6月のアクラス研修は、河野俊之さんによる「音声教育ができるだけでは、教師として成立しないよね」でした。ユニークな研修タイトルから、「いったいどんな内容の研修になるのだろう?」と、参加者も興味津々。気さくな河野さんのキャラクターもあり、今回の研修は始まる前から、ワイワイガヤガヤ、楽しい会話が聞かれました。
研修では、いくつかの音声教材を実際に聞くことを通して、学習者がどのような思いで学んでいるのかに思いを馳せることができました。教師は、深く考えることなく教材を選択し、授業で選択してしまっているのではないでしょうか。使用教材、自らの実践をクリティカルに見ることの大切さを改めて感じました。たくさんの印象に残る言葉がありましたが、「発音が苦手で上達しない学習者に対して、『耳が悪い』『勘が悪い』というのはおかしい」「実践をより良いものにしたいと思えば、教師は自然に『今までにないことをする』『失敗を恐れない』姿勢になる」という言葉は、特に胸に響きました。
では、参加者の報告記事をご覧ください。今回のレポ―ターは、外村佳代子さんです。
配布資料 パワーポイント → 当日使用したパワーポイント
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6月度アクラス研修 報告
外村佳代子(佐野日本大学短期大学)
「音声教育ができるだけでは、教師として成立しないよね」河野俊之先生(横浜国立大学)
音声教育は特別でない あたまがよくなくてもいい。
音声教育など特別ない 特別な教え方は無い。
「青い本」「青いの本」は直すが音声としては通じる。
訂正できるかどうか、学習者ができるか。
文法項目が出来ていないと批判が出る。
音声はどうだろうか?言い訳できるかどうか。
音声教育と他を結び付けられるかどうか。
外国語の発音が上手くなりたければどうしていたか?
1、 英語を勉強していた時。
2、 第2外国語を勉強していた時。
3、 今外国語を勉強するなら。
・成績さえよければ。単位さえ取れれば
・きちんと説明してほしい
・モデル音声を聞かせて(もっと、きちんと)
・評価してほしい
・できるようにしてほしい
↑日本語教師としてそれらが出来ているのか。
評価するには母語干渉が入る。
それは無意味ではないのか。
中国語や韓国語はすでにデータが出尽くしている。
教師としてどういう時に楽しい?/うれしい?
実際に楽しかった/うれしかった。
どういう時?
・ふつうにできた
・「さすがは俺!!!」と思える時。
電車でインドネシア語を話していたら笑われた。
そんな会話ができる(さすが俺だな)
音声教育ができるだけでは教師としてはダメ。
一方で音声教育が苦手という教師は多い!
発話が苦手な学習者に対して「耳が悪い」このことばはNG。
教師は学習者に寄り添う。
唯一絶対の教授法はナイ。
10人学習者がいれば10色。(100人いたら???むりだろ)これは理想論!
10人学習者がいれば同じ教え方でいい学習者もいるはず。
文法に限らず
青木先生直子「教師の役割」
「やったのにできない、教えたのに忘れている。とか言っているのは違う。
あなたの教え方の問題」
逆上がりはまず見せる。説明する(腕を伸ばさない、などと)
教えるのは文法も音声も同じ。文法は理解しやすい(治しやすい)
音声教育の研究
90分15回の音声教育、その効果の測定「音声教育をしたコースと、
音声教育をしていないコースと比較」← ナンセンス!
効果の測定はできるのか?音声学だけのやり方??? 効果の測定法など
あるのか?教科書も測定人も違う。音声を教えてないコースがあることも
不思議?教育現場と研究の違い。昔と比べ教材は増えた。そんな教材か?
(お持ちの教材例の解説)
1回5分が売りの教材。・CDを流すだけでいいものを求める。
(さすが俺!にはならない)5分でできる?間違えないことを設定。
教師の能力などは問題にしていない(時間にこだわるのはどうか?)
聴解にも同じものがある。(わくわく・・・・)聴解の教材は買わせない。
コピーして渡して教師はCDをかける。教師のタイミングでその場を支配して
いる。少数の間違いは解説なし。これも教師ではない。学習者が自分でスマホ
等で見て自分でできたらいい。
(教材2を使用して)
・日本人でもできない
・できないとだめ?
・つまらない
・学習者の感や耳に任せている。(学習者の能力に任せている)
(教材3を利用して)
リピートするだけ+それをわかりやすく示すだけ。(一部を変えて)
リピートするだけ。このやり方はおかしくないか???
「耳が悪い」「感が悪い」→教師は何もしなくていいのか?
教師としての力量はどうなのか、「さすが俺」と思えない。
日本人の子ども「つ」は難しい。だが音声教育ではそれを問題視していない。
繰り返し学習だけでは習得できない。教育の観点で指導していく。
フレーズごと短く繰り返して2つ目のフレーズを足していく。山を幾つも
並べると学習者には何が重要なのかが分からない。山一つ、山二つ、三つ
と増やしていく。ルールを感じて覚えていく。
学習者の頭の中でどのように理解が進んでいるのかを考えていく。
リピートさせるだけでは、定着しない。(CD流すだけでは効果がない。
どこが重要なのか)
文法項目の導入方法。文法の導入は比較的簡単。絵を用いてストレスなく。
媒介語を用いて(ならば自己学習でもできる。さすが俺にならない)
アクティブラーニングが流行る理由。教師の一人芝居では導入が定着しない。
アクティブラーナーを育てることがアクティブラーニングである。
先生が作成中のテキストの披露。
絵を用いて英語の意味と日本語の意味を提示して文法を導入する。
自分でできる学習は自分でさせると時短になる。
よりよい導入方法
「ん」です、の導入はむずかしいものの一つ。
アクセント教育
学習者の感に頼っている教師が多い。複合語のアクセントについてシンガポール
の学会で発表をした。事実関係だけについて質問を受けます。
ドイツ人「単純語【箸と端】などの指導はどうするのだ?との質問(2001年)
母語話者はどうしてアクセントを覚えているのか???
すべての単語を覚えているのか?3万5千ある日本の単語すべては無理。
ある程度インプットがありその後に原則を覚える。アクセントを推測する。
強化?修正? 関西のテレビの発音は外来語にはあり得ない。
(テレビ、ビデオなど中高になる)
家庭内で覚える単語は親の影響を受けやすく直せない。
「まちばり、しゃもじ、杖」などは教科書にでてこない。
●●+●●の漢語
1、 宿題です。(83%)2、音楽です。(10%)3、職業です。(1%)
4、先生です。(5%)5、正月です。(0%)
教師の役割
独自の基準を考える
独自の基準をもとに自己モニターを行う
基準・発音を修正していく(を支援する)
これらは授業をしないとできない。調査ではできない。
教師はどんな時が楽しい。
・普通にできた。
・さすが俺!!
・まいった!と思うこともあってあたりまえ。
その後→より良くしたい。より良く教えたい。
➡今までにないことをすることになる。新しいことをせざるを得ない。
だから失敗もする(当たり前) (失敗したらどうしようという考えはおこがまし
い。失敗するのが当たり前。ただし挽回する方法を考える。ストレスはたまるが
何とかする方法を考えながら教師として成長する。
うまく行かなかったら、
・飲もう・どんまい・よかろうもん・よかろう←ポジティブに向ける。
教師がうくいけばみんな喜ぶ。
1、 得意の物を伸ばしたい
2、 不得意の物を克服したい
3、 不得意の物を生かしたい