JTMとくしま日本語ネットワークのご紹介:外国にルーツを持つ子供たちとともに歩んで

ワークショップでは活発な意見が・・・

JTMのワークショップでは活発な意見が・・・

今年9月に、JTMとくしま日本語ネットワーク(以下、JTMと記します)の研修に出かけました。そのきっかけは、6月に大阪で開かれた「『できる日本語』説明会」でのスタッフのお一人辻暁子さんとの出会いでした。

説明会が終わると辻さんは、「今日のお話でいっぱい気付きがありました。この今の私の思い・学びを徳島の仲間にも伝えたいんです。先生、徳島まで来てくださることって可能でしょうか」と尋ねられました。こうして二人の間で「実施に向けてのやり取り」が始まりました。

研修会には、前日入りしてJTMの「第3回運営委員会」に参加し、いろいろなお話を聞くことが出来ました。広く「徳島における日本語支援の現状」から、「JTMにおける文化庁委託事業に関する現状と課題」など、実に丁寧なご説明がありました。研修前にこうした情報が得られ、皆さんと忌憚なく意見交換ができるとは、何と幸せなことでしょう!終わってからはお食事をしながら、ワイワイガヤガヤ話に花が咲きました。明るく、ざっくばらんで、前向きな「チームJTM」との対話は、楽しいひと時でした。

研修を終えて

研修を終えて

JTMの数ある活動の中で、私が最も感心したのは、いかに早くから真剣に「子供のことばの支援」に関わってきたかということでした。壁いっぱいに張ってあるパネルからも、その活動の広さ・深さを読み取ることができました。「ぜひこの活動を発信したい」と思っていたものの、私自身で記事を書く時間が取れませんでした。

ところが、先日JTMのニューズレター「あわゆずぷれす28号」を送って頂き、読んでいるうちに一つのアイディアが浮かんできました。「そうだ!JTMのメンバーの方に書いていただこう!」 ということで、子どもの支援に関わっている谷口真弓さん、玉置房さんに「外国にルーツを持つ子供たちとともに歩んで」というタイトルでレポートを書いて頂くことにしました。

JTMの活動の素晴らしさは、県教委学校政策課、徳島県国際交流協会、大学等を巻き込み、みごとな連携プレーをしていることにあります。どうぞ皆さま、じっくりとレポートをお読みください。

JTMの活動パネル

JTMの活動パネル

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「外国にルーツを持つ子供たちとともに歩んで」  JTMとくしま日本語ネットワーク

私たちが外国にルーツを持つ子供たちへの支援の場としている「JTMにほんご教室(子ども教室)」(2009年開始、2011年より文化庁委託事業)の1年を紹介します。

子ども教室個別学習

子ども教室個別学習

毎週日曜日午後1時30分になると、徳島駅ビル6FにあるTOPIA(徳島県国際交流協会)の会議室で「JTMにほんご教室(子ども教室)」が始まります。私たちスタッフは1時10分に集合してその日の学習の打ち合わせを始めます。

子供たちはというと・・・。
●1時10分にはもうすでに来ていて待ち遠しそうに会議室をのぞいている中学生の女の子
●始まる5分くらい前に悠々と楽しそうにおしゃべりしながら入ってくる3兄弟
●ギリギリに息を切らして「間に合ったー!」という顔をして飛び込んでくる小学生の兄妹
●「これ、修学旅行のおみやげです!」、「USJにいってきたよ!これ食べて!」とおいしそうなお菓子の箱や缶を渡してくれる中学生や高校生
●親教室に参加するお母さんの後ろに隠れて恥ずかしそうに入ってくる小学校入学前の男の子
などなど。毎週ほっとしたり、笑ったり、あわてたり、心配したりしながら子どもたちを迎え入れます。

防災センター体験

防災センター体験

「JTMにほんご教室(子ども教室)」は1時間の「個別学習」と、30分の「全体学習」で構成されています。「個別学習」ではスタッフと子供が1対1または1対2で学習します。「ひらがな」を覚える子もいれば、絵カードで単語を覚える子、伝記などの本を読む子、長文読解をする子など、それぞれ子供たちの日本語のレベルやニ-ズに合わせた学習をしています。

「全体学習」は子供全員が参加して行う楽しい活動です。就学前の児童から中学生・高校生までという、年齢も日本語のレベルもまちまちの子供たち全員が参加するので、担当者は毎回趣向をこらした準備をします。しりとり・早口ことば・オノマトペといった言葉を使った遊びをしたり、方言について学んだりすることもありますし、季節の歌を歌ってジェスチャーをしたり、絵を書いたり、紙芝居や絵本の読み聞かせをしたり、季節の行事をもとにゲームをしたり、ありとあらゆる活動をします。

美術館

美術館

今年は毎月のテーマを決めてプランを立てました。たとえば6月は「病気・病院」、7月は「七夕・美術館」、9月は「防災」、11月は「芸術の秋」、12月は「年末年始・お楽しみ会」などです。「課外学習」でいろいろな施設を訪れ、ユニークな体験をすることもあります。たとえば、防災センターでは、震度7の地震や暴風・煙に巻き込まれる、消火器で火を消す、などの疑似体験をしました。徳島市立図書館では、実際に貸出カードを作って本を借りたり、係りの人に質問したりしました。徳島県立近代美術館では、学芸員の方のご指導で、絵画に「おいしいで賞」などの賞をつけたり、絵を元に「あ・・・あつい!」などのカルタを作ったりしました。また、「ひょうたん島クルーズ」という市内中心部を流れる川をボートで周遊するツアーに参加し、クイズをして体験学習を振り返る活動もしました。

夏休み子ども日本語教室

夏休み子ども日本語教室

外国にルーツを持つ子供たちへの支援には、他にも「サマースクール(夏休み子ども日本語教室)」(2002年開始、2005年より徳島県委託事業)があります。毎年行われていますが、今年も夏休みに8日間行われました。このサマースクールには日曜日の教室の参加者だけではなく、夏休みだけ徳島に帰って来て参加する子供たちや、徳島在住だけれども、このサマースクールだけに参加する子供たちもいます。毎年20名を超える子供たちが参加するのでスタッフも大忙しです。1日目の自己紹介・他己紹介で子供たちもスタッフも皆仲良くなり、期間の前半に「将来の夢」というテーマで絵日記を書きます。また、毎回数人ずつ、前に出て「好きなこと・得意なこと」についてスピーチもします。

個別学習の後の全体学習では、今年は「自己紹介ゲーム・作文」「数の世界・世界の数」「日本の朝ごはん・うたおう!」「間違いさがし・カタカナならべ」「夏に関することば・読み聞かせ」「漢字で遊ぼう!」「単語作りゲーム」「おにぎりオ―ゲーム」というテーマで楽しく活動しました。最終日に修了証とアルバムをもらった子供たちは、嬉しそうにそれらを眺めてから、「またね!さようなら。」とそれぞれの場所に帰っていきます。                     (谷口真弓)

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子供に関する支援活動としてもう一つ、徳島県教育委員会の要請で始まった、学校現場での日本語支援についてご紹介します。2011年、外国にルーツを持つ子供たちに熱い思いを持つ県教委の先生(JTMでは今スーパーヒーローと呼んでいます)のご尽力で、少ない予算ですが、私たちJTMのような民間の日本語教師が公立の小・中学校に行って直接支援するという画期的なことがスタートしました。

翌年2012年は、県教委学校政策課とJTMがパートナーとなって県の予算を獲得し、「帰国・外国人児童生徒サポートシステム開発モデル事業」という協働事業として、徳島県国際交流協会、徳島大学、鳴門教育大学や他団体にも協力をお願いし、子供たちに次のような支援を行ないました。

日本語支援、通訳支援、日本語指導者養成セミナーの実施、外国人児童生徒を受け入れる学校の先生のためのWEBサイト「徳島県 外国にルーツを持つ子どもの受入れ手引き」http://e-social.jci-tn.jp/f-children/の開設等です。この1年間で、この事業に関わる他の団体と共に約35名の日本語支援、約10名の通訳支援を行いました。

今年は協働事業ではなくなりましたが、昨年度の成果が認められ、徳島県の単独事業として予算が付き、引き続き支援が行なわれています。JTMの多くのメンバーも昨年に引き続き多くの子供たちを支援しています。

私は、昨年の夏、中国から来たばかりの小学校1年生の男の子に40回(1回45分)、今年も引き続き40回の予定で、1週間に2回、車を1時間あまり走らせて、県西部の小学校で日本語の取り出し授業をしています。とても活発な男の子ですが、昨年は日本語が分からなくて友達や先生と多少のトラブルがありました。学校の先生も初めての経験で戸惑っていらっしゃったようです。そのたびに、先生には日本語が分からないゆえに起る行き違いであることを具体的に説明しました。例えば次のようなことです。

ある日、クラスに行くと先生が彼に感情的に怒っていました。算数の道具箱を教室の定位置に片付けるように言っているのです。しかし、彼は「聞きます、読みます、見ます…」が聞いてやっと分かるようになったところでした。先生は彼の前に立って「さっき言ったばっかりやろ。元のところに、はようつまえなさい。次のお勉強ができんやろ…。」と言っているのです。「つまえなさい」は阿波弁で「片付けなさい」と言うことです。彼に後で聞くと、先生が何で怒っていたのか分からなかったようです。先生には、後で、「もっと簡単な彼がわかる言葉で、動作で示して注意してください」とお願いしました。

また、ある日には友達の消しゴムを黙って使ったとトラブルになりました。そのときは「貸して。ありがとう。」の練習をしました。

またある時は、先生に「子供たちに、『話すときは最後まで言いましょう』と注意したばかりなのに、〇〇君は『トイレ!』としか言わないので行かせませんでしたが、あまり行きたそうに足をバタバタするので仕方なく行かせました。○○君にしっかり指導してください。」と言われたこともあります。そのころの彼は学校の設備のフラッシュカード(写真)を見て「トイレ」がやっと言えるようになったところでした。私は彼に「トイレ」と言えたことをほめました。先生には彼の現状を話し、もう少し長い目で見てほしいことを伝えました。小学校の先生は本当にお忙しいです。先生のお気持ちも分かりますが、私たち日本語教師は外国にルーツを持つ子供たちの状況を先生方に分かってもらうように心を砕くのも役割の一つだと思っています。

2年生になった今、彼は日本語がとても上手になり、1年生のようなトラブルはほとんどなくなりました。ただ、教科学習の言葉が1年生より難しくなったので、今は語彙を増やしていくことに時間を使っています。

先月、徳島県教育委員会とJTM、徳島県国際交流協会、徳島大学、鳴門教育大学が出席して連絡協議会があり、来年度は予算が増額される予定だと報告がありました。嬉しい限りです! 県教委のスーパーヒーローの先生とも、来年度はもう少し1人当たりの回数を増やした手厚い支援を行うことや、母語話者を派遣し心のサポートなどもしていきたいということを話し合っています。

このように行政や学校等との連携ができている徳島は、恵まれているのかもしれません。スーパーヒーローの先生のご尽力によるところは大きいのですが、このような連携が取れるようになったのも、2002年から手弁当で夏休み限定の支援を始め、2005年から徐々に行政の予算をいただくようになってからもずっと途切れることなく子供たちを応援してきた地道な活動が認められたからだと思っています。今では、子供たちの支援はJTMの活動の大きな柱になっています。これからも子供たちの素晴らしい笑顔に出会えるこの活動を楽しくわいわいと続けて行きたいと思います。                                            (玉置 房)

※  JTMとくしま日本語ネットワーク HP

(変更になりましたhttp://homepage2.nifty.com/jtmtoku/

     https://jtmtoku.com/

徳島県 外国にルーツを持つ子どもの受入れ手引き」をクリックすると、こんな画面が出てきます。ぜひご覧ください!

WEBサイト画面画像

 

 

 

 

 

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