皆さんは、「バラ」「ブドウ」「ちみもうりょう」を書くことができますか。昨日(1月28日)、浜松で、漢字教育士のブレット・メイヤーさんとお会いする機会がありました。ブレットさんとお話しする中で、「漢字の成り立ちを考えることの面白さ、ストーリーで覚えることの楽しさ」を再認識することができました。ブレットさんは、非漢字圏出身者として初めて漢字検定1級に合格なさった(2012年合格)ことで有名ですが、今では、立命館大学認定の漢字教育士としても大活躍。テレビやラジオで漢字について語るブレットさんは「ぶ先生」として大人気です。
■『漢字たまご』がつないだ縁~人とのつながりが新たな発見を呼ぶ!~
昨年11月のことでした。浜松日本語学院で行われた日本語教師養成講座を終えて東京に戻ると、オブザーバー参加をなさっていた針山さんからこんなメールが届いていました。
今日の前半で漢字学習のお話を聞きながら思い出したことがありました。
9月にTEDxHamamatsu – ideas worth spreadingというイベントがあり
ブレット・メイヤーさんという浜松在住のアメリカ人が登壇されました。
いわゆる漢字オタクさんなのですがとても面白いプレゼンをされました。
その動画が最近アップされたのでお送りします。
ブレットさんのプレゼンを見て私も魑魅魍魎が書けるようになりました。
https://www.youtube.com/watch?v=jUGTk0-GV4s
Kanji is Story, Art and Toy | Bret Mayer | TEDxHamamatsu
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早速ビデオを拝見した私は、「ぜひお会いして、ブレッドさんの漢字への思いについて直接お聞きしたい!」と針山さんにご相談しました。なんとブレットさんとはお知り合いとのこと、そこですぐに連絡を取ってくださいました。人と人とのつながりは、たくさんの可能性を生み出し、またさらに人の輪を広げていってくれます。
■アニメから入った漢字の学び~「自分の好きなこと」から漢字を楽しもう!~
漢字学習が好きではない、漢字は苦手だ・・・という日本語学習者に対するアドバイスを伺ったところ、次のような答えが返ってきました。
誰にでも好きなことがありますよね。私は「ドラゴンボール」が好きだから、その中の漢字に興味を持って、どんどん漢字の世界を広げていきました。たとえば、主人公の道着に「亀」という漢字がある。悪役には「魔」、また「神」という漢字。こういうことから興味が深くなっていきました。
だから、もし「空手」が好きだったら、空っぽの手、何も持たないで戦う・・・
というようなストーリーから覚えていくと楽しくなりますね。
■漢字学習の楽しさ・面白さ~ストーリーで理解を深め、形で遊ぼう!~
ブレットさんは、漢字はやはり書いて覚えることが大切だと言います。しかし、ただ意味もなくノートに写すだけではだめ。ストーリーを考えたりしながら勉強を楽しくすることが大切だとアドバイスをしてくださいました。
たとえば、ランニングするとき音楽を聞きながらしますよね。そうしたら、2時間なんてあっという間に経ってしまう。だから、漢字を書くとき、覚えるとき、好きな音楽をかけてやるのも一つの方法。自分らしい勉強法を考えることが大切です。
そして、漢字は難しいからこそ遊び心を持って勉強することが大切なのだとして、さらに「漢字は三千年前から今日に至るまで、常に進化してきました。漢字のストーリーで理解を深め、漢字の形をおもちゃとして遊び、楽しみながら勉強するのがお薦めです」と付け加えてくださいました。インタビューではいろいろな例をあげてくださいましたが、その1つに「魑魅魍魎(ちみもうりょう)」があります。このストーリーに関しては、上述したU-Tubeをご覧ください。きっとこれで「魑魅魍魎」という漢字は二度と忘れることはないでしょう。ではもう少し、「ブレット先生の漢字学習アドバイス」をお伝えしましょう。
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漢字はただの文字ではなく、漢字にはストーリーがあります。そして、漢字は触っていけない物ではない。パズルやおもちゃとして分解して遊ぶこともできます。
漢字はただの絵ではなく、アートなので、自分のイマジネーションで本当の美しさ、本当の面白さを引き出すこともできます。
漢字は苦労して丸暗記して覚えるものではありません。漢字を恐れずに、遊び心いっぱいで楽しんでください。
■漢字の良さを再発見しよう~地元の小学生に「英語で漢字國語クイズ大会」!~
昨年8月に浜松国際交流協会(HICE)で、「ブレット先生と英語で漢字國語クイズ大会」という講座がありました。しょっちゅう浜松に行っている私ですが、このことは知りませんでした。これも人の輪の有り難さ、HICEの事務局長がブレットさんとのインタビュー直前に、いろいろ教えてくださいました。そこには、こんなリード文がありました。
漢字検定1級、ことわざ検定2級、日本語能力検定1級合格者のアメリカ人、
ブレット・メイヤー先生から漢字の魅力を教えてもらおう!英語を交えながら、
漢字検定や入試に出題されるような漢字やことわざ、英単語までもクイズ形式
で楽しく学びます。
(対象:小学5年生~中学3年生)
このときのことをお聞きすると、ブレットさんからクイズ大会に関してこんな感想が返ってきました。一人でも多くの子どもさん達にブレットさんの話を聞いてもらいたいものです。
漢字が好きじゃなかったけど、このクイズ大会で漢字が好きになった!という声を聞いて嬉しかった。学校で、ただこの漢字を書いて書いて・・・というのではなく、この漢字はどういう漢字? と考えて練習すると楽しくなります。どんな難しい漢字でもストーリーをつけるといいですね。
■漢字の魅力再発見~「古いもの」を使って、現代の教育をパワーアップ!~
「漢字があるから日本語は難しい言語になってしまう」「もっと漢字を少なくしたほうがいい」という、世の中にある漢字ネガティブ論に触れたところ、次のようなご意見をいただきました。
時代はどんどん新しくなりますが、教育は古い時代、昔にさかのぼって、その知識を使ったらいいと思います。甲骨文字を使って、漢字の成り立ちを知って、面白く教えるという方法もありますね。つまり、昔の知識を使って、現代の教育のパワーアップですね。
私は、『漢字たまご』という教科書をつくるときに、仲間といっしょに3本の柱を立てました。
1.何ができるか明確になっている
2. 漢字の接触場面から学ぶ
特に、3本目の「漢字学習ストラテジーを身につける」という点では、ブレット式漢字学習法に大賛成。そして、接触場面に加え、「自分の好きなことから漢字を広げていく」という自律学習につなげていくことの意義を改めて感じました。
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ブレットさん
これからも漢字教育士として、大勢の小学生・中学、そして留学生達に「漢字の魅力」を伝えていってください。キラキラ目を輝かせながら、優しい語り口で漢字について熱く語るブレットさんの姿は、とても印象的でした。また、近いうちに「ブレット節」をお聞きかせくださいね。
参考:漢字教育士とは
http://www.ritsumei.ac.jp/rs/category/tokushu/130628/kanjikyoikushi.html/
「漢字教育士」は‘漢字を学ぶ楽しさを伝えたい’‘漢字を教え、地域と人とのコミュニケーションを深めたい’ という方に向けた新しい資格として、立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所が2011年より制度運用を開始しました。
漢字の構造などを体系的に学び、漢字の知識を深め、更には身に付けた漢字に関する様々な知識やスキルを、学校における国語教育や地域社会における学習ボランティアの指導現場などに活かすことのできる資格です。
現在、全国で約100名の方が漢字教育士の資格を取得し、各方面で活動を始めています。
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