イーストウエスト日本語学校スピコン後日談(3)
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2021年9月7日(火)に、中野ゼロホールにて、イーストウエスト日本語学校スピーチコンテストが行われました。未入国の留学生も多く、ホールでの実施とオンライン参加というハイブリッドでの実施でした。スピコン入賞者のスピーチ原稿などは、以下のURLからご覧いただけます。
イーストウエスト日本語学校、今年もゼロホールでスピコン開催~入国できない留学生の「思い」を知ってください~
スピーチを聞き、さらに、一人一人と対話しながら、留学生の「日本語学習への思い」「これからの夢」などについて詳しく聞いていきました。それは、コロナで大変な日々、日本で日本語を学びながら「夢の実現」に向けて頑張っている姿を発信したいと思ったからなのです。今回は、午前クラスの3人に関する発信ですが、今後またこうした「留学生の声」を、いろいろな形で発信していきたいと思っています。コロナに負けずに頑張っている姿、知ってください。
しかし、この後ろに、いまだに入国することができず、不安をいっぱい抱えたままオンラインで授業を受けている留学生が大勢いることを忘れないでいただきたいと思います(長い人は1年半になります)。
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(3)≪日本大好きロシア人≫、ついに日本での就職決まる!
~12歳から「日本に住みたい!」と思い続け……~(ダリアさん)
■小さい頃から、「日本に住みたい」という夢を持ち続け・・・
サンクトペテルブルグ出身のダリアさんが「日本に住みたい!」と思ったのは、12歳の時でした。そのきっかけは、アニメのオープニング曲に興味を持ったことだったそうです。日本のサブカルチャーに嵌っているグループもいろいろあり、まさに「日本のおかげ」で、どんどん友達ができていきました。
また、ドラマが好きで「恋空」や「東京ラブスト―リー」もよく見たそうです。やがて、ダリアさんは、そこで使われている「日本語」そのものが好きになっていきました。今では自分自身を「日本大好きロシア人」というダリアさんは、「日本語は、一番きれいに聞こえる言葉。日本語で話をしている時が一番幸せ」と話してくれました。
大学卒業後は、サービス提供と国際イベントに関わる会社に勤めることになりました。最初は、サービス部門でしたが、半年ほどで念願の国際イベント、それも日本担当プロジェクトに入ることができました。ダリアさんは、そこで日本人スタッフとともに働く機会を得て、「日本人の働き方」を学び、大きく成長していきました。
フレキシブルな働き方っていうか、厳しい考え方ではなく、やさしい、柔らかい感じ
ですね、問題解決についても。それが好きです。だから、今までのマーケティング
の経験を生かして、日本の会社で働きたいと思って、日本に留学しました。
日本に来たのは、昨年12月のことでした。最初は「ロシアでの仕事の経験を日本でアピールしたら、まあ、3カ月ぐらいで正社員として就職できるだろ」と気軽な気持ちで、就職サイトに登録して返事を待っていたのですが、一向に返事は来ませんでした。ダリアさんは、次第に就職のことは忘れ、日本語の勉強、日本での交流活動などに夢中になっていきました。スピーチでは、次のように語っています。
仕事のことを考えなくなったら、日本の生活がめちゃくちゃ楽しくなって、
遊ぶことがとても忙しくなりました。あ、もちろん日本語は頑張りました。
漢字の天才、中国人のクラスメートに負けないように、一生懸命勉強しました。
■中野区長との懇談会に登壇~住民として感じたことを明確に伝える!~
ダリアさんは、今年7月7日行われた「中野区長と外国人留学生との懇談会(オンライン)」にも登壇しました。テーマは「ワクチン接種から考える外国人ン住民への情報提供の在り方」です。ダリアさんは、次々に自分の体験や意見を伝えていきました。
*書類を見て、理解できました。でも、専門用語はとても難しいと思いました。
*たくさんの書類が届いたので、どれが必要か必要じゃないのか、分からなくて
困りました。手紙には、大切なものを1枚、2枚を入れて、あとは、ネットに
載せるとかしたらいいと思います。URL、QRコードを載せておけば十分ですね。
*文ももっとシンプルにしたらいいと思います。段落を分けて、分かりやすく
書くとか工夫してほしいです。
実施報告 「中野区長と外国人留学生との懇談会
~ワクチン接種から考える外国人住民への情報提供のあり方~」
(2021.7.7) http://www.acras.jp/?p=11603
今年の夏はダリアさんにとって、人生を大きく変えることになった時でもあります。実は、もう一度、就職にチャレンジしてみよう!と考え直し、再スタートを切ることにしたのです。まずは、以前登録しておいた就職サイトを見てみると、なんと複数の会社から面接依頼の知らせが届いていました。ダリアさんは、すぐにその中から、あるマーケティング会社にコンタクトを取り、面接に出かけました。そして、その翌日には「採用」通知が届きました。
■「日本の良さを多くの人に知ってもらいたい」と、「だーしゃてれび」を始める!
採用された会社のスタートは10月、それまでは、アルバイトとして仕事をすることになりました。残された日本語学校での日本語の学び、交流活動、イベント・・・ダリアさんは、思いっきり楽しく、有意義に過ごそうと考えました。その一つが今回のスピー
チコンテスト参加でしたが、なんと結果は、午前の部で一位となったのです。
皆さんは、何かが上手くいかないとき、それまでの自分の努力や経験を切り捨て
たくなることがありませんか。私はそうでした。
でも、どんなに悪い結果でも、努力と経験は無駄にならないことを学びました。
これからも、大変なことがあると思いますが、どんなことでもプラスになると
信じて努力しようと思います。
皆さんも、ぜひ、自分の努力を信じてください。きっといいことが待っている
と思います。
さらに、ダリアさんは、新しいことにチャレンジしました。それは「だーしゃてれび」のスタートでした。
https://www.youtube.com/channel/UCxUVTLQx55Xwxrd3GdEzG7A
「だーしゃてれび」を早速見てみると、スタートは9月4日で、10日後の14日までに、既に5本の動画がアップされていました。
・日本に来てびっくりしたこと5選
・ロシア人の私がこれだけは伝えたい日本に来て感動したこと
・外国人の私が日本人になったと思う瞬間を聞いてください
・日本大好きロシア人が人生ではじめて沖縄に行った反応
・ロシア人の私は本当に日本に来て良かったの?
なんというエネルギーでしょう! これからも、「だーしゃてれび」は続いていきます。皆さんも、時間があったら覗いてみてください。

今日、卒業式後にダリアさんにインタビューをしていると……。クラスメイトが「一足早く卒業するダリアさん」に、プレゼントを持ってやってきました(9月に卒業する留学生は少なく、ほとんどが3月卒業となります)。
■ダリアさん、将来の夢を語る!
最後にダリアさんに「将来の夢」について語ってもらいました。
人生で一番重要なのは、自由と幸せです。心配せずに安心して生きていきたい。
私はずっと日本に住んでいたいと思っています。死ぬまで、ですね。私は、日本が
好きになって、今は、好きというより「愛してる」って感じです。
日本の微妙なもの、ていねいさ、道を歩いてもきれいだとか、音とか匂いも好きです。
日本に来たのは去年12月です。それからずっと幸せを感じてます。
将来は、もちろん日本に住んでいたいですが、アチコチ旅行したいです。
会社に勤めて、あとはオンラインマーケティングをしながら、日本のすべての県を
訪ねたい。
こんなに日本を愛してくれているダリアさんに、「でも、これから日本社会で嫌なこともあるかもしれませんね」と尋ねると、こんな答えが返ってきました。
もちろん正直言って、嫌なこと、悪いことも、これまでにありました。
でも、日本が好き。それは、比較すれば、悪い方がずっと、ずっと少な
いからなんです。何でも、天使と鬼がいるでしょ。天使の部分がずっと
多いってことですね。
最後に、コロナ禍で未入国の留学生へのメッセージを頼みました。
私は、12歳で日本語に出会い、14歳の時には、日本語を1日5時間も勉強
したことがありました。そして、高校卒業とともに日本に留学する予定でした。
でも、それは家庭の事情でダメになりました。それで、18歳から24歳までの
6年間は、ロシアの大学で勉強し、会社で働いて、6年間待って、やっと去年
12月に日本に来ることができたんです。6年間待ちましたが、実現しました。
私は、「絶対に日本に行く!」と信じていました。
そして、やっと10月に入学できると思ったら、今度はコロナ禍で3カ月延びて、
今年1月の入学になりました。今、コロナで日本に来られない人達、大変だと
思いますけど、「一人じゃない。みんな同じだ!」と思って、がんばってほ
しいです。やっと日本に来られて、私は、今、とっても幸せです。
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ダリアさんはキラキラした目で、日本の魅力、「日本にいることの幸せ」について語ってくれました。こういう「留学生の熱い思い」を、これからもさらに多くの人々に届けたい!と改めて思いました。
ダリアさん、どうぞこれからも、伸び伸びと、思う存分日本社会で羽ばたいてくださいね。陰ながら応援しています!