モンゴルの子ども達に「日本の絵本」を届けよう! ~みんなで続ける移動図書館「ガゼル文庫」~

数日前、ウランバートルで日本語教師として長く活動なさっている中西さんからこんなメールを頂戴しました。

 

 

日本もまたまたコロナ感染拡大で 本当に大変ですね。

モンゴルもついに市中感染が出ました。ウランバートルの人口は 、初めて知っ

たのですが、160万人だそうです。でも、狭い町ですから、一人の感染者がで

るとたちまちです。2月から我慢して来たのに、11月半ば、ついに市中感染者

が出ました。

 

            9月までは、3週間の隔離と、2週間の自宅謹慎がありましたが、9月末に自宅隔離が

解除され、そのままあれよあれよと言う間に、マスク着用解除、コンサート解禁カラオケ

も解禁、そしてこの有様です。スポーツ大会などもあちらこちらで開催されました。

そして、11月15日からウランバートルはロックダウンです。もうさすが学校にも

入れないので子どもたちに向けた活動も今はできません。わたし達は、11月28日に、

『漢字ナーダム』という、日本語学習者に向けた漢字の競技会を企画してきました。

今回で6回目です。何回も初中等の先生たちが集まって話し合いをし、日本センターの

藤野さんの尽力で、国際交流基金から助成金までもらいました。これは、地方から参加

する生徒や引率の先生たちの交通費や宿泊費に充てることになっていました。

今回初めて、はるか遠く(モンゴルの西の果てバヤンウルギー県ーカザフ族)からも

カザフの子どもたちが参加してくれる事になっていました。残念です。とりあえず延期

と言うかたちをとりました。

 

今は子どもたちは家から出られません。

こうした状況の中、一つ救いが見えました。

国立モンゴル大学名古屋大学日本法センター(法学部)の学生さんたちがこれまで

日本の絵本の読み聞かせ活動をされてきています。

主宰は、『モンゴル通信』という、日本人向けの新聞を出されている近彩

(こん あや)さんという方です。

モンゴル語の読み聞かせです。これを子どもたちに見てほしいと思いました。

近さんの許可を得て、教師会のメーリングリストに載せました。

嶋田先生、もしお時間があれば YOUTUBE で[Gazelle   library]入って

みてください。

 ・・・後略

 

私は、さっそく「移動図書館『ガゼル文庫』を見てみました。

みなさんこんにちは? みんな, 幸せな日を. ′′ Deer Litter Library ′′は, 18年前から市内の

遠隔地区の子どもたちに本を読む活動を行っています. そして今, 活動を拡大し, 電子環境

にやさしくする仕事に貢献することを目的にYouTubeチャンネルを開設しています.

図書館プレゼンテーションを見て, 準備した話を聞いてください. ありがとうございます.

https://www.youtube.com/watch?v=B2zo2APhF-E

https://youtu.be/kSuBIpDUlzY

近 彩(こん あや)

    

これはぜひ大勢の方々に「ガゼル文庫」のことを知っていただきたいと思い、中西さんにお願いをし、近さんに「ガゼル文庫」の歴史と現状について書いていただくことにしました。モンゴルの取り組み、素晴らしいですね!皆さま、どうぞご覧ください。

                   ・

   参考:中西令子さんの取り組み→

    「海外だより<コロナ禍に向き合う>第一回「モンゴルの現場」より」

      (中西令子さん&佐藤慶一さん)http://www.acras.jp/?p=9498

 

      ♬   ♬   ♬   ♬   ♬

 

 【近 彩さんからのお便り】

(※近さんは、雑誌「コンバイノー」編集・発行人でいらっしゃいます)

 ガゼル②

中西先生からご紹介を受けましたモンゴル在住20年の近 彩(こん あや)と申します。国営モンツァメ通信社で働いていますので、「初めまして」ではなく、日本語教師会主催のイベントを取材に行って、2回ほど嶋田先生のご講演をお聞きしたことがあります。

 

今回は、私が主宰する、移動図書館「ガゼル文庫」の「読み聞かせ」活動について、お褒めの言葉をいただき、ありがとうございました。また、活動を知りたいとおっしゃってくださって、光栄です。最初に申し上げておきたいのは、この活動は学生たちのボランティアの力によって、ここまで続けてこれたということで、彼らのおかげで私はモンゴルで楽しく暮らさせてもらっているのが実情です。つねに学生たちに感謝です。ですからお褒めいただいた事は、さっそく学生たちに伝えました。

 

さて、私は1996年から毎年モンゴルに取材に来ていまして、2001年5月からUB市に移住しました。日本でも読み聞かせをしていましたので、さっそくこちらでもと思った折、すでに日本人女性が小さな子ども図書館をやっておられました。彼女は日本に住み、年1回夏に来るだけで、運営はモンゴル人がやっていました。で、そこへ仲間入りさせてもらい、読み聞かせ活動をスタートさせました。

 

順調だった、ある日、突然に図書館の本箱もろとも一切が無くなった事件が起きました。当時は市場経済化の途上と混乱で国民の生活は貧しく、何があっても驚かない状況下にありましたが、これには、びっくり。

 

拠点をなくした私は、1年後、自分で移動図書館ガゼル文庫を立ちあげました。絵本は日本の図書館の廃棄処分の本を譲り受け(日本のNGOの皆さんにお世話になりました)、友人の会社の一角に本を置かせてもらっています。このため、貸出などの図書館活動が出来なくなったため、UBをはじめ地方まで、本を求めている子どもたちのところへ巡回する活動に切り替えました。

 ガゼル③png

当時は本職の合間に教育大学で日本語を教えていたので、そこの学生が、次に人文大学でも教えるようになるとそこの学生も、さらに私立大学でもというわけで、次々と教え子たちが協力してくれました。15年前からは、モンゴル国立大学の学生が中心となって現在に至っています。

 

読み聞かせ活動は、隔週の土曜日の午前中に行い、終わると毎回、私の家に学生を招き昼食を共にしています。交通費と昼食、それぐらいしか学生にはしてやれていませんが、絵本を読むことや翻訳をすることで、授業での発表が上手になったり、日本語の力が付いてきたりしたという学生がいるのは嬉しい事です。

 

巡回は、ゲル地区の子ども施設や、老人施設、障害児のいる学校、孤児院などが主で、要望があれば、幼稚園やその他の施設にも行っています。本の8割は日本の本で、あとは英語の本や、モンゴル語の本も一部、使っています。

 

私の基本的な方針は、絵本を通して日本とモンゴルが仲良くなっていくこと。子どもの頃に、日本の本に親しんだ子どもたちは、万一、将来、日本とモンゴルが戦争状態になっても、日本に銃をむけないでしょうという、淡い感傷めいた期待をもって、「戦争は絶対にしてはならない」ことを伝えていければいいなと願っています。

 

戦後75年、特に今年は意識して、「はだしのゲン」や、「かわいそうな ぞう」の話を伝えています。日本の昔話も定番です。喜怒哀楽のさまざまな種類の絵本を取り上げます。「もじゃもじゃペーター」などはドイツ語の原書を使ってかなり残酷な内容ですが、200年のベストセラーだけあって、子どもたちには大人気。

 

こうした実践をへて、私が学生に話しているのは、

★絵本は国境を超えて楽しめる

★子どもから大人まで年齢を超えて楽しめる

★女性も男性も性別を超えて楽しめる

ということです。

子どもの本だと枠をきせているモンゴルの現状を少しずつでも変えていけたらと考えています。優れた絵本を選ぶ目を育てるのは、より良い絵本を読み聞かせに使うことです。優れた画家が作った絵本は、絵本文化の中で生まれた芸術ですと伝えています。

 

ガゼル④活動は、まず学校の勉強を優先、自由に誰でもが参加でき、無理はしないで、時間のあるものが担当していく。

こんな運営ですから、けっこういい加減さも目立ちます。それでいいのです。楽しいと思う者がいるかぎり、この活動は継続されていくと信じています。いい加減ながら続いているのは、学生も子どもも両者が楽しいからだと考えています。モンゴルが大気汚染問題で深刻な時期には、JICAが作った環境絵本をもって巡回したものです。

 

いまは、デパートや有名本屋に、豪華な絵本があふれています。けれど、都市と地方の格差はますますひどくなっています。この風潮がつづく限り、地方の子どもに届けたい思いがつのります。夏休みには地方へ出るチャンスです。私が日本へ一時帰国するので、学生たちはバスや車を使って地方の草原を訪ねています。

 

本の整理、翻訳の不十分さ、場所がないので貸出できない悩みなど、課題は多いです。私がエイとやれないのが欠点です。

みなさんに愛されるガゼル文庫になるためのハードルは高いですが、「継続」していくことだけが力だと信じています。

70歳前後のおじいさんたち25人くらいの施設で、日本の昔話に喜んでくれる姿が、これからも「読み聞かせ」の在り方を教えてくれているような気がします。

 

ガゼル⑤いま、モンゴルはコロナのためにロックダウン中です。外へも出れない、友達とも会えない、こんな時期だからこそ、youtube にアップして、子どもたちに届けたいと願っています。学生が制作し、学生が翻訳して読んでいます。

 

長々と書いて申し訳ありませんでした。ありがとうございます。

今後とも、モンゴルの日本語学習者のため、日本語教師のために、ご指導くださいますよう、お願いいたします。

   近 彩(雑誌「コンバイノー」編集・発行人)

 

 

 

 

 

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