台湾に広がる「新しい日本語学習」~第57回台中日本語教師勉強会:講師(澤田さん)の体験談より~

 

『できる日本語』、既刊の4冊

『できる日本語』

16日(日)、台中の犬山日語教室にて57回目の「台中日本語教師勉強会」が行われました。今回の講師は、『できる日本語』シリーズの著者の一人である澤田尚美さんです(台北在住)。著者による説明のあとは、山田朗一さんによって『できる日本語』を使ってのデモ授業が展開されました。実は、「みんなで、学習者も教師も楽しく、効果的に学べる日本語教室を作りたい」と、台中に昭和日語教室を作ったのは、山田さんなのです。

良い教室を作るには、教師の学びが大切だと山田さんは、何人かの仲間と実践に基づく勉強会を行っていて、今回「教科書の著者と、それを使っている先生とのコラボレーションによる勉強会」が誕生しました。実践を共有し、対話を通して「新しい日本語学習」を考えていく会は、きっと多くの参加者に「貴重な気づき」を与えてくれたことでしょう。

この勉強会について、皆さまにもご紹介したいと考え、講師として参加した澤田さんに、体験談を送ってもらうことにしました。また、以下のブログにも実施報告が載っていますので、ご覧ください。

勉強会の実施報告 http://blog.roodo.com/inuyamanihongo/archives/27613762.html

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報告者:澤田尚美(「できる日本語」教材開発プロジェクトメンバー)

話をする澤田さん① 話をする澤田さん

去年の11月の終わり、山田先生からご連絡がありました。

「『できる日本語』についてもっと知りたいので、お話いただけませんか」

台中からわざわざ台北まで足を運んでくださり、約2時間、『できる日本語 初級』を前にして、お話をしました。山田先生は『できる日本語 初級』の出版当時から注目してくださっていたとのこと、でも、この教科書、どうやって使うんだろう…といろいろ聞きたいことがあったとおっしゃっていました。話し終わったとき、山田先生から「台中で2か月に1度、勉強会をやってるんですけど、今度の勉強会で『できる』の話をしてもらえませんか」という提案をいただきました。台湾で『できる』の話をさせていただけるなんて!私は「はい、喜んで!」とお答えしました。

実は台湾は私にとって、とても思い出深いところです。日本語教師になったばかりのころに、ある海外派遣プログラムに応募しました。その派遣先は台湾の中部にある彰化という町でした。台北には旅行で行ったことがありましたが、聞いたこともないところだったので、どんなところなんだろうと不安な気持ちでした。しかし、行ってみると、私が思い描いていたのとは全然違い、人情味にあふれ、食べ物がとてもおいしい、本当に忘れられない場所となりました。1年で日本へ戻ったのですが、十何年たった今でも彰化の人とは交流が続いています。今回は仕事とは違う理由で来台しましたが、懐かしい台湾中部で、自分がかかわった『できる日本語』のお話ができるとは、夢にも思っていませんでした。

この「台中日本語教師勉強会」にはお世話役の先生が4人いて、12月の終わりから、メールで内容の打ち合わせが始まりました。勉強会の時間は90分のことが多いそうなのですが、今回はデモ授業も一緒に見てもらおうということで、120分の拡大版になりました。2月末、勉強会の案内が出ると、すぐに定員の20名になったそうです。案内を出してくださった犬山先生のブログを見て、日本からも「参加したいけど行けないので、報告を楽しみにしています」という声もあったそうです。それほどに、この『できる日本語』に関心を持ってくださっている先生がいるのかと思うと、私の緊張も高まりました。

午後2時、勉強会が始まりました。参加者はいろいろな大学や補修班(塾)で日本語教育に関わっている台湾人、日本人の先生方です。第一部では、私が『できる日本語』の特徴や構成、授業の流れを紹介しました。まず、お隣同士での簡単なワークからスタート。当初3分ぐらいですぐに切り上げる予定だったのが、先生方が熱心で、なかなか切り上げられないほどで、最初から熱気が感じられました。その後も参加者の先生方は深くうなずきながら、メモを取って聞いてくださっていました。今回はなんと「予習」もあり、参加者の先生方には事前に『できる日本語』のシラバスを見ていただきました。4課の「話してみよう」ではどんな問いかけが考えられるかを一緒に考えたり、「話読聞書」を実際に体験していただいたりしました。

第二部は、今、実際に教室で『できる日本語』を使ってくださっている山田先生のデモ授業。6課の話してみようのイラストを参加者の先生に見せながら、

「富士山に友達と行きたいですか?」

などと問いかけをしながら、話したくなる雰囲気を作ってくださっていました。引き続いて、6課のST1のチャレンジでは、いかに学習項目に学習者の注意をひきつけるか、実際に教室で教えていらっしゃる様子がとてもよくわかりました。

120分という時間があっという間に過ぎてしまいました。終わったあとも、いろいろな質問が続きました。「『話読聞書』をやっていて、学習者から使えた!という声があるんでしょうか」「どのくらいの進度で進めたらいいんですか」「副教材はどんなタイミングで使いますか」「会話の中に教師が説明しにくいようなフレーズって使われていますか」……

帰り道、私はとても幸せな気持ちでした。こうやって海を越えても、『できる日本語』を通じて多くの仲間と繋がれたからです。これから台湾での新しい日本語教育が楽しみです。皆さん!これからもよろしくお願いします。shashin4

 

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