初級クラスでの“つながり”のある自律的な学び~『できる日本語初級』6課の実践から

5月下旬のことでした。私は、イーストウエスト日本語学校で教務主任に、こんな相談をしました。

 

  『できる日本語』の説明をするには、6課【一緒に!】が分かりやすんだけど、

  最近やった実践例、紹介してもらえないかなあ~~~。

 

すぐに話に出てきたのは、A1クラスの実践でした。

   伊瀬知=2日担当(担任)、寺浦=2日担当、高見=1日担当

  A1クラスは4月に入学し、4月10日(月)から初級1課スタートで開始。

 とても興味深い実践でしたので、アクラスのホームページでもご紹介したいと思います。

  (※担当した3名の先生方からは許可を頂いています)

 

では、イーストウエスト日本語学校のA1クラス(4月入学の初級クラス)の実践例をご紹介しましょう。

『できる日本語初級』6課では次のようなことを学びます。

6課シラバスそして最後に、次のような【話読聞書】と【できる!】があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6課話読聞書

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6課できる

まず、【話読聞書】に関して学習者が書いたものもご紹介しましょう。

※ここに掲載している作品はすべて、学習者から掲載許可をもらっているものです。

これは、まずは「固まりで話すこと」をめざし、そのあとに「じゃあ、今、言ったことを書いてみよう」ということで出来た作品です(ミャンマー出身の学習者)。担当した伊瀬知さんは、次のように語ってくださいました。

 

この学習者は、友達と一緒に行きたいところとして、自分のアルバイト先をクラスメイトに紹介しました。アルバイトをしているラーメン屋さんのラーメンがとても好きで、ぜひクラスメイトにも、その店のラーメンを食べさせたいと思ったそうです。

                           ・

次は、この課のゴールである【できる!】になりますが、ちょうどゴールデンウィークにかかったため、それぞれ自由にグループを作って、出かけることにしました。ゴールデンウィーク中、あちこちに友だちと出かけた学習者は、体験してきたことをそれぞれが写真を使って作文を書いてきました。一つ例を示しましょう。

 

実は、1つ前の5課の【話読聞書】「楽しい1日」で日記を書いていたので、学習者は「お出かけ」をしたあと、自発的に「楽しい1日」について日記を書いていたのです。やらなければいけないことだから……というのではなく、楽しみながら習い始めたばかりの日本語で日記を書いていったのです。こうしたことが「日本語で書けるって楽しい!」とモチベーションにつながります。

 

それを見て伊瀬知さんは、「すぐにやるのではなく、他の課を勉強しながら、いずれ作品にして発信しよう」と考えました。実際にポスターにしてクラスで共有したのは「13課:私のおすすめ」(2017.6.1)を学んでいるときでした。『できる日本語』は、このように課・レベルを超えて「つながりのある学習」をめざしています。

 

まだ出会って3週間も経っていない学習者同士で休みの日に出かけていき、それを日記にしたり、学校でみんなで話し合ったりしている姿に感動です。「社会・人とつながる学び」の大切さを教えてくれる光景だったと、伊瀬知さんは振り返りながら、次のように話してくれました。

 

【できる!】では、興味のあるイベントに誘い合って、実際に体験してくるという活動をしました。まだ入学したばかりで、教室の中だけの関係だった学生達が一緒に外へ出て日本語を使って交流しました。日本語を話しながら楽しく過ごし、お店の人やイベント会場のスタッフとも日本語でのやり取りをしたそうです。教室で習ったことが実際に使えたことで自信を持ったようです。

 

待ち合わせをして一緒に出かけるために、学生同士、連絡先を交換しました。あるグループは無料ジャズコンサートに行ってきました。当日、グループのメンバー6名は学校の最寄り駅で待ち合わせをして、御茶ノ水でジャズコンサートを見て、そのあとにメンバーの1人がぜひ行ってみたいと思っていた秋葉原まで歩いて行きました。途中にある神田明神では記念撮影もしてきました。日本人観光客に写真を撮ってほしいと日本語でお願いしたとうれしそうに話してくれました。

 

この活動を通して、教室内でも国を超えての交流がより活発になりました。連絡先を知ったことで、気軽に連絡ができるようになって、今では困ったときに連絡を取り合うようになったそうです。『できる日本語』は学習者がどんどん仲良くなっていく教科書だと改めて思いました。

 

 

 

このように課・レベルを超えて「つながりのある学習」ができるのが『できる日本語』の魅力の一つです。

 

さらに、この話を聞いた教務の先生方は、「そうだ。学校のホームページに載せましょう!」と提案し、ポスター完成の翌日ホームページにアップされました。

http://www.eastwest.ac.jp/eastwest/

 

これは、学習者の言語活動を通して教師同士がさまざまな対話を重ねていることの表れです。こうした「多様なつながり」が自然に生まれてくる実践は、学習者も教師も「わくわく感」たっぷりのものとなります。

 

最後に、実践をなさった先生の「声」をもう少しご紹介したいと思います。

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     ♪   ♪   ♪

日本の生活や学校生活に慣れたころに始まるゴールデンウィークに、ぜひクラスメイトと遊びに行って関係を深めてほしいと思い、今回、6課の【できる!】をしました。最初はみんなも「本当に行くの?!」と戸惑いを感じていましたが、実際のイベントに誘って、約束をしているうちにどんどん活気付いて行くのが分かりました。ゴールデンウィーク直前、「遊びに行ったら、たくさん写真を撮ってきてね」と送り出しましたが、正直、本当に行くかどうか、どうなるだろうか、と心配でした。しかし、ゴールデンウィーク明け、こんなに楽しい報告と素敵な写真を見せてくれました。さらに、「時間があったので、予定以外のところにも話し合って行った」というのには驚きました。また、普段はおとなしい学生がグループをひっぱっる新たな一面も発見できました。この6課をきっかけに、学習者は教室から外へと広がっていくこと、クラスメイトとつながることを体感できたのではないでしょうか。

 

 

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