留学生の石巻一人旅~「石巻日日新聞」を見たい!~

今年4月にワーキングホリデーで台湾から来た陳怡秀(チン イーシュー)さんは、夏休みに「仙台→田代島→石巻→福島」という旅程で東北に出かけました。それは、「「石巻日日新聞」をどうしても自分の目で見たい、石巻という町のことを知りたい」という思いで出かけた一人旅でした。

 

陳怡秀さんと2014.8.27

陳怡秀さんと2014.8.27

『できる日本語 中級』

『できる日本語 中級』15課【知って楽しむ:手書きの壁新聞」

 

台湾で新聞記者をしていた陳さんは、『できる日本語 中級(15課)』「知って楽しむ:手書きの壁新聞」で取り上げられた「石巻日日新聞」のことが、とても印象に残っていました。もちろんこの手書き新聞のことは以前から知っていましたが、授業の中で取り上げられたのは大きな驚きでした。

 

石巻駅に着いた陳さんは、駅に置いてあるチラシを見て「絆の駅」に一目散で出かけていきました。そこで、「石巻日日新聞」と対面し、「新聞とは何か、新聞の使命とは?」といろいろ考えさせられたと言います。

 

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私は日本語も日本文化も大好きなので、日本語の勉強を始めました。だから、震災の時、本当に心配しました。この石巻日日新聞のことも知っていました。私は新聞記者だから、新聞とは何か、新聞の意味は何か、この新聞でもっと考えました。

 

新聞はもちろん正しいことが大切だけど、少しのミスは許される。でも、この「石巻日日新聞」の情報は、人の命に関わる。字はあまりきれいじゃないけど、美しさは関係ない。小さいことでも大切なことをしっかり伝えることが新聞の役割、新聞の原点ですよね。

 

私は、これからの自分の人生を考えるっていうか、もちろん仕事のことも人生の一部ですから、いろいろ考えました。この新聞に出会えて感動しました。

石巻駅にあったパンフレット

石巻駅にあったパンフレット

 

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陳さんは、昔から「石巻日日新聞」を知ってはいたけれど、『できる日本語 中級』で出会わなかったら、石巻に行くこともなかっただろうと言っていました。いろいろな日本語教育現場をお訪ねすると、「試験対策で手が一杯です。文法や語彙もなかなか覚えようとしなくて大変!」といった先生方の声をよく耳にします。しかし、日本語の学びを通して、人とのつながりを考え、自分自身の仕事や人生を考えられる、そんな日本語授業がどんどん広がっていくことを望まずにはいられません。

 

最後に、陳さんは、日記を見せてくれました。先生の温かいコメントにも心を打たれました。一つご紹介したいと思います。

 

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陳 怡秀さんの日記(2014.7.29)

台湾の人が描いた壁画

台湾の人が描いた壁画

 

私は本が好きです。

私にとって、どんな本も面白くて、まるで様々な小さい世界です。昔の生活や時間や力などには限界がありますが、本を通じて、いろいろな知識や経験や幸せも得ることができます。今はまだ日本語が下手ですけど、ときどき私は図書館と本屋さんをまわって、嬉しい気持ちも生まれています。

 

昨日、YouTubeで、「ドキュメント72時間」というNHKの番組を見ました。私が見たのは「巨大書店・活字の森の歩き方」のテーマです。記者さんは新宿駅の近くの紀伊国屋書店に72時間でドキュメントして、この24分くらいの番組の中に、たくさんお客さんがインタビューに答えていました。

 

「本屋さん好きなんですよ。こういう本屋さんに入った時の匂いとか、開店したての本屋さんの人の少なさとか、そういうのが好きですね。開き立ての本屋さんに入るっていうのは、私の中では例えば映画館に座って辺りが暗くなって、さあ、映画が始まるって時のワクワク感に似ていますかね。」と50代の男性のお客さんは言いました。私はすごく同感しました。そんな自由な感じを私も楽しんでいます。

 

他のインタビューでは、お客さんは別々な気持ちをもって、本屋に来ました。大学生や、小学生や失業者や会社の上司など皆も本屋に来て、自分だけの本、自分だけ憧れている世界を探します。番組のアナウンサーが言いました。

 

台湾の人が描いた壁画

台湾の人が描いた壁画

「本を手にすれば、何かが変わるかもしれない。そんな思いが、人々の足を書店に向けさせる。」

世の中では、人に関して、複雑なことが生活の中でどんどん出てきます。一冊の本だけで、すぐにどんな問題も解決できるという発想は甘すぎると思いますか。私にとって、本は“鍵”みたいな存在です。全面的に解決することは保障できませんが、本を読む時、かならず何かを得ることができます。私はそう信じます。

 

 

参考:

昨年5月に著者が石巻を訪れ、「石巻日日新聞」の記者の方にお会いしてきました。併せてお読みください。

『できる日本語 中級』の著者、石巻にお礼に! http://www.acras.jp/?p=1394

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