「のしろ日本語学習会」北川裕子さん、「文化庁長官表彰」

表彰状を手に北川裕子さん

表彰状を手に北川裕子さん

秋田県能代市で「のしろ日本語学習会」を長年やってきた北川裕子さんが、6月28日文化庁長官賞(文化発信部門)を受賞されました。北川さんがこれまでやっていらしたことについては、「文化庁月報」に詳しく載っていますので、そちらをご覧ください。

文化庁月報 連載 「地域日本語教育の現場から-全国リレー紹介-」
「のしろ日本語学習会(秋田県能代市)―地域ではぐくむ生活者としての自立支援―」
http://www.bunka.go.jp/publish/bunkachou_geppou/2013_05/series_10/series_10.html

地域の日本語教室を主宰する方に対して、文化庁長官賞が贈られたのは初めてのこと。こうして地域社会の中で、「ともに生きる仲間」として定住外国人の日本語支援に携わってきた北川さんが受賞されたことで、地域日本語教室の意義がより広く、より深く理解されるようになることを願ってやみません。

授賞式が終わってから、私は、北川ご夫妻とご一緒に虎ノ門で食事をしました。その時の「おしゃべり」を少しお伝えしたいと思います。

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■これまでの活動の中で、「苦労したけど、やっ

北川ご夫妻

北川ご夫妻

てきてよかった!」ということは?

たくさんありますけど、「読み書き指導」のことですね。私が始めた20年も前のこと、地域では話が出来ればいいと言われていました。でも、結婚で能代に来た外国人と接していると、学校のお便りも読まなければいけない、回覧板も回ってくる、これじゃ、取り残されてしまう。だから絶対に読み書きも必要だと思ったんです。それで、いろいろな人に相談すると、「彼女たちに読み書きなんて要らない」「たとえ要るとしても、あなたにそんな読み書き指導ができるわけがない」という反応でした。そこで、東京に出かけたりして、勉強を続けました。今でこそ、定住外国人配偶者にとって、学校からのお知らせが読めなくては困る、などと盛んに読み書き指導の必要性が言われていますが、昔は違いました。

「読み書き」ができることで、外国人の社会参加につながりました。仕事を見つけたり、もっと自分に合った仕事につけたりしました。もう一つ、地域社会とのつながりが広がっていきました。例えば回覧板でご近所のお年寄りともつながっていきました。読めるからこそ、会話が生まれるし、「これ、見てごらん」と他のお知らせを見せてもらったり・・・。そうした素材は、また次の日本語教室に持ち込まれ、次の学びの材料になっていきました。

■これから特に力を入れたいことは?

地域の日本語教室には、いろんな課題がありますけど、何と言っても、「子どもの日本語の問題」です。私のところにもいろいろ相談がきますが、その何倍、何十倍もの子どもたちが、声をあげることができず、人知れず悩んでいるんですよね。私は、身近でできることをやっていきますが、もっともっと大きな力で、動かしていかなければならないと思います。

その子に何も罪はないのに、ただ日本語ができない、日本の子どもと違っているということだけで、いじめにあったり、仲間はずれになったり……。時には学校の先生にも理解されない状況も生まれています。こんなこと、あってはならないことですよね。子どもにとって、「今、この瞬間」はもう2度と取り戻せない、大切な、大切な時であることを思うと、一刻も猶予は許されない。どんな子ども達も、この能代の町の「宝物」。その子ども達が日本語が十分にできないからといって、差別を受けたり、自己実現が出来ないとしたら、大問題です。能代の町、いや私達にとっても大きな損失ですよね。これからますます力を注いでいきたいと思っています。子どもの問題は、待ったなし!ですから。

■今度の受賞をどのように受け止められましたか?

私なんかが頂いていいのかな、と最初思いました。当たり前のことを、ただ普通にやってきただけですから……。でも、能代のように外国人も多くない、小さな町の日本語教室をやっている人間が表彰されることで、今、外国人のことに必死に関わっている人達に、もっともっと目が向けられて、国や自治体も本気で外国人支援・外国人の日本語支援について考えるきっかけになってくれたら……と思いました。またこれからも地域日本語教室をやっている人の受賞が続いていってほしいですね。

表彰式の日に記念撮影

表彰式の日に記念撮影

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最後にご主人に「北川さんの活動を傍で支えていらして、これはすごい!と思われる点を挙げてくださいませんか」とお尋ねしました。その答えに、またまた感動!

「なんていうか、この人(北川裕子さん)にはすごい『覚悟』があるんですよ。どんなことがあってもやり抜くっていう『覚悟』ですね。全身で受け止めるっていうか、使命感っていうのか・・・・・・。だから私もこうやって振り回されながら、一緒にやってきました。」

北川さんとお付き合いを始めて7年になります。自分の周りの人達や地域社会を巻き込んでいく力、一つ一つの問題を「自分の問題」として捉えて取り組む姿勢、どんなマイナス要因があってもやると決めたら、とことんやり抜く姿……これまでたくさんのことを教えて頂きました。北川さん、これからも頑張ってくださいね!今度は、秋風が吹き始める9月半ばに、能代でお会いしましょう!

参考:◆「のしろ日本語教室」に関する記事

① 2008年9月  地域社会を変えた日本語学習会の盆踊り大会 秋田県能代市でhttp://nihongohiroba.com/?p=229

② 2009年3月   外国人配偶者が日本語能力試験に挑戦する意味http://nihongohiroba.com/?p=165

③ 2009年11月  ビデオ作品『ココロをつなぐ教室』日本語教室追った能代高校放送部の奮闘http://nihongohiroba.com/?p=520

④ 2010年3月  韓国から来た「さっちゃん」奮闘記
http://nihongohiroba.com/?p=436

⑤ 2010年9月   定住外国人配偶者にとって住みやすい社会にするためにhttp://nihongohiroba.com/?p=686

⑥ 2011年9月   「馬鹿って言うのは最低だよ」という言葉の波紋http://nihongohiroba.com/?p=2035

⑦ 2012年5月   中国出身の保坂さん、介護福祉士に合格(能代市)http://nihongohiroba.com/?p=2520

 

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