みんなで作った「日本語学校合同スピーチ大会」

2月7日(金)に、東京代々木のオリンピックセンターで「日本語学校合同スピーチコンテスト」が開かれました。今回で10回目となるこのコンテストは、「日本語学校も横のつながりを持つことが大切だ」という考えに賛同した日本語学校が参加して始められました。開会式で辻和子実行委員長は、この大会が始まったきっかけについて、次のように話されました。

「このスピーチ大会が始まったのは10年前のことです。みなさんの先輩に当たる一人の学生が、日本語学校を卒業して大学へ行き、大学を卒業して、日本の企業に就職しました。その学生が就職して初めて企画したのが、自分が日本語学校で体験したスピーチ大会に会社として協賛することでした。ちょうどそのとき、ある日本語学校からスピーチ大会を自分の学校だけではなく、他の日本語学校と合同してやるという提案がありました。この2つのアイデアが一つになって、この日本語学校合同スピーチ大会が生まれました」

第10回日本語学校合同スピーチ大会               参加校等

このスピーチ大会の魅力は、なんといっても日本語学校の学生たちが、学校を超え、レベ

司会をする留学生①

司会をする留学生①

ルを超え、みんなで協力し合って作り上げていることです。司会進行、音響、賞品授与のサポート、抽選会・・・すべて学生が運営しています。司会者は2名で担当、中には着物姿で登場する人もいます。その和服姿の似合っていること!みな自分達でスピーチ大会を作り上げていることに喜びを感じていることが表情から読み取ることができます。しかも、一つの学校ではなく、5つの学校が合同で行っているスピーチ大会なのです。そして、いろいろな団体、専門学校などが応援していることからも、この合同スピーチ大会への関心の高さが窺えます。なお、5つの参加日本語学校名は、以下のとおりです。

・アークアカデミー渋谷校
・アークアカデミー新宿校
・エヴァグリーンランゲージ
・東京三立学院
・ヒューマンアカデミー日本語学校東京校

スピーチのタイトルは「日本語の魅力再発見」、自分自身の日本での生活、日本語学習体

司会をする留学生②

司会をする留学生②

験に基づき、独自の視点で作り込んだスピーチが会場いっぱいに響き渡りました。印象的だったのは、みんな実に楽しそうにスピーチをしていること、そして会場に向けてメッセージをしっかり伝えていたことです。9人のスピーチをちょっと覗いてみましょう。

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  1. イ・セイさん(韓国・女性)「日本の小さい美しさ」

近所のおばあさんに「行ってらっしゃい」と言われた時の嬉しさから始まり、日本人の小さな心配りに話を持っていったイ・セイさん。彼女は日本の挨拶文化に「おもいやり」を感じ、「すみません」「ありがとう」という言葉の持つ意味の深さを伝えてくれました。

2. シン・カインさん(中国・女性)「“つまさん”は奥さん?」

「妻です」と紹介され、「つまさんですか。はじめまして」と挨拶をしてしまった失敗談、「トイレに行っていただけませんか」と言ってしまったことなど失敗談の紹介から始まりました。そして、「間違いは私の宝物。これからも楽しみです。皆さんいっしょに間違いましょう!」と元気いっぱいに会場にメッセージを送っていました。

3.  スアレ ブンアビ バサさん(フィリピン・女性)「にほんのせいかつ」

フィリピンの台風でたくさんの人が亡くなったことにも言及しながら、日本の生活スタイルの特徴について語ってくれました。外国で生活するのは大変ですが、「なぜ人は生きるのか」という問いを考え、周りと共有しながら頑張りたい、頑張ろう!という思いが伝わってくるスピーチでした。

4.  リ ショウリさん(中国・女性)「日本語のずるさ」

司会をする留学生③

司会をする留学生③

「今回の採用は残念ながら・・・」等消える文末の多さにうんざりしたショウリさん。「会話は言葉のキャッチボールなのに、こんなボールをもらったら、どんなボールを返せばいいのか」と最初は悩でいたのですが、やがて、消えた文末に優しさを感じ、日本語は包容力のある言葉だと気づくようになりました。

5.  ホアーン コン チョンさん(ベトナム・女性)「笑いながら怒っています」

本音と建て前を取り上げ、何事もストレートに言うベトナム人にとって、日本人との会話には難しさがあると、経験を踏まえて伝えてくれました。

6. イリス コントレラスさん(スペイン・女性)「まさか失礼なことをしましたか?」

スペイン人にとっては体のコミュニケーションはとても大切ですが、日本人には距離が必要であることに最初は大いに戸惑ったイリスさん。しかし、次第にそれは相手を尊重し、思いやる心から生まれていると気づきます。これは日本に居て日本で勉強しているからこそできること。みんなも今日本にいることを大切にして「振る舞いの勉強」をしましょう!と訴えかけていました。

7.  チャン ヴァン フォンさん(ベトナム・男性)「蕾(つぼみ)」

蕾という字は、上は花、下は雷。どんな花もたくさんの雨、雷を乗り越えてこそきれいな花が咲きます。そして、心の中には蕾があり、それがいつかきれいな花になることを信じて頑張りたいというフォンさんのメッセージは、会場にしっかりと伝わりました。

抽選会担当の学生さん達

抽選会担当の留学生

 

8.  マクファーソン リー フレデリック(カナダ・男性)「日本語マジむずかしい」

「女の子が好きです。女の子が好きです!」から始まったスピーチ。これはいかに漢字を覚えるのが難しかったか、それを楽しい工夫をしながら覚えたかというエピソードでした。一本、一冊、一枚という助数詞の難しさなど、いろいろ言葉を覚えるのは大変ですが、「いっぱい間違って、笑って上達しよう!」という見事なメッセージで締めくくられました。

9.  イ サンジョンさん(韓国・女性)「夜型人間でもいいですよ」

世の中で、朝型人間の良さが強調されているものの、自分自身の生活リズムを変える必要が本当にあるのだろうかと問いかけたサンジョンさん。両方の良さを知った上で、しっかり考えて行動しようという思いが伝わってくるスピーチでした。

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では、ここで優勝、準優勝、三位に輝いた学生さんのスピーチ原稿をご紹介します。皆さまにもぜひ留学生の「声」を知っていただきたいと思います(学生さんの許可を取った上で、各学校の先生方にお送りいただきました)。

優勝   「日本語マジむずかしい」(マクファーソン リー フレデリック)
スピーチ原稿→ 優勝スピーチ原稿[日本語マジむずかしい」

準優勝  「日本語のずるさ」(リ ショウリ)
スピーチ原稿→ 準優勝スピーチ原稿[日本語のずるさ」

三位   「まさか失礼なことをしましたか?」(イリス コントレラス)
スピーチ原稿→ 三位スピーチ原稿「まさか失礼なことをしましたか」

出場者と実行委員の学生さんとの記念撮影

 

 

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