西宮にスタジオがある「さくらFM」の「SakuっとLa・ら・Ra西宮」という番組で、月曜日(10時~13時)にパーソナリティを務めるのは、近藤冨士雄さんです。その番組の中には、<日本語教育コーナー>が設けられ、「日本語教師名鑑」(教師が出演)と、「らじおdeエキスポ」(学習者が出演)の2つのプログラムが交互に放送されています。
実は、近藤さんは、NHKを退職したのち、独学で日本語教育能力試験に合格され、今では、フリーアナウンサーとしてのお仕事と、日本語教師としてのお仕事を両立されているのです。こうしてラジオを通して、日本語教育を世界に広めていけることは、すばらしいことだと思います。
参考:日本語教師プロファイル近藤冨士雄さん
―アナウンサー×日本語教師として(「日本語ジャーナル」
https://nj.alc-nihongo.jp/entry/20210418-nihongo-kyoushi9
「らじおdeエキスポ~コロナが落ち着いたら遊びに来て大作戦~」というのは、海外の日本語学習者が、「自分の街の見どころ・魅力など」を日本語で案内・紹介し、「コロナが収束したら、日本から遊びに来てください!」という思いを込めて語るコーナーです。そして、9月27日の「らじおdeエキスポ第3回」には、イーストウエスト日本語学校(以下、EW)の姜ヌリさんが登場しました。
放送を聞いた私は、「ぜひヌリさんに会いたい」と思い、ZOOMでおしゃべりをすることにしました。ずっとオンライン授業で日本語の授業を受けているヌリさんですが、その学ぶ姿勢は、実に前向き!ちょっと紹介したいと考えました。
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まずは、ヌリさんのソウル紹介を、お聞きください。
「らじおdeエキスポ」(カン・ヌリさん2021.9.27)
■将来の夢は、日本で「韓国語教師」として仕事をすること
2021年4月にEWに入学したヌリさんは、ずっとソウルからオンラインでの参加です。ヌリさんは、大学では中国学を専攻し、卒業後は台湾に留学して大学院修士を終えました。その大学には、さまざまな言語を学ぶコースがあったことから、韓国語のアシスタントティーチャーを務めることもありました。そんなことから、卒業後は、台湾で「韓国語教師の道」を歩むことになったのです。
とても楽しい毎日でしたが、いろいろ考え、ソウルに戻りました。そして、今度は日本留学を考えるようになりました。それは、将来日本で「韓国語教師」として、生活したいと考えたからでした。しかし、日本語学習は、高校時代に第二外国語として学んだことがある程度でした(週に1時間)。、それ以来はずっと中国語にのめり込んでいたヌリさんでした。
しかし、日本に留学をすると決めてから、独学でひたすら日本語を学び、映画を見たり、音楽を聴いたりしながら、楽しく、効果的に学び続けました。また、大学時代から中国語を徹底して勉強していたことも、大きくプラスになりました。同じ漢字圏文化にある日本語の学習は、難しいとは思わなかったそうです。こうして、2021年4月には、コロナは収まっているだろうという思いで、日本に行ける日を待っていたのですが・・・。
■オンラインでも、どんどん交流会に参加!
結局、いまだ日本に入国できないでいるヌリさんですが、「人との出会いが大好き」とオンライン交流会を楽しんでいます。EWでは、さまざまなオンラインでの交流会を実施しています。たとえば、毎週火曜日には、ボランティア団体「風の会」が主催する「日本語サロン」があります。これは、もう20年近く続いているボランティア活動ですが、コロナ禍になるといち早くオンラインに切り替えました。未入国の学生さんにも、一般の日本人と触れ合える貴重な機
会だとして好評です。
また、大学生連合団体がEWの留学生のために実施している「おしゃべりの会」もあります。留学生と年が近い大学生とのおしゃべりは、未入国の学生さんにとって、楽しいひと時です。日本に来た時には、「あっ、あの時の〇〇さん!」と、会える喜びもひとしおです。さらに、日本語学校がお休みの期間には、EWの先生方との「おしゃべりの会」も開催されています。
コロナ禍でも、もちろん対面での小学校での交流授業など、さまざまな地域社会でのイベントもありますが、残念ながら未入国の学生さんは、参加することができません。ヌリさんは、「とにかく今できることを精一杯楽しもう!4時間のオンライン授業だけではなく、オンライン交流会に参加しよう」と、努力してきました。それが、ヌリさんのオンライン留学生活をより楽しく、意味のあるものにしてくれているのでしょう。今回の「らじおdeエキスポ」にも、先生から話を聞いたとたん、「あっ、やってみたいです」と答え、準備を始めたそうです。ヌリさんの語りをお聞きください。
ちょっと心配もあるんですけど、嬉しかったです。新しい経験をすることができる
とので。自分だけで勉強していたら、こんなチャンスはなかったです。だから、ち
ょっと恥ずかしいですけど……。そして、あとでまた聞いたら、ああ今は日本語よ
くなったね、と知ることができるので、いいチャンスだと思いました。
■「同じ教室にいる」と錯覚しそうな存在感
ヌリさんのクラスを担当した伊瀬知先生は、こんなことを語ってくれました。
ヌリさんのクラスは、12人が教室で対面授業、ヌリさんとAさんの2人だけが
オンライン授業でした。でも、不思議なんですよね。ヌリさんは、まるで同じ空
間に居るかのような、教室で授業を受けているような雰囲気で参加しているんです。
ついオンライン参加であることを忘れてしまいそうな感じです。
この間も、こんなことがありました。自己紹介といったものをするワークがあった
んです。その時、Aさんが「自分の長所とか短所と言われても、思いつかないし……」
と言ったとたん、ヌリさんは、「Aさん、ほら、この間、先生に<マイペースですね>
って、言われたでしょ。それがいいんじゃない?」と、声をかけたんですよ。それを
聞いて、Aさんは、「あ、そうか!」と、どんどん話を始めました。
人とのつながりを大切にし、人との出会いを楽しんでいるヌリさんは、オンラインでも対面と同じように、留学生活を楽しんでいます。もちろん一刻も早く入国したいのは、山々ですが~~~。きっとこんな気持ちになれるのは、クラスメートや先生方のチームワークの良さが大きく影響しているのでしょう。
■『できる日本語中級』19課「科学の力」でのこと
ちょっとここで、『できる日本語中級』での学びについて、お伝えしたいと思います。
この課の行動目標は、以下のとおりです。
科学技術に関する話題に触れ、科学の力が社会でどのような役割を果たしているか
を考え、問題意識を持つことができる。
ヌリさんのクラスでは、担当の先生方が相談をして、次のように考えました。
*18課でしっかり発表をしたので、19課はちょっと変えてみよう。学生さん達がみんなでテーマを決め、グループに分かれる。そこで、話し合って資料を作り、それをもとに質問をし合うというのがいいのではないか。
*この課では、「みんなで作った資料」を残しておくことを大切にしよう。
科学に苦手意識を持つ人には、「生活の中にある≪科学≫」を見つけてみよう」と問いかけ、それぞれが考え、テーマをどんどん挙げていきました。その中から以下の4つに絞られました。
① 音声アシスタントの行方 ②火薬
③ 飛行機はなぜ飛ぶのか? ④医療に活用されるAR・VR
ヌリさんのグループは、<対面2人、オンライン2人>で、①を調べ、資料を作りました。作業の役割分担、何を書くか、どう書くか、誰がどこを書くか等々、すべてハイブリッドで、学生同士で話し合い、進めていきました。オンラインでも、ハイブリッドでも、どんなレベルでも、教師と学習者が同じ方向を向き、「深い学び」を求めていけば、さまざまなことが可能になることを、改めて教えてくれたヌリさんとの「対話タイム」でした。
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ヌリさんとの楽しい「ZOOMおしゃべりタイム」は、あっという間に時間が過ぎていきました。ヌリさんが日本に入国できるのは、いつのことになるでしょうか。EWで会った時には、あれも話したい!これも話したい!と夢が膨らむ一方です。
※このグループからは、名前入りでの掲載許可をもらっています。