留学生との川柳を通した交流~俳句から川柳へ~

 

コロナ禍で、自宅で仕事をすることが多い毎日ですが、そんな中、上級クラスの学生さん達と、川柳を軸にして楽しい「対話」を重ねることができました。ちょっとご紹介したいと思います。

2月のある日、上級クラスを担当する先生から、こんなメールが川柳とともに届きました。

                         

今日クラスで川柳をしました。このクラスは時事ネタに関心があるので、サラリーマン川柳を紹介し、色々な句を読んだ後で、自分でも作ってみることにしました。

まず感心したのは、目の付け所です。私なんかよりはるかに面白い、または鋭い視点でテーマをとらえていて、驚きました。添付するのでご覧ください。…中略・・・

ぜひご感想をお聞かせください。お忙しいところ、恐縮ですが、よろしくお願い致します。

 

 

①  8時でも 「いらっしゃいませ」 やばいでしょ (チョン テフン)

②  つかまれた 冬のこたつに 意味わかる (キン ウンヤ)

③  日々迷子 中央総武 中野行き     (キン ウンヤ)

④  Wi-Fiの 調子で決まる その日の授業  (リュウ ヒエン)

⑤  咳をして ぎゅうぎゅう電車 がらがらに  (リョウ イーウェン)

⑥  マスクあり 早起きしない 女たち  (リ ツウ)

⑦  外危険 カップラーメン 山積みに  (リ ツウ)

⑧  日本(にっぽん)は いつ開国か わからない  (イン ハクヘイ)

⑨  プレステが  手元にあるけど 遊べない    (イン ハクヘイ)

 

早速読んでみると、コロナ禍での生活感が溢れていてなかなか面白い川柳ばかり。「ぜひ感想を!」ということでしたので、一句一句にコメントを付けて担当の先生にお送りしました。

 

例:

④   リュウさんへ

オンライン授業の実態をうまく表していますね。下の句が字余りですが、これはあまり気になりませんね。一つ冗談を・・・。ICTって、何の訳だかご存知ですか。

ICT=Information and Communication Technology ですが、冗談に~~~。

I=いつも

C=ちょっと

T=トラブル

 

⑦   リさんへ

最初は、「外危ない カップラーメン 富士山なる」だったとクラスの先生から伺いました。

たしかに「外危ない」より、「外危険」のほうがいいですね。ただ「山積みに」より「富士山」を使ったほうが面白いと思います。「富士の山」としてみてはいかがでしょうか。

私は、俳句で「富士山」のことを詠むときには、「富士の山/芙蓉峰(富士山の異称)」など

をよく使います。

 

こんな感想を綴ったあと、以前詠んだ冬の句を送りました。イーストウエスト日本語学校では、毎年11月に俳句づくりをします。そこで、学生さんたちに3ヵ月前の「俳句づくり」のことを思い出してもらいたいと考えたのです。

※「俳句を通した日台の交流活動~イーストウエスト日本語学校の俳句コンテスト~」

http://www.acras.jp/?p=10709

 

留学生鴨の家族に故国(くに)想ふ   和萩

             ・

※「和萩((わしゅう)」は、私が俳句を作るときの名前です。皆さんだったら、

どんな名前をつけますか。

 

⑧   インさんへ

東京に出された緊急事態宣言も1か月延期が発表され、3月7日までになりました。海外からの入国制限が一日も早く終わることを願っています。今の状況を「開国」という言葉を使った点、みごとですね。

中国から授業に参加しているインさんの姿が目に浮かぶような川柳です。

※ほとんどの学生さんが対面授業なのですが、インさんはまだ入国できず、中国から授業

を受けている学生さんです。「早く日本に行きたい!」という気持ちがとてもよく表れています。

 

♪   ♪   ♪

 

数か月前にやった俳句のことも思い出してもらい、また、さらにスパイラルに関心を持ってほしいという思いを込めてのコメントでした。

すると今度は、それを受け取った留学生から次のような感想文が届きました。フィードバック授業でのテーマは、次の4点です。

 

1.   川柳の授業を通して、何か学んだことがありますか。

2.   川柳作りの楽しさ、おもしろさはどんなことだと思いますか。

3.   日本人の先生からコメントをもらったことに対してどう思いましたか。

4.   他にも何か伝えたいことや質問、疑問があれば自由に書いてください。

 

では、少し学生さんからの<3:日本人の先生からのコメント>に関する感想例を挙げてみたいと思います。

 

・日本人の先生にも私の川柳の意味が通じたと思い、うれしかったです。

・やはり感謝の気持ちで。まじめなコメントをもらえるというのはありがたいです。

・ICTの意味が面白い。

・先生は日本語の研究にとても深いと思います。言葉の使い方は精細です。

・読みながら、予想以外のものや意味を生かさってサプライズというプレゼントをもらったようにワクワクしてきました。

 

そして、<4:他に伝えたいこと等>には、こんなコメントや質問がありました。

 

・先生の俳句を作る時の名前は「和萩」ですが、どうしてこの名前を使いますか。意味は何ですか。

・「留学生鴨の家族に故国(くに)想ふ」を読んで共感しました。

・友達から聞いたことを一句作りました。

「断捨離で実家に送る着払い」で、どんな感じを浮かべるのか、知りたいです。

ぜひ教えていただけませんか。

 

さらに、質問に答えるメールを出し~~~。イーストウエスト日本語学校を去って早9年。今でも学生さん達と、俳句を通してこんな「楽しいやり取り」ができるとは!

次はどんな「対話」が待っているのでしょう。

Comments are closed, but trackbacks and pingbacks are open.