2月22日の土曜日、清泉女子大学の学生さんを連れて、品川区上大崎にある「さぽうと21」をお訪ねしました。ここの活動は土曜日であるため、日本語教授法演習の中で見学授業をすることが叶わず、お休みに入ってから希望者を対象にした機関見学となりました。1979年に「インドシナ難民を助ける会」が相馬雪香氏の呼びかけで発足し(1984年に「難民を助ける会」に名称変更)、その姉妹団体として誕生した「社会福祉法人さぽうと21」が活動を始めて30年。高橋敬子事務局長、矢崎理恵コーディネーターが大学生のために、これまでの歴史・今の活動、抱える課題などについて丁寧に説明してくださいました。
■多様なボランティア、多様な活動
入り口を入ると、アチコチでペアになって学習支援が始まっていました。毎週土曜日10時~18時まで原則「個別・固定」という形を取り、1対1で支援を行っています(一部、漢字クラスなどグループでの活動もあります)。現在登録している学習者の方は約100人、そのうち9割がミャンマーの方となっています。そして、ボランティアさんの登録も100人ですが、土曜日実施ということもあり仕事を持っている方の参加が多いのが大きな特徴だそうです。そのお蔭で、それぞれご自分の専門を生かし、パソコン教室、食育ワークショップなど、多様な活動をすることができるのです。
入り口近くには、「カフェさぽうと21」がお店を開いていました。これは栄養士の資格を持つボランティアさんが、ミャンマーの難民の方と一緒に企画し運営しているものですが、コーヒー、ワッフルの美味しかったこと!
「個別・固定」で日本語支援 中には「グループ」で楽しそうに~~~
そして、教室の中央では、文化庁委託事業として「ニコニコニコ歯のワークショップ」が行われていました。まずは「むし歯クイズ」から始まり、ワイワイガヤガヤ……。これは「東京都歯科衛生士会」の多大なご協力によって生まれた歯育ワークショップです。実に多様な生活支援、学習支援が行われていたのが印象的でした。一緒に行った大学生は、「先生、すごく活気がありますね!すばらしい!」と驚きの声をあげていました。
「ニコニコニコ 歯のワークショップ」 「「歯育」は、クイズで楽しく!」
■日本社会で生きるということ
「3.11の時も、教室に来ている人の多くは、国に帰ることができない、ここに残るしか選択肢がない人達なんです」という矢崎理恵コーディネーターの言葉に、私は彼らの置かれている状況の大変さを改めて認識しました。ここで、矢崎さんが書かれた「言葉」をそのままご紹介したいと思います(「文部科学省『初等教育資料』「難民二世が日本社会の力に!」、2013年7月)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/shotou/detail/1341760.htm)
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「難民の方々にとって自国大使館は最後まで助けを求められない場であり、同国人との付き合いも自身に及ぶリスクを考えれば慎重にならざるをえません。「難民」に対する日本社会での理解も十分とは言い難く、表立って「顔」を出すこと、「声」をあげることの難しい彼らは、難民ゆえの「生きにくさ」を抱えています。
そうした状況にあればこそ、彼らはより切実に「日本社会の一員」として暮らしていくことを願っています。そして、子をもつ親は一様に、子どもの将来に期待を寄せ、教育の重要性を認識しながらも、自身で子どもの勉強をみてあげることのできないもどかしさを感じています」
■家族の中の課題をどう処理すればいいのか?
今「さぽうと21」には中学生、高校生などが大勢通ってきていますが、課題を考える際には、A.日本で生まれた子ども達、B.親の呼び寄せによって大きくなってから来た子ども達という2つのタイプに分けて考える必要があるようです。
Aでは、生活言語レベルでは問題がないため、あまり気づかないのですが中学に入ってから勉強に付いていけなくなるというケースが多々あります。また親との共通言語がないためコミュニケーションが十分に取れず、進学・進路の相談といった込み入った話が親とできないという深刻な問題が出てきます。また、将来を考えるにしてもロールモデルが親しかないという状況では、なかなか将来像が描けず、明るい希望を持つことが難しくなります。
Bでは、例えば15年も父親と離れて暮らしていた母子が「呼び寄せ」という形で日本にやってくると、どういう問題が出てくるでしょうか。親との共通言語はあり、コミュニケーション上は問題がないのですが、家族が増えた分さらに収入が必要となり、父親はこれまで以上に仕事に精を出し、母親も日本語が分からない中、生計を助けるためパートに力を注ぎます。せっかく夢に見た「家族一緒の生活」が始まったのに、共にいる時間は少なく、ほとんど触れ合えないということになってしまいます。また、母国で優秀だった中学生が、急に日本に来て「テストは零点」という状況に陥ったり、「ほしいものが買えない」「友だちがいない」「日本語ができない/勉強ができないことによるいじめ」といったことが待っているのです。
こうした課題に対して、彼らに寄り添い、心の声に耳を傾けながら、少しでも力になりたいと活動を続けている「さぽうと21」。学習支援室には、ボランティアと学習者の方の笑い声と笑顔が溢れ返っていました。では、もう一度「難民二世が日本社会の力に!」を引用して、終わりにしたいと思います。
「こうした様々な活動は90名近いボランティアによって見守られ、支えられています。そして、可能な限り、活動には「親子で」参加してもらいます。日々の生活に追われ、家族が共に過ごす時間が限られる家庭が多い中、親子が机を並べて勉強し、時に片寄せ合って活動に興じる学習支援室は、勉強だけではない多くを学ぶ場となっています。そこで生きる力を蓄えた子ども達は、将来必ずや日本社会の「大切な一人」となることを確信しています」
社会福祉法人「さぽうと21」http://support21.or.jp/
「矢崎さんの説明を真剣に聞く大学達」