3月20日に、浜松日本語学院にて「伝える・つながる・創る力」を育む日本語教育というテーマで、実践報告会・講演会を行いました。今回は、特に、学習者の視点から日本語の学びを捉えること、地域との連携の在り方を考えることを基軸において作っていきました。学内だけではなく、国際交流協会や介護施設の方々にも参加していただき、ご一緒に何度か事前に話し合いをする中で、相互理解が深まったことも大きな産物の一つとなりました。いろいろお伝えしたいことがありますが、今回の報告レポートは、学習者・学校の変容にについて取り上げることとします。
■地域力を育む日本語教育:『できる日本語』を使って~2年の歩み~<松葉優子>
『できる日本語』を使い始めたのは2年前、今回『できる日本語』で育った初めての学習者が卒業式を迎えました。「伝え合う・語り合う日本語力」を身につけ、「対話力」を通して人とつながる力を養うことをめざした教育実践は、学習者を大きく変えていきました。
【学習者の成長】
・テキストと同じような場面で適切な表現が出てくる
・言いたいことを言おうとする
・最初は教科書の表現をそのまま使っているのにだんだん自分のことばに変化している
・学生はクラスメイトと日本語で話し合い意見を出し合う
・日本語で話すことに抵抗を感じない
・日本人と話そうと積極的である ・・・(スライド5より)
当日は、たくさんの実践例の中から以下のような事例を取り上げました。
・学校間交流:グループ校の良さを活かし、専門学校、中・高等学校との交流
・学内での活動:教室活動 サポーターバンクの方との交流 ポスター発表会 弁論大会等
・学外での活動:「ふれあいデー」「アグリフォーラム」・・・(スライド7より)
地域社会とのさまざまな活動を通して、学習者自身が成長したことだけではなく、地域社会の方々の異文化理解につながり、外国人が身近な存在になったことが大きな収穫でもありました。「学習者の笑顔が増え、楽しそうに学ぶ姿が印象的でした」という言葉が今も心に残っています。
■地域社会とつながる日本語学校を目指して<竹下知宏>
シンポジウム:「日本語の学びを通してつながる地域社会」より
浜松日本語学院は、「地域社会に根差し、地域から日本へそして世界で活躍する有為な人材を輩出する」ことをめざす静岡理工科大学グループ校として2011年10月に設立されました。開校当初は、文型・文法の暗記が中心であり、学習者から否定的な声が聞かれ、出席率もよくありませんでした。しかし、「対話型授業」に変えたことから、学習者の反応に変化が見られました(例:3か月ごとの皆勤賞受賞者は年間16名から126人に大幅増加、日本語能力試験合格者数も大きく増加しました)。ここで、2つのスライドを提示しておきたいと思います。
■学習者の声:『できる日本語』で日本語を勉強して思ったこと
今回は、「学習者の声」を聞こうということで、2人の卒業生が発表をしました。生の声ほど心に響くものはありません。会場はしーんとして聴き入っていました。
・アルガ プトラ クルニアワン(インドネシア出身)
・ビーケー スーマン(ネパール出身)
ここでは、インドネシアで日本語を学び、デザインを勉強したいと日本にやってきたアルガさんの発表をご紹介したいと思います。
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(前略・・・)
私の留学の目的は2つあります。高校の時に日本語を勉強しましたが、上手にならなかったので、とにかく進学ができて、日常生活で日本語が話せるようになりたかったです。一生懸命勉強したお蔭で、今年4月から静岡デザイン専門学校に行ってプロダクトデザインを勉強します。そして、日本語でたくさんの人と話せるようになりました。私がすごいなあと思っています。
今、私は、アルバイトをしながら勉強しています。
アルバイト先で日本人の友達ができました。それは、私が日本語が話せるようになったからです。学校で習った友達言葉を使っています。そして、友達から若者の言葉を教えてもらいました。例えば「あざっーす」とか「超すごい」「まじやばい」。そして、『できる日本語』で勉強して、日本人のお客さんに丁寧な言葉で話せるようになりました。
私は、『できる日本語』の初級から中級を学びました。「初級」は生活に役に立つ内容でした。そして、「初中級」ではアルバイトの応
募の仕方を勉強しました。とても役に立ちました。そして、旅行に行くとき電車の切符を買ったり、ハプニングの時の言い方など勉強できたのは本当に良かったです。「中級」では今まで知らなかった科学のことを知りました。たとえば、IPS細胞のことや介護ロボットのことです。とても勉強になりました。私にとって新しい知識になりました。このように日本語でいろいろなことを知る事ができるようになったのは、自分でもすごいと思います。
そして、簡単なことから勉強を始めて、難しいことまでわかるようになりました。そして私は今まで自分の気持ちを話したり、表現したりできるようになりました。特に
日本語で詩を書く楽しさを知りました。これは、授業中に私が作った詩です。
くらいよね
9か月
待つしかないよね
早く生まれたいね
これは赤ちゃんの気持ちです。
『できる日本語』でいろいろな活動があってとても楽しかったです。とても楽しかったのは農園体験です。トマト農園に行きました。その農園にはハッピートマトがあり、ハッピフルトマトがあり、とてもかわいいトマトでした。トマトに笑顔が書いてあって、初めて見ました。その時に、勉強したことをアグリフォーラムで発表しました。これがアグリフォーラムで発表したことのポスターです。何を書くか友達と相談して決めました。そして、私は絵を描きました。
他にもいろいろな活動をしました。スポーツ大会は、学生達でスポーツ委員会を作りました。毎月話し合いをしながら内容を決めました。12月、スポーツ大会をしました。それから、中学生との交流もしました。自分の国のことを紹介しました。そして中学生の言いたいことを聞いてアドバイスをしたり、意見を言ったりしました。中学生から「留学生活はどう?」と聞かれたので、自分の経験を話しました。
そして、ラジオにも出演しました。生まれて初めてラジオ番組に出ました。とても緊張しました。なぜなら日本語で話さなければならなかった。友達と一緒にスタジオに行って、日本の花見について話しました友達などいろいろな人が聞いてくれて嬉しかったです。日本語で話せるという自信になりました。
『できる日本語』を勉強して思ったことは、生活に役に立つ内容でよかったです。そしてアルバイト先でお客さんに使う丁寧な言葉と、
友達や先輩と話す時の言葉の違いが分かりました。そして、自分の気持ちを表現できるようになりました。日本語で詩を書けるようになりました。
「できる」活動の中に自分の意見を言えるようになりました。そして、新しい事情や知識を知ることができました。・・・(後略)
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第2部のシンポジウムは、以下のとおりです。
「日本語の学びを通してつながる地域社会」
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登壇者:公益財団法人 浜松国際交流協会
チーフコーディネーター 内山夕輝
社会福祉法人天竜厚生会
福祉サービス事業部課長研修センター所長 横溝智子
浜松日本語学院 校長代理 竹下知宏
3人のパネリストのご発表後、フロアーとのやり取りも活発に行われました。来年度に向けて、新たな連携・活動が楽しみです。資料は、パワーポイントをご覧ください。
※登壇者の方々のご厚意により、当日配布した資料をアップさせていただくことができました。
資料:
●基調講演 <嶋田和子>➡ 『できる日本語』がめざす日本語教育
●教育実践報告 <松葉優子>➡ 教育実践報告(松葉)
<アルガ>➡ 『できる日本語』で日本語を勉強 アルガ
<スーマン>➡ 『できる日本語』で日本語を(スーマン)
●シンポジウム <内山夕輝>➡ HICE U-Tocの実践を通して
<横溝智子>➡ 天竜厚生会
<竹下知宏> ➡ 「地域社会とつながる日本語学校をめざして」(竹下)
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