「<日本語サロン>『これからの日本語学校』を考える」の報告

 

及川信之さん(話題提供者)

及川信之さん(話題提供者)

先週、<日本語サロン>「「これからの日本語学校」を考えてみませんか」を実施しました。話題提供者は東京三立学院の及川信之さん、参加者は日本語学校の教務主任、常勤講師、非常勤、また専門学校の職員の方などさまざまな立場の方による集いとなりました。

「日本語学校を考える」集いをしようと思ったのは、アクラス日本語研究会会員の中には、日本語学校で働く先生方も多く、真剣に「これからの日本語学校をどうしたらいいのか」ということを考えたいという意見が多く聞かれることからでした。

予定では、2時間話し合いをした後、居酒屋に繰り出すつもりだったのですが、なんと10時までノンストップで話し続けてしまいました。それは、いろいろな話が次々と飛び出し、とても「休憩時間」など挟みこむ余地がなかったからなのです。それに加えて、「やっぱりお酒があったほうが話しやすいんじゃない?」と、最初からワインを出して乾杯してしまったことも大きく影響しているのでしょう。チーズ、ナッツ、スナックなどをつまみながら、話はどんどん展開していきました。

話は多岐にわたり、とてもここには書き切れません。3.11以降さらに足腰が弱くなった日本語学校もあれば、特色を生かし、どこまでも前向きに取り組んでいる日本語学校もあります。これから個々の日本語学校が教育の質を上げ、学校の個性を伸ばしていくにはどうすればいいのか、真剣な話し合いが続きました。

しかし、この十年、二十年で日本語学校の教育の質は大きく向上したものの、経営が「前近代的なもの」であり、経営者の方針・やり方一つで学校の基盤が堅固であったり、揺らいだりしているのも事実です。まずは、日本語学校における経営の透明性が求められるのではないかという強い意見も出されました。確かに、昨年以来、非常勤講師で職を失ったり、コマ数を減らされたりした人も多々見られます。「では、経営基盤をしっかりさせ、さまざまな外因による影響を最小限に食い止めるにはどうすればいいのか」といったことにも話は及びました。

もちろん今回の話し合いで、何か結論が出たわけではありません。さまざまな思い・求めていることなどを出し合い、こうした現場の声を社会に届けていくには、日本語学校の「草の根ネットワーク」をもっともっと広げていくことが大切なのではないかということで、今回の「『これからの日本語学校』について考えてみませんか」は終了しました。話題提供者の及川さんからは、「これを第一回として、何度か会合を重ね、少しずつ輪を広げていきましょう。参加希望者が増え、このアクラスのオフィスには入りきれなくなり、隣りの会館を借りるくらいになるといいですね」という次に向けての積極的なご発言がありました。

「夏季休暇のため旅行中で留守だった」「夏休み明けで忙しかった」「猛暑で体調を崩していた」などさまざまな理由で今回御欠席だった皆さま、次回はぜひご参加ください。さてさて、次の会を開く時には、日本語学校を取り巻く環境はどうなっていることでしょう?

最後に、「これをしたい!」「こういう方向にもっていきたい!」という前向きな意見をいくつかご紹介したいと思います。

【日本語学校の外をもっと知ろう!】

知人の縁で、昨年から地域の日本語教育に関わることになりました。そこで知ったことは日本語学校の外は熱い、広い、面白いということです。同時に日本語教育の社会的認知度が低いことを再認識しました。私は、今、自分で何ができるのか、根底から考え直したいと思っています。

私も地域社会に飛び込んでいきたいと思って、活動しています。日本語学校が孤立して存在しているのはおかしいですよ。でも、学内の他の先生方は、そういう意識はありません。なぜか私だけがひた走っている感じです。この「日本語サロン」で、そうした仲間が見つけられたらいいな、と思っています。

 

【日本語学校を地域の人に知ってもらおう!】

ワインを飲みながら、みんなで語り合い

ワインを飲みながら、みんなで語り合い

日本語学校は、ある意味閉じられた場所で、周りの日本人にとって何をしているか分からない場所になっています。例えばビジターセッションなどで、参加してもらうと日本人は「留学生との関わりはとても楽しい」と言って帰っていきます。そうした機会を日本語学校側がもっと努力して作る必要があると思います。

 

【みんなが集える「場作り」を考えよう!】

日本語学校で培ってきた経験・力を活用して、今までにない場所を作りたいという思いが強くなっています。今居る外国人、そして日本人も巻き込んで、みんなが気楽に集える場作りが必要だと思います。そうしたことを話し合いたいんです。そして、実際にそんな場を一緒に作る仲間がほしいと考えています。

全日本語学校が地域の人に開かれたスペース、「サロン」のようなものを作って、料理を振る舞う、ディスカッションをするなど、常に交流のスペースを作って、日本語学校を外に開いていくのはどうでしょうか。

 

【学校間の繋がりを強くしよう!】

いろいろな方法があると思います。まずは、日本語学校間の情報交換をしてはどうでしょうか。例えばまずは中野区、杉並区の日本語学校でネットワークを作って、その輪をどんどん広げていくというのもいいですよね。

それぞれの学校がバラバラにやっているように思えます。もっと業界として強くなることが必要じゃないでしょうか。だから、学校を動かすパワーと気持ちがある人間が集まることが大切ですね。機会をみつけて、どんどん~~~。

 

【根源的なことを話し合える場を作ろう!】

「人間教育こそが言語教育なのだ」ということがわかっていない人が多すぎると思います。どうしても技術的なことに走りがちです。原理・哲学を持っている先生が集まって語り合う場が必要だと考えています。そういう「場作り」を私は考えていきたいんです。

 

【次の時代を担う人材を育てよう!】

日本語学校全体、業界全体を支える人を育てていかなければなりません。20代後半から30代の人がどんどん業界にきちんと入ってくるような仕組み作りが必要ですし、業界としての魅力をアピールしていくことが大切だと思います。それには、発言できる人を増やして、志を持つ人が、今日のように集まって、話し合いをしていくことが必要ですね。

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