大好きな日本で働きたい!~視覚障害を持つ二アールさん、ワーホリで再来日~

2016年6月に「『視覚障害を持つ学習者』に対する日本語教育を考える(講師:北川幸子)」というアクラス特別研修に関する報告記事を載せました。

http://www.acras.jp/?p=5686

 

北川さんは、2013年秋学期から1年間、京都外国語大学に留学した二アールさんに

二アールさんと北川さん(アクラスにて)3.1

二アールさんと北川さん(アクラスにて)3.1

日本語指導をしてきました。北川さんにとって視覚障害を持つ日本語学習者の指導は初めてでしたが、仲間と話し合い、工夫を重ねて、全く目が見えない二アールさんが少しでも快適な留学生活が送れるよう、努力を重ねてきました。

 

二アールさんは、小さい時から日本が大好きでしたが、京都外大での留学生活を経て、さらに日本が大好きになりました。「大学卒業後は、日本で働きたい!」と、カナダの大学を卒業すると、今度はTEFL(英語教授法)の勉強を始め、着々と準備を進めてきました。そして、ワーキングホリデービザを取得して、2月17日(金)に再来日したのです。今日、北川さんと一緒にアクラスに来てくれた二アールさんとの話し合いは、とても貴重な時間でした。ここで、ちょっと皆さまに二アールさんをご紹介したいと思います。

 

 

■「母のがんばり」で目覚めたチャレンジ精神!

何にでも積極的に挑戦し、次々と道を切り拓いてきた二アールさんですが、小さい時は、決してそうではなかったそうです。何か一つのことに夢中になり、自分のしたいことだけをしたい子どもでした。しかし、お母さまは、彼にさまざまなアクティビティを紹介し、「行きましょう」「行ってください」と勧めたそうです。こうして、10歳を過ぎたあたりから、どんどんいろいろな事に関心を示すようになり、フルート、チェス、壁のぼり、小説を読むこと・・・と、新しいことに挑戦する子どもになったのだそうです。

京都外大時代①「ブラインドテニスの体験会」

京都外大時代①「ブラインドテニスの体験会」

 

日本語の勉強を始めたのは、高校生の時に「日本の歴史」に興味を持ったがきっかけだったと言います。しかし、高校には日本語コースがなかったので、中国語を取りました。とにかく言語が好きだったのです。大学に入って日本語を学ぶチャンスが生まれました。専攻は、東アジア研究です。こうして、彼は日本語、日本文化に強く惹かれていきました。そして彼は、こう付け加えてくれました。

 

カナダでは、盲人は20%ぐらいしか仕事がありません。でも、日本ではもっとチャンスがあると思いました。私は自立したいという思いで、日本にやってきました。英語教師という仕事で、大好きな日本で生活ができたら、とても幸せです。

 

 

■「自立できるように支援してください」という父の願い

「お父さまはどんな方?」と尋ねる私に、こんな答えが返ってきました。

京都外大時代②「琵琶湖で(お姉さん夫妻と)」

京都外大時代②「琵琶湖で(お姉さん夫妻と)」

 

父は、あまりいろいろ言いませんでしたが、私が相談すると、すぐに答えを言わず、「どうしてこれが起こったんだと思う?自分で考えて答えを出してね」と言いました。だから、いつも私は、なぜだろう?と考えるようになりました。クリエイティブな子どもになったのは、父のお蔭です。

 

そう言えば、北川さんから去年6月の研修会で、こんな話を聞きました。

 

二アールさんのお父さまは、二アールさんと一緒に来日され、1週間だけ京都に滞在してカナダに帰国なさいました。その1週間の間にお父さまがなさったこと、それは「一番近くのコンビニまで二アールさんが自分で行けるようにしたこと」でした。「この先ずっと誰かがそばにいられるわけではありません。ですから、息子には自立できる方向で支援をお願いします」という言葉を残して、カナダに帰られたのです。

 

さらに、二アールさんはこんな言葉を付け加えてくれました。いつも新しいことにチャレンジしたいという彼の支えになっているのは、

京都外大時代③「兵庫県にある展示物に触ってもよい美術館」

京都外大時代③「兵庫県にある展示物に触ってもよい美術館」

お父さまのこんな教えだったのです。多くの若者に知ってもらいたい言葉だと思います。どんな逆境にあってもくじけることなく、新たな道を切り拓いていく力……それは大切な人からもらった「ことばの力」が支えになっているのですね。

 

簡単に手に入るものは価値がない。苦労して手に入れたものこそ価値があるんだよ。だから頑張って、苦労していろいろな物を手に入れてほしい。苦労すればするだけ、価値のあるものが手に入る。

 

 

■二アールさんに、充実した日本での生活を!~小さなサポートがおおきな力に~

今、所沢の友だちの家に住んでいる二アールさんは、駅まで徒歩40分かかるのだそうです。「普通の人だったら20分で行けるでしょうけど、私の場合は時間がかかりますから」と淡々と答えてくれました。私が引っ越しの希望を聞いたところ、「できれば徒歩20分以内。そして、道路が簡単に渡れる所に住めれば幸せです」という言葉が返ってきました。

 

今回、二アールさんへのサポートを考えながら動いていたのですが、いろいろな情報をいただくことができました。

 

〇「日本視覚障害囲碁普及会」がありますよ。毎月第1土曜日に活動をしています。

京都外大時代④「平安神宮の夜桜」

京都外大時代④「平安神宮の夜桜」

   よかったら紹介してあげてください。

 

〇東久留米市に全盲の市議会議員の方がいらっしゃいます。卒業した大学は都内ですが、オハイオ州にある大学に留学経験があるそうです。一度お会いになってみてはどうですか。

 

〇フルートが趣味だったら、地域のオケに入ったら仲間が増えて楽しいかもしれませんね。

 

皆さんも、何か有益な情報があったら、教えてくださいませんか。みんなの小さなサポートが、大きな力になっていきます。私も、大したことはできませんが、自分のネットワークを使って、少しでもお役に立ちたいと思っています。どこまでも前向きに道を切り拓いていこうとする二アールさんの姿勢は、多くの人に勇気とやる気と希望を与えてくれることでしょう。

嶋田 ➡ general@acras.jp

※「京都外大時代の写真」は、北川さんから頂きました。また、「京都新聞の記事」も北川さんから頂いたものですが、3年前の記事ですので、アップしました。

2014年6月17日の記事

 

 

 

 

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