は、最初低いところから上にあがる」と習い、忠実に発音しようとすると、「わたしは、にほんの、まんがが、すきです」の場合、「わたしは」の「た」、「にほんの」の「ほ」、「まんがが」の「ん」、「すきです」の「き」が上がる。アクセントがないものは平らに話すよう指導している。
次に、笈川先生の実践です。最初に、実践に欠かせないいくつかのポイントをうかがいました。
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〇チームの意識
学生に「木村拓哉のプライドというドラマの円陣」の映像を見せている。グループ発表は、他の人の話を聞いていないし盛り上がらないが、チーム発表は盛り上がる。乃木坂46やロックバンドのコンサート前にやっている円陣のビデオを次から次へ見せると、若者は「自分がやらなければならないのではないか」と、心に火が付きウズウズしてくる。「私たちは天才です、私たちは天才です。日本語は簡単ですら日本語は簡単です、絶対大丈夫です、絶対大丈夫です。エイエイオー」と、発表の前に盛り上げ、一人ずつ発表し、発表が終わるとみんなでほめ合って盛り上げ、最後に円陣でしめる。
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〇ほめる
1人の発表が終わったらほめことばを3つくらい言うルールがあって、それを授業中に実施している。グループ発表では、一人に3つずつくらいほめ言葉を言うと、時間がかかり無駄な時間がかかってしまうので、聞き手全員が同時に3つほめる。5人グループの場合は、4人が同時にほめる。どんな状況になるかというと、みんな1人1人がアイドルになったような気持ちになる。それをルールとして実施する。同じ褒め言葉を3回くらい繰り返していうと飽きてくるので、50択くらいある「ほめことば集」の朗読をする。すると、ほめ言葉も変わってきて、「日本語が上手ですね」と言っていた学生が「〇〇さんは、このクラスになくてはならない存在ですね」などと言うようになり、言われた方もうれしくなるし、言った方も言えたことがうれしくなり、満足感・充実感が得られる。ほめ上手と言われるとうれしいが、「ほめことば」をいっぱい知っていないとほめることなどできない。50択の中から3つくらい選んでもらうと個性が出る。本当に個性がある人は、50択以外のことも言い出すようになる。それが本当の勉強なのではないか。
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〇型の正体
授業では、初日からスピーチをする。「私は〇〇です。あいうえお、かきくけこ、以上です。ありがとうございました。」から始まる。
初日からスピーチをするので、7日目には学生たちは堂々としている。日本語を学習し始めてまだ一週間の学生の姿をみて、他の皆さんはびっくりする。何が起きたのだろう・・・と。どんな魔法を使っているのだろう・・・と。しかし、魔法なのではなく、誰でも堂々と流暢にスピーチができるようになるシステムを作っている。それには、「型」が必要だと思っていて、日本語の勉強を始めて50音が終わった段階で「こんにちは。私は〇〇です。どうぞよろしくお願いします。私は日本の××が好きです。以上です。ありがとうございました。」とみんなの前で堂々と発表する。××は、50択ぐらい用意しているが、そのうち、50択以外のものもでてきたりする。個性というのは、いろいろな物を提示して選んでもらわないと、なかなか発揮できないと思っている。
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〇具体的な「型」
「私は〇〇が好きです」というのは「型」である。笈川先生が1回読んで、学生が4回繰り返す。そのポイントは、止まらない、一瞬の沈黙もだめ。スピーチ
の「型」は徐々に長くなる。「型」は「骨」である。今回の「型」は、「私の好きな物」がテーマだったが、(3か月の学生に)「行きたい国はどこですか」と質問すると「型」を知っているので同じようにスピーチできる。
実は中国では、「骨」ではなく「肉」を大事にしている。「肉」とは語彙(単語と文法)のこと。「肉」を一生懸命学生に教えている。学生はそれを一生懸命覚えていく。するとどうなっていくか。1年生から4年生まで「肉」を学んだ学生は、面接 の時、「行きたい国はどこですか」と質問すると、たいていは「日本です・・・」と答える。「日本についてどう思いますか」と質問すると、「いいです・・・」と答える。今度は「なぜ弊社を選びましたか」と質問すると「日本語が上手になりたいからです」となる。1年の時から「骨」の無い状態で「肉」だけを勉強しているから、結局、立ち上がることもできなければ、歩くこともできない。だから「型」が必要。
「型」は1~7まであるが、どこで切っても大丈夫。1年生は簡単な「型」と簡単な単語しか知らない。体に例えるなら、細く健康ではなく、とても痩せているが、「肉」だけと比べたらいい。自分で立つことも歩くこともできるからだ。肉が増えてきた大学2、3,4年生になっていくと、もし「骨」があれば「肉」がすごいことになって早く走ることもできる。そんな人材が社会にでて活躍できるのだと思う。「骨」が強くて筋肉があって、それを一生懸命使えばいい。しかし、中国の学生の現状はそうではないので、話ができないという状況に陥ってしまっている。
ここで会場からの質問です。コーヒーブレイク中も、先生への質問は続きました。
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〇繰り返しを4回に決めた理由
10回などもやっていた。3回ではやっと流暢になりかけたくらいな感じ。4回といいながら、もう4回、その後に天井を見ながらあと4回で、10回以上ひとつのセンテンスを読んでもらっている。10回くらいやるとみんな流暢になる。それでも足りないので15秒間練習してください。終わると、ではもう一回読んでいきましょう。と、結局20回、30回にならないと流暢にリズムよく読むことはできないと思っている。新しいものが出てきたときは4回ではなく、7回ぐらいやるときもある。ただ、2回にしたり5回にしたり、回数も変えたりする。4回、4回・・・と続けると、学生が単調でめんどくさいと感じるため、そうならないように回数を変えている。
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〇レベルによってスピードを変えるか
同じスピードで言う。10回くらい言えば皆さん、スピードについてこられる。超スローなペースで言うシーンは生活ではない。何回も繰り返すことにより、皆さんが私を見てくれる。学生たちは、わかっていない時私を見ない。ボーっとしている。10回くらい言っていると私を見てくれる。見て、あと2~3回やるとわかってくる。つまり、学生たちが教師の顔を見ていないということは、教師の言っていることが分かっていないということだと思っている。だから何回も繰り返す。 いつも「これは勉強じゃないですよ。歌か音楽のように思ってください」と言って、意識をそこに向けている。
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〇長短や促音が苦手なことについて
中国の学生は「グッチのバッグを買っちゃった」を言うとき、「ぐちのばぐをかちゃた」と言ってしまう。長さを同じにして次のよう「ぐつちのばつくをかつちゃつた」と何回も言う練習をする。そうすると拍の意識、長さの意識ができる。
「みなさこにちは」のように「ん」が言えない時は、「ん」のところに、「なにぬねの」を使って、 「こなにちは」「こににちは」「こぬにちは」「こねにちは」「このにちは」「こんにちは」という風に、ナ行を使って練習する。
「高校生」の場合は、「こーこーせが」「こーこせが」など、学生たちは長さを合わせようとしてもうまくいかない。その時は、なんでもいいので入れてみる。「こあこあせあが」など、「あ」を入れてみたりする。授業でもやって、家でもやって、長さを合わせる練習をする。
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〇FBについて
みなさんはどんなFBがほしいでしょうか。本当にあなたの問題を指摘する人の意見を聞きたいのでしょうか。本当はみなさん、ほめられたいのではないか・・・と思っているので、FBするときには本当に指摘してくださいと個人的に言われたとき以外は本当のことを言わないようにしている。政治家のような人は、ほめてほめて、最後に1つだけ言うようなやり方をする。先生方がこのようにしてくれるといいが、よかれと思ってその学生のために指摘する。その学生は本当のことを言われたのにも関わらず「いいやがった」「ゆるさない」とか、心の中でそう思ったりする。なぜか。多分、子どもの頃からお父さんやお母さんなど、周りの人の言葉に心を刺されていて、本当は指摘とかされたくない。建前としては、ご指摘をいただきますようにと誰にだっていう。先生方から指摘してほしいと言われた場合にも、いいことしか言わない。悪いことは言ってもあまり効果はない。目的は、本当の意味で、その人が良くなるのかである。しかし、もしその人が調子にのってきているなと思ったら、「厳しい話をするけどいい?あなたがもっと上手になるようにしたいから・・・」ということを10分くらいする。「早く言ってくださいよ」と言われたら、「私のためじゃなくて、〇〇さんのために言うんだから、これは〇〇さんの1年後よくなってもらいたい・・・」とまだ続け、「先生そろそろ言ってください」と心の準備が十分できた時に言う。これは、一人一人の学生や先生方の立場を考えるとそれがいいのかなと思って、FBはそういうスタンスでやっている。
更に質問者からは
発音のクラスを持っていて、良かれと思って学生にFBをしていたら、次の学期に、そのクラスが成立しなかったことがある。と続きました。
10回に1回くらいだが、学生の文法や発音の問題をたまにFBする。1つの学期に1回くらい。一人の問題ではなく、みんな同じ問題を抱えているので、「こういう問題ありますよね。みんなで笑いましょうね」と言って
「みなさんおはようございました」
「私は王と思います」
「平日は先生のおかげさまで日本語が安いになりました」
「でもわたしのスピーチは始まりました」
「作文を見ってください」
「彼女は私の彼女と思います」
「彼女は笑顔をだします」
「彼女が中国語の勉強が上手です」
など・・・これらを提示して、正しい日本語にしましょう、みたいなことをやっている。FBすることを目的としているのではなくて、FBを手段として学生たちを上手にしたい。みんなの問題点を、ある日1回にまとめている、これが意味のあるFBなのではないか。
ここで、先生の実践へ戻ります。
〇握手の授業
「型」の朗読の授業のあと、自分で練習しているときは朗読を上手にできるが、人前になると突然、緊張して朗読できなくなる。そこで「握手をして質問をする授業」をする。
1、「好きな食べ物はなんですか」という質問
2、「型」を朗読する。聞いている方は相槌を打って聞いている。
3、最後に、質問した人は、相手をたくさんほめる。
4、今度は反対に朗読した人が「好きな食べ物は何ですか」1~3までを繰り返す。
5、両方終わった段階で1回終了。
6、今度は、別の人のところに行って同じように続ける。 これを5人とやる。これは、一人目の時はドキドキして緊張するが、2人目、3人目と続けていくと、人間は不思議と緊張もしなくなり堂々とできるようになってくる。さらに、内容を覚えたりもする。
〇上級について
「『基礎が大事』(笈川先生の教材)という文章を読んで、あなたはどういう意見・感想がありますか」と聞いても、学生たちは言えない。例えば、大学の4
年生、新聞記事を読んだ後に感想を聞いても「はい、すごいです」「はい、こわいです」など一言でしか言えない。なぜなら「骨」が無くて「肉」ばかりだったから。
「話せるようになる!」(笈川先生の教材)という資料は、パターンが決まっているのでこれなら1年生でも、初級クラスでもできる。「私にはできない」と思っているからできないので、「これは小学校1年生にもできるから、あなたにもできますよ!じゃあちょっとやりましょう」と言ってから、握手をして自分の意見を言う練習をする。同じテーマ内容を5人とやるが、一人目は流暢には言えない。二人目は、ちょっと上手になる、三人目のときは、ペラペラ話している。四人目五人目では、もう堂々とした態度でできる。中国人の女子学生の目的は、日本語を上手にしたいという純粋なものだが、男性は目的が違う。上手になることは手段になる。上手になった自分をアピールしたいというのが男子学生。上手になってすごいねと言われ得意になっていく。そうやって男子学生は頑張って上手になっていく。
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〇新聞記事を見て(笈川先生の教材)
新聞記事を読んだ際の自分の見解について述べる4点の「骨」で練習もしている。① はじめにポイントを言う(1~2つくらいでいい)②理由③予想④角度を換えて考えてみると・・・といったように進める。実際に行うと長いが、この「型」のポイントが分かっていれば、大学4年間、「肉」はあっても「骨」がなかった学生が、やっと話せるようになって、5分~6分話したくなる学生がいる。内容はどんな内容でもいい。
ここで、実際に笈川先生の作った教材で参加者全員でワークを行いました。
上記の4点を駆使して、これから読む内容について、①ポイントはどこなのか、②なぜこんなことが起きたのか、③これからどうなっていくのか、④角度を変えて考えると・・・について、だいたい1分半くらいの時間で自分の意見感想を話す。3人の方と握手して、一人1分20秒で行う。一人目の時より二人目、三人目になるともっと整理されていい内容だけが言えるようになる。一人目に聞いた内容を、まるで自分が考えたかのように次の人に伝えることもできる。
ワークのやり方
1、先生が文章を読み上げる。
2、参加者はポイントをチェックしながら聞く。
3、「この文章に対してあなたの意見感想を言ってください、用意スタート」で開始。
4、1分30秒ごとにストップの合図をし、すぐに相手を褒める。
5、3人繰り返す。全体で15分くらいで終了。
注意点
チェックといっても机の上で書くのではない。(笈川先生の)授業は机がないため、読んでいる間席を立って、キーワードだけを書いたり、手のひらに書くなど工夫してチェックをしてほしい。
読み上げた後は考える時間もなく握手をし、挨拶をしてから自分の意見感想を言う。その際、男性は握手する際に、遠慮しないでしっかりと握手。相手の目を見て話を聞く。握手をした瞬間、雑音が聞こえなくなり、握手をしている相手の声だけが聞こえるために握手の手は離さない。
最後にまとめのお話しです。
〇どうしたら話が上手になり、スピーチが上手になるか
それは、簡単なこと。政治家やスティーブジョブズなど、どうしてスピーチがうまいのか。それは、同じ話をいろいろなところでしているから。相手は違うので、相手にとってその話は新鮮。今日の活動も同じで、同じ意見だけれども違う相手に話すことによって、相手にとっては新鮮な気持ちで聞いていられるカラクリとなっている。こうしたことをやっていると、だれでも上手になる。
〇「型」というのは何か
自転車で言うと補助輪のようなもの。自転車に乗れる小学生や中学生は補助輪はいらないが、最初は補助輪を使って、自転車に乗れない人は乗れるようになって、その後は補助輪を外して自由に乗ればいい。
以上、先生の講義は終了ですが、皆さんから先生へのお礼のコメントをご紹介します。
・最後の活動は、自分で体感して気づくことがあった。授業に取り入れたい。
・工夫や細やかな心くばり、仕込みがたくさんわかった。人はほめられたいんだということもよくわかった。
・笈川先生の感性がすごい。
・「型」を伝えて流暢さを引き出すやり方を身をもって知ることができた。
・最後の活動がとても楽しかった。人の発言を聞いてほめたり、自分の発言をほめてもらったりするやり取りがとても楽しいことがわかり、学生をたくさんほめようと思った。
・ドキドキとした緊張感のある活動で、自分が開かれた感じを味わうことができた。
・「型」が大事。
・どれだけ学生に話してもらうかを意識している。「型」を使わせていただく。
・2点あります。違う人に3回説明すると獲得できる。握手をすることで人の懐に飛びこめる。
・この活動で、お互いが知り合える。教室が一体化できる。
・握手をしながら話すことで、周りの声が気にならず二人の話に集中できるという効果がよく分かった。
・活動の際、3回のなかで話し方を換えたらうまくいかなかったので、もう1回やりたかった。
・あきらめず続けていくことが大事。
・握手すると心のコミュニケーションがとれて、お互い話しやすくなる。つながりもできる。
・「い」の口の形で発音するという点、とても参考になった。
・たくさん例を出してそこから選ぶということも学んだ。
・笈川先生の、話し方・間・テンポが心地よかった。聞いている方もワクワクと楽しかった。
・「骨」をしっかりつけたいと思った。
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嶋田先生よりお言葉をいただいました。 今まで、動画やfacebookで拝見していた、ぜひお話を伺いたいと思っていた。今日のお話しは、笈川先生の人間力。
それが教師力アップにつながる。(嶋田先生が)教師が「させる」を言ってはいけないといつも言っているが、そこそことお互いに共感。人間力エピソードとしてひとつ。プロジェクター接続で最初に映らない事象が起きた際に、「え?」とおっしゃらない。「いいですよ、なくても」と。なければ違うやり方を考えられる、その教師力。そして、(参加者の)名前を全部覚えて呼ぶ。感動した。根底にある人間力が人を引き付ける。
笈川先生からも、最後のお言葉です。 実はまだ解決できていないことがある。(笈川先生の)クラスは10日間。何ができるかというと、全然話せなかった学生が、5分6分とペラペラと話せるようになる。そのように上手になった学生が、上手にならない学生を馬鹿にするようなところがあって、どうしたらいいか。今日はお見せしていないが、超ネガティブな教材を使うときがある。例えば、「女性が一番嫌いな男性のタイプ30」をまとめた教材。男子学生には心の中で反省してもらうようなところもある。(笈川先生の)教材は、ポイントをたくさん提示するので、一つや二つは心に刺さるものがある。 一人の頭では限界がある。たくさんの人で作ることが将来的にできたらいいなと思っている。 今日はありがとうございました。 笈川先生、本当にありがとうございました。 懇親会もご一緒させていただき、お話をたくさん伺いました。もちろん「骨」の話、「握手」の話と、実践的な気づきや参考になるお話がたくさん詰まっていました。でも、それだけでなく一番強く思うのは、先生のお人柄が素晴らしいと感じたことです。私たちは、どれだけ学生に寄り添うことができるのか、そして、学生にとっていいことは何かを常に考えられる力が必要だし、どんな状況でも、動じずに対応できる臨機応変さ。笈川先生の懐の大きさを感じました。以前、学生の名前を覚えて呼ぶことの大切さについて、お話を伺った際に、すぐに実行に移しました。常に名前を呼ぶように意識すると、授業中の学生の意識も変わります。素晴らしいと実感しておりました。今回うかがった内容も、日々の実践の「骨」として強化していけるよう努力しようと強く思いました。本当にありがとうございました。