「日本語教育推進議員連盟」誕生~「これまでの活動」を振り返って~

2月24日、公益社団法人日本語教育学会のホームページに、社会啓発委員会より「日本語教育推進議員連盟」(以下「日本語議連」と称します)の動きに関する情報が掲載されました。ぜひお読みください。今こそ、みんなで力を合わせ、オールジャパンで「日本語教育推進基本法」の実現に向けて考え、行動していく時だと思います。

 http://www.nkg.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/02/20170224giinrenmei.pdf

※公益社団法人日本語教育学会のサイトは、2022年に大改訂が行われました。そのため、本記事に記載されているURLは、見られなくなっています。

今後、削除か移動かなどについて調べる予定ですが、ご迷惑をおかけしていること、お詫びいたします。

 

これまで自治体任せになっていた日本語教育に対して「国策として考えなければならない」という気運が高まってきました。日本語学校の質の保証や教師の待遇改善、地域日本語教育における課題、技能実習生や研修生の日本語習得の課題・・・・・・日本語教育に関わる課題を挙げ始めたらきりがありません。

 

しかし、これまでは現場で実際に外国人に向き合っている人達の善意・熱意・使命感によって支えられてきました。また、何か起こる前にグランドデザインを考えて実施するのではなく、対症療法的に問題が出ると、それに対応してきたと言えます。

 

それが、やっと「日本語教育推進基本法」を作ること、次に、さまざまな法案を・・・・・・という動きが出てきました。実は、日本語教育学会では、国立国語研究所の廃止・移管問題に関して会員有志で活動を開始し、やがて勉強会もできました。さらには、学会のワーキンググループが発足し、「立法に向けて何をすべきか」を考え、行動してきました。そうした動きについて、微力ながら活動に関わってきた、一人の日本語教育学会員の立場から振り返ってみたいと思います。

 

 

■(1)日本語教育振興法法制化ワーキンググループの活動

            <2009年8月~2012年3月>

「日本語教育振興法法制化ワーキンググループ」が立ち上がったのは国立国語研究所の廃止・移管問題からでした。ここで、最終報告書

WG最終報告書

WG最終報告書

の「はじめに」を転記して、なぜWGが発足したのかをお伝えしたいと思います。

2008年秋、歳費削減、行政改革の大きなうねりの中、旧国立国語研究所を別組織に移管し、日本語教育研究部門を実質的に廃止するという政府法案が国会に提出されようとしていました。このままでは、ますます重要度を増す日本語教育研究が大幅に後退してしまうのではないか。危機感をいだいた日本語教育関係者は、日本語教育研究部門の撤回を目指して、国会への働きかけを開始し、翌年2月に法案審議が開始されてからは、請願署名を集めて文化庁に提出するなど、精力的に運動を繰り広げました。

こうした運動が効を奏して、国会審議で政府法案に一連の修正が加わり、新研究所でも日本語教育研究が存続するという形での緊急避難がなんとか叶いました。

しかし、これらの過程を通じて、日本語教育政策について国の基本方針や裏付けとなる法律が存在しないことがこうした問題の根源にあること、したがって、日本語教育を総合的に振興する法律の整備を目指すことが必要であることが明らかになったと言えます。

本報告書は、こうした問題意識のもとに日本語教育学会内に設けられた「日本語教育振興法法制化ワーキンググループ」の2年半にわたる活動の記録です。           (後略)

         ※リンクが切れていて、現在は見ることができません。

 

 

■(2)『日本語教育でつくる社会~私たちの見取り図~』<2010年10月>

WGメンバーは、自分達の考えをより広く、多くの人に知ってもらいたいと考え、『日本語教育でつくる社会』(ココ出版)を執筆しました。ここでは、目次と「はじめに」の一部を記すにとどめます。

 

第1章  外国人と共に生きる社会~なぜ「日本語教育推進法」が必要か

第2章  地域日本語教育システム(1)~コーディネーターと地域日本語教育専門家

第3章  地域日本語教育システム(2)~地域日本語教育センター日本語教育でつくる社会pg

第4章  日本語教育政策のマスタープランと国立日本語教育研究所

第5章  義務教育のあり方と日本語教育~教育基本法・教員免許制度

第6章  言葉にかかわる権利を考える~言語学習権(日本語・母語)

第7章  日本人と日本社会に対する日本語教育の貢献

第8章  年少者(児童・生徒)に対する日本語教育

第9章  企業・大学・行政・地域をつなぐ日本語教育

第10章    地域力を育む日本語学校

 

「はじめに」の最後にはこう記されています。

 

 「ずいぶん変わったなぁ。私たちも社会も。あのころ、日本語教育のこと、何も

知らなかった。それに、近くにいる外国人とふつうに日本語で話せるだけで、世の中に

活気が出てきたり、暮らしやすくなるなんて!」

 みんながこう実感してくれる、そんな10年後を思い描きながら、私たちは見取り図を

作りました。

 

あれから既に7年経ちました。そして、やっと「山」が動き出したように感じます。

      ※日本語教育学会のWGメンバーによるものですが、学会の公式な意見表明と捉えられる懸念があることから

「日本語教育政策マスタープラン研究会」として出版しました。

 

 

■(3)シンポジウム「活気ある社会づくりと日本語教育」<2011年6月>シンポ表

WGでは、議論を重ね法案の骨子案を作成したり、また、シンポジウムやパネルディスカッションを企画・運営したりと、さまざまな活動をしてきました。その中で、2011年6月に実施した、「活気ある社会づくりと日本語教育」についてお話ししたいと思います。

 

このシンポでは、基調講演は劇作家・演出家の平田オリザ氏、次のパネルディスカッションは、言語学者の大津由紀雄氏、文化人類学者の陳天璽氏、経団連の井上洋氏の3名で行われました。さらに、政策展望では、民主党の中川正春議員と自由民主党の馳浩議員が登場、と実に多彩なメンバーによって多角的・多面的に議論が進められました。

これまで、日本語教育について政治家が率直に意見を語る場面は少なく、参加した現場の日本語教師からは「これまで聞いたことのない話で、とても刺激になった」という意見から、「いい意見をいろいろ聞いたけれど、それを本当に実現させてほしい」という意見まで、さまざまな感想が寄せられました。

  シンポジウム「活気ある社会づくりと日本語教育」を終えてシンポ裏

    http://www.nihongohiroba.com/?p=1434

   (HP日本語教育<みんなの広場>,

2011.6.30)

 

 

 

■(4)1年の期限付き特別委員会としての「日本語教育法制化推進委員会」

 <2013年4月~2014年3月>

本委員会は、2009年8月より2012年3月まで活動を続けたワーキンググループの活動実績や課題を踏まえて、1年間の期限付きの特別委員会として設立されました。スタート時点では、以下の4つの所掌事項を挙げましたが、時間的な制約から特に(1)と(2)に力を注ぎました。

 

(1)日本語教育を振興する法案及び条例案の骨子を作成すること

(2)日本語教育の法制化について関係機関・団体等に働きかけを行うこと

(3)日本語教育の法制化について日本語教育関係者の協力を求める活動を企画・実施すること

(4)日本語教育の法制化について広く世論を喚起する活動を企画すること

 

関心がおありの方は、最終報告書をご覧ください。ここに、目次のみ記しておきます。

 

はじめ

第1章  日本語教育の法制化はなぜ必要か

    1.1   後追いの緊急対応

  1.2   以前からの課題推進委員会表紙

    1.3   日本語教育の担い手の待遇

  1.4   多くの省庁にまたがる管轄

    1.5   公的なシンクタンク機能の不在

  1.6   包括的な政策を支える法律の整備

  1.7   活気ある社会の実現

  第2章 法制化WGから託されたこと

第3章 日本語教育政策の法制化を推進する道筋

   3.1 法案が先か、条例が先か

   3.2 条例案作成マニュアルの公開とセミナーの開催

   3.3 自治体ロビイングと国会ロビイングの相乗効果

   3.4 広報文書の作成とメディアへの働きかけ

   3.5 まとめ

  おわりに

 

「日本語教育法制化推進特別委員会最終報告書:現場の知恵を日本語教育政策に生かす道筋」(2014年3月作成)

http://www.nkg.or.jp/oshirase/2014/houseikahoukoku.pdf

 

 

■(5)「公益社団法人」として新スタート~社会啓発委員会の設置<2015年7月~>

日本語教育学会は、2013年4月に公益社団法人に生まれ変わりました。その後、理念体系を作り上げ、透明性、一貫性、継続性の実現に向け、努力してきました。まずは、使命などを記したいと思います。

 

◆使命   「人をつなぎ、社会をつくる」

 

◆学会像  「共に集い、行動する学会」

 

◆全体目標

①日本語教育の学術研究を牽引し、研究者を育成する。

②日本語教育の実践の創造と深化を共有し、実践者の育成を図って、

学習環境を整備する。

③日本語でコミュニケーションと相互理解を深め、人生を豊かにする。

④日本語でともに生きる豊かな社会を創造する。

 

◆事業目標・内容

①日本語教育の学術研究を促進する

②  日本語教育の実践を促進する

③  日本語教育の情報交流を促進する

 

 

社会啓発委員会は、「全体目標」としては③および④、「事業目標・内容」に関しては③を目指しています。「事業目標・内容」に関して、少し詳しく見ておきたいと思います。

 

③日本語教育の情報交流を促進する理念体系

・日本語教育の社会的認知を高める

・日本語教育の社会的環境づくりをめざす

・社会的課題の解決のために行動する

 

詳しくは、日本語教育学会ホームページにある「理念体系」をご覧ください。

 

◇理念体系2015年版

 

https://www.nkg.or.jp/.assets/rinen_2015-2019.pdf

   ※現在は、2015-2019年版がアップされています。

 

  ◇理念体系ダイジェスト版 

      https://www.nkg.or.jp/.assets/rinen_2015-2019_digest.pdf

 

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