「外国人集住都市会議『はままつ2015』」(2015.12.17)に参加して

2001年に浜松で始まった「外国人集住都市会議」は、今年で15回となりました。その間、さまざまな議論を重ね、新たな提言が出されてきました。登壇者の中には、「何回会議を繰り返しても事態はあまり変わっていない。さらに新たな課題が出てくる。だとしたら、こうした会議をする意味はあるのだろうか」といった問いかけも出てきました。しかし、だからこそ関係者が一堂に会して、言い続けていくことが重要であるとも言えます。簡単に参加レポートを記すことにします。

 参考:外国人集住都市会議会員都市

【群馬県】伊勢崎市、太田市、大泉町

【長野県】上田市、飯田市

【岐阜県】美濃加茂市

【静岡県】浜松市、富士市、磐田市、掛川市、袋井市、湖西市、菊川市

【愛知県】豊橋市、豊田市、小牧市

【三重県】津市、四日市市、鈴鹿市、亀山市、伊賀市

【滋賀県】長浜市、甲賀市

【岡山県】総社市

(オブザーバー)【東京都】新宿区、大田区

 

■集住都市会議の変遷~「多文化共生都市会議」への名称変更という選択肢~

基調講演の山脇啓三さん(明治大学)からは、これまでの歩みを3つの時期に分け、今年度からは第4期と捉えることの意義について詳しい説明がありました。

 

第1期(2001年~2004年)「地域共生から多文化共生へ」

 

第2期(2005年~2008年)「規制改革」「国との対話」

 

第3期(2009年~2014年)「政治主導」

 

第4期(2015年~     )「多様性」

 

これまで、浜松、豊田、四日市、美濃加茂、東京、飯田、長浜と、さまざまな都市で開催され、15年経ってまた浜松に戻ってきました。その間、政権交代あり、リーマンショックありと、外的要因によって外国人集住都市の状況も大きく変化してきました。南米日系人が大きく減少し、一方でアジア系外国人の増加、また外国人の定住化が進んでいることなど、スタート時点とは大きく変化してきています。こうしたことを受け、「集住都市に限らず、広く多文化共生を考える会議」にしてはどうかという提案がなされました。

(「外国人集住都市会議『はままつ2015』」資料pp24-25)

 

 

■事例報告から見えてきたこと~みんなで考え、行動することの大切さ~

浜松国際交流協会で主任・多文化共生コーディネーターを務める松岡真理恵さんからは、次のような問いかけがありました。

 

公営団地で、ゴミのルールを守らない、掃除に出て来ない、自治会費を払わないなどさまざな外国人に対する苦情が寄せられるが、実は、これは外国人の問題ではなく、日本社会の問題なのだ。「コミュニケーションの課題」「自治体運営の課題」「福祉住宅化している公営団地の課題」という日本社会の課題が鮮明に浮き彫りにされているのであり、これを外国人問題にすり替えることなく、問題の本質を見極めることが大切。その上で、課題解決に向かうべきである。

 

また、ボランティアチーム「We are with You」で積極的に活動する宮崎マルコさん、角田加代子さんは、2011年3月の東日本大震災を契機に立ち上がった活動について報告してくれました。若者のこうした活動がどんどん広がっていくことを願ってやみません。

 

第二部では、グローバル人財サポート浜松を主宰し、「在住外国人支援」「次世代育成と活動支援」活動を行っている堀永乃さんから、特に介護人材育成に絞って事例報告がありました。65歳以上の外国人住民の増加、外国人を人財として活用することの意義について、ご自身の活動を通した提言がありました。EPAにばかり目を向けるのではなく、地域住民による、地域住民のための介護という視点の大切さを改めて感じさせられました(2013年度静岡県の介護分野におけるデータ:就労中の外国人200人、うちEPA22人)。

参考:堀さんのご報告の詳しい内容は、以下のURLでご覧いただけます。

http://www.slideshare.net/horihisano/ss-56329546

 

最後の事例報告は、COLORS(浜松で活動する外国にルーツのある若者グループ)によるものでした。これは、2013年10月に「浜松国際交流協会」が主催した「78ヵ国の浜松市民大集合http://www.clair.or.jp/j/multiculture/docs/hamamatsu.pdf」がきっかけで、翌2014年1月に発足した若者グループです。こんな自主的なグループが生まれ、活発に活動していることは、地域社会の活性化に繋がっていきます。

 

 

■「外国人庁」の創設を提案~司令塔としての国の果たすべき役割~

 

これまでも省庁縦割りから来る問題点は、アチコチで指摘されてきましたが、今回の会議でも繰り返し出てきました。そして、浜松の鈴木市長からは、「外国人庁」創設案が出され、さらに、「近い将来日本は外国人を受け入れていくと言わざるを得ない状況になる。それを前提にした積極的な取り組をすべきではないか」といった意見が出されました。もちろん「外国人庁」提案は、今回初めてではなく、これまでにもなされているのですが(例:関西経済同友会2012年)

http://www.kansaidoyukai.or.jp/LinkClick.aspx?fileticket=Q0dRw%2BV%2FGX4%3D&tabid=322)、いまだ大きな議論にもならず、今日に至っています。

 

「住民基本台帳制度(在留カード)」(2012年7月開始)が始まったり、第5次出入国管理基本計画において「国民的議論」という文言が入るなど、着実に「変化」の跡は見られるものの、包括的な「日本社会は、これからどういう方向に向かうことが望ましいのか。それはなぜなのか」といった議論が活発に行われる土壌作りは、まだまだ時間がかかりそうです。そうこうしているうちに、日本は世界の中で、ある意味取り残されてしまうことにもなりかねません。失望して日本を去っていく外国の方々が増えることも懸念されます。

 

日本語教育にしても、「生活者としての外国人」に対する日本語教育は文化庁文化部国語課、児童・生徒の日本語教育は文科省初等中等教育局国際教育課、技能実習生は厚労省・・・と所轄官庁が異なります。さらに、生活全体で考えると、法務省、外務省、経産省・・・さまざまな省庁が関係してきますが、相互に強い連携があるとは思えないのが現状です。こうしたシステムにはたくさんの問題が潜んでいることを考えると、一刻も早く「外国人庁」のようなものが誕生することを願わずにはいられません。

 

最後に、当日配布された「浜松宣言2015」をお伝えすることにします。

浜松宣言2015(2015.12.17)

 

 

 

 

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