「外国人集住都市会議『とよはし2016』」(2017.1.31)に参加して

1月31日に豊橋にて第16回「外国人集住都市都市会議」が開かれました。昨年は浜松でしたが、その時の報告記事は以下のとおりです。「浜松宣言2015」も載せてありますので、ご覧ください。

http://www.acras.jp/?p=4986

 

今回の会議は、日本語教育がメーンテーマとして取りあげられたという点が大きな特徴と言えます。しか豊橋表紙 し、約400人の参加者の中で、日本語教育関係者の参加が極端に少ないという現状を見て、いろいろ考えさせられた集住都市会議でもありました。

最近、日本語教育を取り巻く環境には変化が見られます。11月8日「日本語教育推進議員連盟」の発足、11月28日「外国人技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」の公布、さらには12月7日には「教育機会確保法」が成立しました。こうした中で開かれた豊橋集住都市会議、どんな話し合いが行われ、どんな「2016豊橋宣言」が提示されるのか期待を込めて出かけていきました。

 

 

■基調講演のテーマから見える「外国人児童生徒の日本語の課題」

 

伊東祐郎東京外大教授による基調講演のテーマは、「これからの日本語教育~外国人児童生徒が将来活躍するために~」でした。いかに、今外国にルーツのある児童生徒の日本語力が喫緊の課題になっているかが窺えます。伊東氏は、日本語教育の立場から、現状および課題について①子ども固有・特有の原因・事情による課題、②受け入れ体制・意識にかかわる課題、③日本語・教科指導にかかわる課題にわけ、最後に解決策についてあげていきました。ここに、『外国人集住都市都市会議 とよはし』「講演骨子」より、「具体的な行動」に関して記載しておきます(p.5)

 

①  学力・言語力における個人差への対応外国人集住都市都市会議会員都市の外国人人口データ2018.4.1現在p.4

②  生活言語指導から教科学習指導への方法論の確立

③  教科教育と日本語教育との連携

④  教員・指導者等の対応力・指導力向上のための研修機会の創出

⑤  学際的・組織的情報交流・連携のためのネットワーク作り

 

 

■粘り強い働きかけが「新しい流れ」を創る!

 

集住都市会議は、昨年11月、「多文化共生社会の実現に向けた外国人児童生徒等教育の充実について」という要望書を国に提出しました。いずれ集住都市会議のホームページに当日配布の資料などがアップされますが、ここでは一部ご紹介しておきたいと思います。

 

11月2日に外国人児童生徒等への指導者の基礎定数化に係わる要望書を提出しましたが、11月17日に公表された、財政制度等審議会からの「平成29年度予算の編成等に関する建議」において、議論の進展がなかったことから、実効性のある議論と確実な予算措置を働きかけるべく、改めて11月24日に財務省あてに要望書を提出しました。(p.17)

 

さらに、12月5日には、「外国人児童生徒の教育機会の確保に向けた緊急アピール」を国に提出しました。

特別の教育課程の実施状況(p.7)

特別の教育課程の実施状況(p.7)

 (前略)・・・急速な社会経済のグローバル化と人口減少のなかで、かつて、特定地域の一時的なものとされた外国人労働者の受入れや外国人住民との共生が、今や国全体で共有すべき課題となっていることを、私たちの会議は繰り返し強く訴えてきたところである。

外国人材を受け入れる際、外国人児童生徒の教育機会の確保が、極めて重要な課題となることは、私たちの経験からも明らかであり、その充実を図ることは日本再興戦略に盛り込まれた政府の方針にも合致するものである。

私たちは、まさに未来への投資として、外国人児童生徒の教育機会を確保するため、国において日本語指導の充実や、「特別の教育課程」のために必要な指導者の安定的・計画的な配置、そのための基礎定数化の実現を改めて強く望むものである。

 

この基礎定数化に関しては、さまざまな方面からの働きかけにより、これまでの21.5人から18人に変更となるなど、進展がありました。しかし、多様な教育現場に対するきめ細かな対応が求められ、これからもしっかり見守っていく必要があると思われます。

 

 

■NPO法人「羽場赤坂デイ」を立ち上げた馬場田正美さん

 

日本社会で苦労しながら社会参加をしていった方の体験談は、心を打たれ、私達にさまざまなことを考えさせてくれます。中国帰国者二世の方との結婚で来日した馬場田さんは、何度も壁にぶつかりながら、ついに介護施設を立ち上げました。起業しようと相談に行ったときのことをこんなふうに紹介していました

 

「友人はいるか。同級生はいるか。お金はあるか。お墓はあるか。人脈はあるか」という言葉を投げかけられました。でも、日本で生きていくだけで精一杯。そんな私に対してその人は、「じゃあ、事業をしたいなんて考えるな」と言いました。

辛かったですが、私は考えました。学校に行けば同級生が作れる!ボランティア活動をすれば人脈が作れる!仕事をすればお金ができる!お墓は、買えばいいんだ!

 

その後も試練は続きましたが、ついに立ち上げることができ、今は、認知症対応型通所介護「羽場赤坂デイ」で管理者として生き生きと働いていらっしゃいます。日本社会でいくつもの壁を乗り越えて、夢を実現させた馬場田さんは、「念ずれば花開く」という言葉で話を締めくくりました。

 

 

■還流型ではなく、「ともに社会をつくる一員」としての受入れを!

 

とても印象的だったのが、浜松市の鈴木市長の発言でした。技能実習制度に関する質問に、厚労省外国人雇用対策課長は、次のように答えました。

 

技能実習制度は、秋に適正化法案ができました。いかに出てきた問題を適正にやっていくかということであり、監督も強化されます。将来の受入れのあり方は、技能実習制度は技能実習制度として、適切にやっていくことであり、外国人の受入れとは分けて考えるべきことですから……。

 

この答弁に対して鈴木市長は「これは、分けて考えられることではないですよ。そもそもそういう分けて考えるという発想自体が問題だと思います」と発言し、会場から大きな拍手が生まれました。何人ものパネリストが、3年、5年したら国に戻ることを前提にした制度に基づく還流型ではなく、もっと定住型の外国人受入れを考える必要があると発言していました。長いスパンで、「ともに社会をつくる一員」として日本に来る外国人を見る目が必要なのではないでしょうか。

 

また今年も語られた「外国人庁」の創設は、「2016豊橋宣言」にも盛り込まれました。言い続けていくこと、動き続けていくことで、次の一歩が生まれてくるのだと期待しながら、ともに活動を続けていきたいものです。豊橋宣言2017.1.31png

 

 

 

 

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