アクラス研修「『チュウ太の虎の巻』~介護・看護の日本語における「チュウ太」のおいしい使い方』のご報告

「チュウ太」について語る川村よし子さん

「チュウ太」について語る川村よし子さん

4月13日のアクラス研修<著者との対話>は、「チュウ太の母」川村よし子さんによる「介護・看護の日本語における「チュウ太」のおいしい使い方」でした。「リーディング・チュウ太」が誕生したのは1999年、日本語教育現場では、読解学習においていろいろな形で「リーディング・チュウ太」を活用してきました。何よりも無償であること、学習者にとって使いやすさを追求したソフトであることが、最大の魅力でした。

研修では、全国さまざまな所から見えた参加者の方々が、川村よし子さんの理路整然とした、テンポの良い、楽しく有意義なお話に引き込まれ、あっと言う間に2時間が過ぎてしまいました(わざわざ博多、名古屋、栃木等、遠方から見えた方もいらっしゃいました)。今回は介護の日本語に特化したお話でしたが、日本語教育における語彙の学び方・漢字の学び方という意味でも、実に示唆に富んだお話が続きました。また、インドネシアから来た看護師候補生の方も参加してくださり、学習者の生の声を聞くことができ、とても充実した研修となりました。

■EPA介護福祉士候補生のサポートをしたい!

『チュウ太の虎の巻』

『チュウ太の虎の巻』

「リーディング・チュウ太」にやがて「チュウ太のWEB辞書」が搭載され、2011年には、そのWEB辞書に「介護福祉士をめざす外国人候補者のための「ミニ辞書」」が搭載されました。インドネシア、フィリピンといった非漢字圏の候補者にとって、難しい介護関連の語彙を学ぶことは大変なこと。しかも3年間実務を積んだのち、日本語で国家試験を受け、それに合格しなければなりません。そこで、「チュウ太の母」は、「短い期間で完成させ、できるだけ早く学習者が手に取ることができるようにすること」「できるだけ効率よく語彙を学べるようにすること」をモットーに、「ミニ辞書」作りを始めたのです。

■「介護単語808」で、効率良く国家試験対策を!

ちょっと皆で考えてみましょう

ちょっと皆で考えてみましょう

膨大な漢字をただ覚え続けたのでは、時間的にも無理な話。候補生は、施設や病院で仕事をしながら、国家試験の勉強をしなければなりません。できるだけ効率よく覚えることが大切です。そこで、「チュウ太の母」は、「リーディング チュウ太」の語彙チェッカーを使って語彙調査をし、「介護単語808」を作り上げたのです。これは、全16回の国家試験問題を分析し、16回以上使われていた語(1,146語)から初級以外の語をのぞいた語=808語という結果をもとに生まれました。

■「漢字の学び方」が大切!

今回は、介護の日本語関連でしたが、「漢字を学習者が自律的に学ぶにはどうしたらいいのか」という課題は、全てに通じること。川村さんは「学習者が漢字の意味を考える力を養うことが大切なんです」と、介護漢字から例をあげて説明してくださいました。

例:「定=決める」=<定+□ =何を…する、what>  <□+定=どう…する、how>

定年 → 会社などをやめることになっている年齢        定期 → 決まった期間

測定 → 測って決める                 設定 → 置いて決める

真剣に話を聞く参加者

真剣に話を聞く参加者

さらに、動詞性の漢字、名詞性の漢字、形容詞・副詞性の漢字の規則性などについても、説明がありました。参加者からは、「<「チュウ太」を活用した「漢字のおいしい学び方」>について、是非もう一度研修をお願いします!」という次の研修へのリクエストが飛び出しました。終了後は、いつもの「ターブル・ド・ペール」に繰り出し、おおいに飲み、食べ、おしゃべりを愉しみました。

◆詳しい内容は、当日配布されたレジュメ、『チュウ太の虎の巻』をご覧ください。  http://www.9640.jp/xoops/modules/bmc/detail.php?book_id=6064&prev=new

レジュメ:   アクラス研修レジュメ(著者:川村よし子)

1.介護関連辞書の整備
2.『チュウ太のWeb辞書』
3.国家試験のための語彙リストの作成
4.自律学習を支援する副教材の作成
5.使用語彙を制限した国家試験のための『学習ワークブック』の作成

■参加者からの要望

話をする看護師候補生のオクトラさん

話をする看護師候補生のオクトラさん

参加者からたくさんの意見・要望が出されました。介護の日本語に急に携わるようになった方、周りに仲間がいないため「どうやって進めていったらいいのか」相談する人がない方………。これからはネットワーク作り、さらなる情報発信が喫緊の課題だと改めて感じました。いくつか皆さんから出た要望などを載せておきたいと思います。

◇『チュウ太のWEB辞書』は知っていても、なかなか使いこなせていない。ぜひこうした研修会をアチコチで実施して頂きたい。

◇まだまだこうしたツールがあることを知らない学習者が多いのではないか。もっともっと発信していってほしい。また、教師向けだけではなく、学習者対象の研修会などがあると、もっと広がっていくのではないか。

◇静岡県が作成した「介護福祉士になるための教科書(5分冊)」(川村先生が監修・編集)を入手したいが、難しい状況。希望するEPA候補生に対して無料配布されているとのことだが、これから介護の日本語教育に携わろうとする支援者にも是非分けて頂きたい。無料配布を続けるのが難しいのであれば、市販の形を取ってはどうか。「非常に分かりやすい素晴らしい教材」と評価が高いだけに、簡単に手に入らないのが残念。

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