能代第四小学校訪問~「取り出し授業」に参加して~

 

取り出し授業をする北川さん(能代の小学校で)

取り出し授業をする北川さん(能代の小学校で)

定住外国人の言語生活に関する調査で能代にやって来ました。今回は2日目の午前中「能代市立第四小学校」の「取り出し授業」を見学する機会に恵まれました。2年生の3人が楽しそうに勉強していました。教室に入ってびっくり! 私自身、何度かOPI(Oral Proficiency Interview)をしたことがある方々のお子さんでした。Aちゃんのお母さんには、これまでに5回インタビューを行い、Aちゃんのこともよく話題に上っていたのです。時の流れを感じ、「子どもの日本語教育・支援」は、いっときも待つことができない、大切な課題であると改めて痛感しました。

取り出し授業をする北川さん

取り出し授業をする北川さん

ここで「学校生活サポート(日本語支援)」として週3回働いている平山さんは、「のしろ日本語学習会」を主宰する北川さんと話し合いをしながら、何人もの児童のサポートをしています。私が伺っている数時間の間にも、校長先生と担任の先生、そして平山さんに北川さんが加わって、ある一人の児童について相談をしていました。お母さんが日本語が不自由なために、子どもと日本語でのコミュニケーションがうまくいかない児童の相談……。細かいニュアンスが伝わらず、親子に溝が出来ているようです。子どもを愛するがゆえに、口うるさく言う母親、その思いが伝わらず不満に思う娘……。そうした状況にも細やかに支援の手を差し伸べていることがよく分かりました。

校長先生(能代第四小学校にて)

校長先生と真剣に話し合い(能代第四小学校にて)

Aちゃん、B君のご両親は中国出身、またC君のお母さんは中国出身であり、家では中国語……という環境です。その中で、生活言語ではあまり苦労がなくても、学習言語となると困難な点が出てきています。本当は高い能力を持っている子ども達が、日本語の力が十分でないため、授業についていく時に困難を感じる……、これは考える時に求められる「言語」が育っていないために起こっているのです。そこで、そうしたことを早くにキャッチし、適切な支援をすることが求められてきます。

工藤校長にもお目にかかり、いろいろお話を伺うことができました。全校生徒571人という能代では最も生徒数が多い小学校だからこそ、きめ細かに一人ひとりを見ていかないと、実態が見えなくなってしまうという校長先生。随所に細やかな配慮と工夫を感じることができました(外国にルーツを持つ生徒は12名)。

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では、校長先生のお話をご紹介したいと思います。

■学校全体で、全教師が理解することが大切!

能代私市立第四小学校のパンフ等

能代私市立第四小学校のパンフ等


あの3人は同じクラスで勉強している仲間なんです。同じクラスにしたほうが、支援もしやすいし、目が行き届きますからね。本人達も心強いでしょうし・・・。でも、こうした日本語支援は、学校全体のこととして取り組んでいます。学校全体で理解することがとても大切だと思います。今年の「重点的な取組み」としても挙げています。

参考:平成25年度の重点的な取組み(教育実践重点事項)
①  学力保障
②  児童理解(本人と周囲)に基づいた適切な指導・支援
③  保護者・地域との連携の充実(PTA室開放、地域人材の活用)
④  初任研・10年研・26年度生活科公開を研修機会とする取組み

■地域社会を巻き込んだ「開かれた学校」づくり!
地域の方々と連携を取って、助けていただかなければ、こうした支援はうまくいきません。私達には、帰化して日本名だったりすると、なかなか「日本語支援が必要かどうか」が見えないことがあります。高学年になって、問題が大きくなってから顕在化することがよくあります。そうならないようにするには、学校だけで見ていては難しいんです。こうした「のしろ日本語学習会」の方々との連携はとても大切です。私達学校では分からないことを教えていただけます。地域の人の力を借りることは、とてもありがたいことであり、大切なことだと思います。外を巻き込みことですね!

その子どもを理解するだけではなく、置かれている環境を理解すること!
子どもを理解すること、そのひと言に尽きると思います。それが出来ていれば、どういう支援が必要かが分かりますから。でも、本人だけ見ているのではなく、本人が一体どういう環境に置かれているのか、その視点が大切ですね。家と外の乖離をどうしっかり見つめていくか。よくあるのが、親ごさんが日本語が十分でないことから、子どもに自分の言いたいことが伝えられない。別に「絶対ダメ」と禁止しているわけではないのに、子どもにはそう伝わってしまい、子どもは反発してしまう。つまり、言葉でニュアンスがうまく伝えられないんです。そんな時、その子に何が起こっているのか、しっかり見ていくことが求められています。

能代市立第四小学校で(工藤校長を囲んで)

能代市立第四小学校で(工藤校長を囲んで)

次に、北川さん(のしろ日本語学習会)のお話をご紹介したいと思います。

■地域の日本語教室はただ言葉を教える所ではなく、「自ら学ぶ力」をつける所!
私は地域の日本語教室は、ただ言葉を教える所じゃなくて、もっと生きていく力をつける所だと思います。今、火曜日夜の「のしろ日本語学習階」の教室では、子ども達が増えています。それは、ここで学んだあの子達の親が、子どもに行くように勧めているんですよ。確かに子どもの支援は広がっていますが、実は一世の時より二世、三世になると見えなくなってきている部分も多いんですよ。帰化して日本名になっている子どもは、日本語力が足りないことが見落とされがちです。生活言語ではあまり問題がないからなんですね。今、私達のように親のこともよ~~く知っているボランティアが、その子どもの言葉の支援もしていくことが大切になってきているのだと思います。そこで、求められるのは、子ども達にただ学科を教えたり、日本語を教えたりするんじゃなくて、「面白い!」と思わせること、「あの人(先輩)みたいになりたい!」っていうモデルを見せることだと思います。その時、学ぶ仲間がいることも大切ですよね。

■学校の中に入り込むこと、連携を取ること!
校長先生とも、その子どもの担任とも密に連絡を取っています。私達も必要な情報は学校と共有するようにしています。今日もDちゃんのことで先生から相談を受けました。お母さんが日本語で伝えようとしていることの真意が、Dちゃんには伝わっていないんですね。親子をつなぐ言葉は、日本語。でも、お母さんの日本語はまだまだ不十分。こんな中で、親子に溝が出来たり、子どもが寂しい思いをしたりしていることが、どれだけあるかしれません。私達は、学校と連携して、そうしたことにも目を向けたいと思っています。

この小学校では、「地域の人の力を借りて、一緒に支援したい。学校の中だけ、学校関係者だけでやっていても、本当の解決は難しい」という姿勢で臨んでくれています。だから、本当に支援がやりやすいんです。だいたい小学校で「問題」があることが分かっても、問題を先延ばしして、中学に上げてしまうことが多いんです。でも、一人ひとりの子どもの将来を考えたら、絶対にしてはいけないことだと思います。

■キャンプで知る「言葉のキャッチボール」の楽しさ
子ども達をキャンプに連れて行って、一緒にテントを立て、料理を作りますが、その中で子ども達が私達との「ちょっとした言葉のキャッチボール」にすごく嬉しそうな顔をしたり、生き生きとした表情をすることがあるんです。

子ども:先生、キャベツ切るよ。
北川: あ、指切らないように気をつけなさい。危ないから。
子ども:大丈夫、大丈夫。ぼく上手だから。

といったやり取り、これが家庭でお母さんとはできない子が多いんですよ。お母さんに話しかけても、お母さんの答えは、「うん、いいよ」とか「だめ」など簡単なやり取りで終わってしまいます。また、「先生、見て。どうしたらいい」とか「どうしてこうなっちゃんたのかなあ」という子に、「考えてご覧。ここが~~~」などと説明したりすると、本当に嬉しそうな顔をします。その時思いました。「ああ、この子たちは、こんな「普通のやり取り」をもっとしたいんだ。もっとさせてあげなければ!」と。もちろん頭では分かっていたことなんですが、それを一緒にキャンプ生活をして実感しました。

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小学校の帰り道に「幸福の黄色いポスト」に出会いました。

小学校を訪問した帰り道、「幸福の黄色いポスト」に出会いました。これは上町(かんまち)にある介護施設「やさしい風」と郵便局との企画で生まれたそうです。赤いポストから、「黄色いポスト」に塗り替えられたのは、2008年5月。楽しい試みですね!

小学校を訪問した帰り道、「幸福の黄色いポスト」に出会いました。これは上町(かんまち)にある介護施設「やさしい風」と郵便局との企画で生まれたそうです。赤いポストから、「黄色いポスト」に塗り替えられたのは、2008年5月。楽しい試みですね!

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