モンゴルからの便り:孤児院「太陽の子ども達」の教育~子ども達の自立に必要な事~

3月にモンゴル日本語教育シンポジウムのためにウランバートルを訪れました。そして、懇親会の席上、青年海外協力隊員として活動している大平緑さんにお会いしました。短い時間でしたが、お話を伺って、ぜひアクラスホームページで活動内容をお伝えしたいと考え、ホームページに載せるレポートを送ってほしいとお願いしたのです。
そして、今日、大平さんから、こんなお便りとともにレポートが届きました。
     ◆   ◇   ◆
支援者の方から掲載許可をいただいていたため、お送りするのが遅くなりました。
内容は、孤児院の教育について書きました。日本の教育にも応用できることがあるのではないかと思います。ぜひ日本の特に教育に関わるすべての方々に見ていただきたいです。
また、孤児院に興味がある方がおられれば、私の連絡先を教えていただいても構いません。もし孤児院に来たいという方がいらっしゃればもちろんウエルカムですし、日本語教師の方であるなら尚更アドバイスをいただけるとありがたいです!
※大平さんに連絡を取りたい方は、嶋田までご連絡ください。

 

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孤児院「太陽の子ども達」の教育~子ども達の自立に必要な事~

 

大平緑(平成26年度2次隊青年海外協力隊員 モンゴル・青少年活動)

 

みなさま、はじめまして。私は2014年10月から2年間、青年海外協力隊員(JICAボランティア)としてモンゴルの孤児院で働いています

施設の外観

施設の外観

大平と申します。2015年3月13、14日にモンゴル・日本人材開発センターで行われました「日本語教育シンポジウム」にて嶋田先生とお会いしました。その時、先生に私の活動や孤児院についてお話させていただいたところ、大変興味を持ってくださり、ぜひ活動について寄稿して欲しいと依頼を受けました。私の活動先、孤児院「太陽の子ども達」(以下、「太陽の子ども達」)は、子ども達の「自立」を目標に日々教育活動を行っています。孤児院での活動を通して「子どもの自立教育」について私自身学ぶことが沢山ありますので、ぜひ日本の皆様にもその事をお伝えできればと思います。

 

モンゴルの首都ウランバートル市から北へ車で3時間、モンゴル第2の都市ダルハン・オール県ダルハン市に「太陽の子ども達」はあります。国際NGO団体「SAVE THE CHILDREN」の援助により、ダルハン・オール県に住む「マンホール・チルドレン」を保護するために設立されたNGOの孤児院です。施設の運営費や子ども達の生活費、教育費の殆どを、日本の支援団体や里親さんが援助しています。「マンホール・チルドレン」とは、貧しさ等の理由から家が無く、温水が流れているマンホールの中で生活せざるをえない子ども達のことを指します。現在、ダルハン市内のマンホール・チルドレン達は全員施設に保護されていると聞いています。しかし、アパートの地下にあるトイレや水道も無いような厳しい環境で暮らしている家庭は、未だ存在しているのが現状です。施設には、小学生から高校生までの女の子20人、男の子20人が暮らしています。モンゴルの法律により、子ども達は18歳以上になると孤児院を出なければなりません。卒業後も1人で立派に生きていける力を養うため、孤児院では「子ども達の自立」を目標に以下の教育を行っています。

 

①   自分でできることは、自分でさせる

料理を作っている様子

料理を作っている様子

炊事洗濯、掃除などの家事は、全て子ども達が行っています。自分たちの手で行う事で自然と生活力が身に付くからです。家事をすることに関して、嫌がる子・面倒くさがる子は1人もいません。みんなで協力して、時間をかけずに終わらせます。また、年上の子ども達が見本になって動いているので、年下の子ども達もお兄さん、お姉さんを見習ってよく働きます。例えば、私がお皿を洗おうとすると、「私の仕事だから大丈夫」と言って止められます。自分の仕事に対して誇りをもっている姿がとても印象的です。また、私が「手伝ってくれる?」というと、何人かが 「私が!私が!」と言ってお手伝いをしたがるのです。他の先生達も、なるべく子どもができることは子どもにやらせるよう仕事をふっています。以前、教師として日本の教育現場に携わっていた私が思うに、こういった子ども達は日本社会から減ってきているのではないでしょうか。炊事洗濯はほとんど機械がやってくれる、お金を払えば手間がかかることも誰かがやってくれる、そういったサービスが充実している日本では、人間の生活力がどんどん衰えているような気がしています。

 

②   高いスキルを身に付けさせる

モンゴルの伝統楽器を使った演奏会の様子

モンゴルの伝統楽器を使った演奏会の様子

子ども達は、余暇の時間にモンゴルの伝統踊り、伝統楽器(馬頭琴、ヨーチン、琴)、ホーミー、アクロバット、絵、裁縫、パン作り、日本語、英語など、様々な分野の勉強を行っています。孤児院には、子ども達のお世話をしている先生以外に各分野の専門の先生が働いており、設備の整った学校も併設されています。実は、私の活動もその一環で、子ども達に日本語や日本文化を教えています。音楽を学ぶ事は子どものIQを高くするといった研究もありますし、高いスキルを身に付けることで職業の選択肢が広がるという利点もあります。実際、この施設を卒業した子ども達が、モンゴルの東大、京大レベルの大学に入学し、音楽、踊り、弁護士、医者、技術エンジニア等の学部で勉強しています。また、施設卒業生の就職率も100%です。子ども達のやる気を引き出す仕掛けとして、頑張った成果を発表する場が設けられています。例えば、踊りや楽器の上手な子ども達は1年に1度日本に行き、モンゴルの伝統音楽を伝えるコンサートを行っています。コンサートの収益金を孤児院の運営費に充てるほか、何千人ものお客さんの前でコンサートができたという自信を子ども達に与えています。

 

③愛情をたっぷり与えながら、悪いことは悪いと厳しくしかり、できたこと頑張ったことは全員の前で褒める

この施設に入ってくる子ども達が、何か特別な選ばれた子かというとそうではありません。むしろ 施設に入る前は、うそをつく、喧嘩やスリをする等、悪い習慣が沢山あった子ども達です。それは両親や片親がいなく愛情不足、貧しい生活環境の中では仕方のないことかもしれません。そういった習慣を更生し、子ども達を自立させるために、先生達が親代わりとなって日々接しています。もちろん更生というのは一筋縄ではいきません。家ではちゃんとやっているように見えても、学校で悪いことをする子は沢山います。そういった子ども達

年末パーティーでの表彰式の様子

年末パーティーでの表彰式の様子

に、複数の同じ教育方針を持った大人たちで何度も繰り返し指導する必要があります。子ども達と先生達の間には強い信頼関係と深い愛情がありますから、沢山怒られながらも少しずつ更生していきます。特に変化が著しいのは「言われたことをちゃんとできる子」は伸び率も大きいです。また毎年末に行われるパーティーでは、その年頑張った子ども達(例えば、学年1位の成績をとった、今年1番成長した、お手伝いや勉強をよく頑張った等)に賞状とプレゼントを贈ります。「頑張れば認められる」という期待、安心感を与える。「自分もやればできる」という自信をつけさせる。「次は自分が褒められるように頑張ろう」というやる気、意欲を引き出す。こういったプラスのサイクルが、素直で向上心のある子どもを育てる鍵だろうと感じています。それは、本来人間が誰でも持っている力で、それを如何に引き出すかが重要であるように思います。

 

こういった子育ての方法はモンゴルの遊牧生活の中で培われてきたものだそうです。いつ家族がバラバラになるか分からないという厳しい生活環境の中で生きてきた遊牧民にとって、子ども達の「自立」は不可欠です。子ども達を早く一人前にさせることが、生きるために必要な要素なのです。

 

さて、ここまで読んでくださって、子どもの自立教育についてヒントとなることがあったでしょうか。日本の教育現場にも役立てていただければ幸いです。もしモンゴルに来られることがありましたら、ダルハンの孤児院「太陽の子ども達」にぜひ遊びに来てください。子ども達の深い愛に癒されますし元気をもらえると思います。また、皆様から日本語教育のアドバイスもいただきたいです。それでは、読んでくださってありがとうございました。

太陽の子ども達と先生達。「私達にぜひ会いに来てください!」

太陽の子ども達と先生達。「私達にぜひ会いに来てください!」

 

2015.4.20

 

 

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