「外国人とともに考える町づくり」(松戸国際交流協会)を終えて

挨拶をする松戸国際交流協会の星野室長

挨拶をする松戸国際交流協会の星野室長

9月28日(土)の午後、公益財団法人松戸国際交流協会の主催で、ユニークな日本語教育講演会が行われました。タイトルは、「外国人とともに考える町づくり~よりよい日本語学習支援をめざして~」です。この講演会は、講師に加え、お二人の外国人ゲストスピーカー、宋如芳さんと鈴木プレシーラさんによって進行されました。

宋さん:台湾出身。在日32年。現在まつど国際文化大使や中国語講師を務める。

プレシーラさん:フィリピン出身。在日9年。介護施設に勤務して4年目。日本語教室での学習経験者。

実は、最初にお話を頂いた時には、「どんな会にしたらいいのだろう?」とちょっぴり迷いました。しかし、「どうして日本語学習支援を考える時に、いつも当の学習者抜きで話し合われるのだろう」という疑問を常日頃抱いていた私は、「良い企画ですね。みんなで面白いものを作り上げましょう!」とすぐに前向きに・・・。そうして、国際交流協会の星野室長やコーディネーター役の真鍋昌子さんといろいろやり取りをして、当日を迎えました。

挨拶をする宋さん

挨拶をする宋さん

まずは、二人の自己紹介から始まりました。ここでは、レジュメに書かれている「ゲストからのひと言」をお伝えしたいと思います。

宋さん:日本で結婚後、「あなたはお料理が本当に上手ね。料理の仕事を続けなさい。子どもは見てあげるから」と地域の人に言われたことが心に響き、今でもその言葉が自分の生活の支えとなっています。私のボランティア活動の原点にあるのは、このような地域の人とのつながりと支え合うという気持ちです。

プレシーラさん:現在の施設では、私が初めての外国人介護職員です。最初は不安な気持ちでしたが、スタッフの皆さんの笑顔、優しさ、私のことを信頼してくれたお陰でここまで頑張って、いろいろなことを乗り越えてきました。今は皆さんと毎日楽しく仕事をやっています。介護の仕事をもっと学んで、より多くの方と絆を深めていきたいです。

挨拶をするプレシーラさん

挨拶をするプレシーラさん

お二人は、日本語支援に関して、次のように発言してくれました。

宋さん:一方通行じゃなくて、相手のことに興味を持って、互いに学び合うことが大切ですね。日本語教室もそうですけれど、教える側に、みんな熱がありすぎるのが問題ですね。

教える時、支援する時、もう少し引いて、冷静に。そうしたらもっと相手が、学習者が見えてくる。どうしてもここまでやらなきゃいけない、教えなきゃ、という気持ちが強くなりますね。もう少し余裕持って、いいんじゃないかな。

プレシーラさん:日本語教室に対して、私も2年間勉強しましたが、教科書で教えて頂いたんですが、そこだけでは覚えられません。やっぱり先生と生徒のコミュニケーション、教室だけじゃなく、外でもこれを使うよ、ということが大切。教室で本見ながら読んでるだけだと自然じゃないし、覚えられません。私は2年間も勉強したんですけど、プライベートで、生徒達と一緒に食事したりとか、花見行ったとか・・・そのおかげで自然に覚えました。やっぱりあまり固くしないほうがいいです。

宋さんは、「大勢の方々のお陰で、今日までやって来られました。そして、こんな表彰状をもらいました」と説明。なんと壁から額を外して持って来てくれたのです。

宋さんは、「大勢の方々のお陰で、今日までやって来られました。そして、こんな表彰状をもらいました」と説明。なんと壁から額を外して持って来てくれたのです。

こうした外国の方からの意見は、支援者の胸に響き、最後に参加者に聞いた「<気づき>ひと言メッセージ」では、こんな意見が出てきました。

・プレシーラさんの話を聞いて、ただ教室の中で日本語支援をするだけじゃなく、今度職場訪問もしていこうと思いました。これまでちょっと考えが狭かったですね。

・支援者が熱くなりすぎないことって、大切ですよね。どうしても熱くなってしまって・・・。

・自然な日本語、そして、こちらの聴く力が大切だと改めて思いました。これまでちゃんと学習者の「声」を聴いていたかどうか……。

・自分中心(支援者中心)というか、どうやって教科書の「今日の所」を早く終わらせるか、そういう事ばかり考えたことに気づきました。相手にとってどういうことやったら役に立つのかという原点に立ち戻ることができました。

ペアワークの後の「共有タイム」には、いろんな意見が飛び出しました

ペアワークの後の「共有タイム」には、いろんな意見が飛び出しました

・学習者が話したいという気持ちを引き出すために「どうして?」という質問をもっと投げかけていきたいと思いました。

・教室の中だけでなく、外との関わり、「学習者と支援者」という関係ではなく、「人と人との関係」を大切にしたいと思いました。

私もいろいろな事例を出しながら、最後にこんなメッセージをお伝えしました。

<学習者に対して>
・学習者の「持っている力」を引き出す
・学習者の「やる気」を引き出す
・学習者の「達成感」を大切にする

l講演会の司会は、中国から来た李さんです(国際交流協会職員)

l講演会の司会は、中国から来た李さんです(国際交流協会職員)

<自分自身に対して>
・「聴く力」を養う
・自らのコミュニケーション力を養う
・自ら学び続けることを大切にする

でも、きっと参加した方々が振り返る際に一番力になったのは、宋さんやプレシーラさんの経験に基づく率直な意見だと思います。「生の声」ほどインパクトの強いものはありません。これからも各地で、こんなスタイルの講演会が増えていることを願ってやみません。

♪   ♪   ♪

【講演会後、プレシーラさんとちょっとやり取り】
嶋田:ご家族は介護施設で働くことに反対はありませんでしたか?

プレシーラ:前はある工場で働いていました。でも、その時は日本語教室に入ったばかりで、うまく日本語が聞き取れなかったんです。でも、義理のお母さんは「じゃあ、一緒に行きましょう」と言ってくれて、一緒に面接に行きました。勤め始めてからも、分からない漢字とか文とか、お母さんに聞いて勉強しています。だから、今度の介護施設で働くことに全然反対はありませんでした。応援してくれています。

嶋田:どうして介護施設で仕事をしたいと思ったんですか?

プレシーラ:義理のお母さんは、私にとって一番大きい存在、一番支えている人、主人より私を支えてくれる人。その優しさと笑顔と、両手で外人でもどうぞ、娘みたいな扱いです。その優しさにどうやって返せばいいか、お金じゃなく、プレゼントじゃなく・・・。だから、お母さん病気なったら、心から介護します。約束します。それで、介護施設で働くことは役に立ちます。

プレシーラさんがこんなに楽しそうに働いている介護施設に一度お邪魔したいと思いました。来月には是非コーディネーターの真鍋さんとご一緒に~~~。今回の出会いがまた「新たな素敵な出会い」に発展していくことでしょう。

【宋さんが持って来てくれた表彰状を見ると・・・】
あなたは国際結婚家庭として、文化や言語の違いを越えて円満な家庭を築くとともに、日本とアジアの相互理解と文化交流の為に多大な貢献をして来られました。その功績を称え、ここに表彰します。

宋さん、プレシーラさん、司会の李さん、コーディネーターの真鍋さんと記念撮影2013.9.28

宋さん、プレシーラさん、司会の李さん、コーディネーターの真鍋さんと記念撮影2013.9.28

 

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