明治大学山脇ゼミ主催「中野区長&外国人住民『コロナから考える緊急時の外国人住民への対応』

山脇ゼミが中野区長と外国人住民の懇談会を初めて開いたのは2014年12月、今回で6回目となります。昨年は、明治大学にて行われましたが、今年はコロナ禍により、急遽オンラインでの実施となりました。

 

参考:2019年7月3日実施の第5回の記事

       「山脇ゼミ&中野区主催『中野区長との懇談会』に参加して」

          http://www.acras.jp/?p=8737

 

区長との懇談会に参加する外国人住民は、韓国2名、中国2名、米国1名、シリア1名の6名、それに日本人住民を加えた2名、そして酒井区長とモデレーターの山脇教授の10名で懇談会は進められました(イーストウエスト日本語学校からは、中国出身のチョウ・シンメイさんと、韓国出身のウ・スビンさんの2名の留学生が参加しました)。参加者は、山脇ゼミ生も加えると、総勢90人でのZOOM懇談会となりました。

 

 

■中野区の外国人住民の割合

中野区は、5年間で外国人住民が1万人から2万人へと増加、増加率でみると東京都で1位となります。現在は、以下のような数字になっています。

 

2020年  中野区住民     外国人住民    外国人住民の割合

335,234人  2,095人       6%

 

出身国地域は、以下のとおりです。

1位 中国  2位 韓国  3位 ベトナム  4位 ネパール  5位 台湾

 

こうした状況下、明治大学の学生さん達が外国人にネット上でアンケートを実施、その結果「病院、お金関係、避難場所、悩み相談をする場所」などに関する情報が不足していることが分かりました。

そこで、今回のテーマは以下のようなことを中心に進められました。

 

・災害などの緊急時に外国人住民が困ること

・コロナウイルスの影響で浮き上がってきた問題点

・2万人の外国人住民を抱える中野区ができること

 

■コロナ禍の不安と情報入手の難しさ

まずは、コロナ禍に関連した話から始まりました。「感染したかどうか不安だったか」という質問に対しては、4人の人が手をあげました。

・喘息持ちで咳が止まらない時期があった。1週間バイトを休んだ。

・アレルギーがある。咳が出たとき、これはアレルギーではないかもしれない、と不安になった。

・とにかく心配で家にいた。

・国内旅行した家族が帰宅後咳がひどくなった。情報があまりないので心配した。

 

こうした心配を払拭するには、身近にすぐに入る情報が少なかったことが指摘されました。特に最初の頃は、どうやって情報を取っていいかわからないので、母国のニュース、中国のニュースを手掛かりにしたという声も聞かれました。

 

また「緊急事態宣言の解除」が5月25日に行われましたが、周りの友人たちは「すぐに知った」のではなく、当初予定されていた31日までだと思っていた人もいたのだそうです。このように外国人住民には、必要な情報がうまく届かないことが分かりました。

 

ただ、日本語学校に通う学生達は、毎日オンライン授業があり、授業以外にもラインなどを通じた頻繁なやり取りがあることから、教師を通じて最新情報を得ていることが確認されました。「緊急事態宣言は、国、東京都の動きなので、区としては情報を流していない」という区長の発言がありましたが、そうした中、日本語学校は、留学生にとって重要な情報源になっていると言えます。

 

 

■特別給付金などの手続き上の課題

特別給付金に関しては、さまざまな意見が出されました。

 

・オンラインの場合、なぜマイナンバーカードでなければいけないのか。

運転免許証など本人確認できるほかの手段も使わなかったのか。

外国人の場合でも、在留カード、パスポートがある。

・韓国では、なんでもオンラインでできる。

・母親が世帯主だが、日本語ができない。よって代理人として自分が書いて

申請したが、「それでよかったのか」と不安だった。

特別給付金によって、日本のオンライン化の遅れの実態が白日の下に晒されることになりました。日本における「中途半端なオンライン化」がトラブルの元となっていると言えます。

 

次に、病気のことが取り上げられ、続いて国民健康保険の変更手続きの大変さについて語られました。自分が「会社員から主婦」になった時、区役所に相談に行ったけれど、十分な情報が得られなかったのだそうです。こうした時に、「やさしい日本語」で書かれたものが必要であるという意見が出されました。

 

 

■「やさしい日本語」とTOCOS(東京都外国人新型コロナ生活相談センター)

「やさしい日本語」による情報に関しては、山脇ゼミでは外国人のためのさまざまな動画を作成しています。作成にかかわった山脇ゼミ生は、「やさしい日本語にすることは大切ですが、細かいニュアンスだったり、行政の用語は難しい面があります」と、その苦労について語っていました。

 

コロナ対応として、東京都ではTOCOSが作られています。都のサイトから引用したいと思います。

 

  1. TOCOSにお電話をいただくと、まず相談員がやさしい日本語で対応し、希望する言語をお伺いします。
  2. 希望言語の相談員に電話をおつなぎします。希望言語によりお伺いした相談内容に応じて、必要な情報をご提供します。
  3. 2の相談対応のうち、必要に応じて、お住いの区市町村や保健所、労働相談センターなどの各専門相談窓口におつなぎする場合があります。引継ぎ先の機関が言語面で対応できない場合には、TOCOSが三者間通話等による通訳を行い、サポートします。

 

しかし、TOCOSについて知っている外国人住民は多くはないということが分かりました。まずは、より多くの外国人住民に知ってもらう努力が求められているのではないでしょうか。

 

参考:山脇ゼミの「やさしい日本語」動画

◆「コロナで困った時は? 1 生活編」

https://youtu.be/zLdd5FCr1Cc

 

◆「コロナで困った時は? 2 仕事編」

https://youtu.be/hlJYm-uTA-4

 

◆「どどどで学ぶ1 生活福祉資金」

https://youtu.be/uIPPXcH9qyE

 

◆「どどどで学ぶ2 住居確保給付金」

https://youtu.be/b7AJhHyYBKQ

 

■今後のアーティキュレーション(連関・連動)の可能性

それぞれ外国人住民の声を聞く機会としては良かったと思いますが、できれば、そうした経験談をさらに深めていけたら、より良いものになるのではないでしょうか。

 

・こうした課題に、どのように取り組めばよいのか。

・外国人住民の視点で見ると、日本社会にはどのような配慮が足りないのか。

 

もちろん懇談会全体で90分という限られた時間であることから、それが難しいということはよく分かります。それを考えると、今後は、大学と日本語学校との教育上のアーティキュレーションが求められるのではないでしょうか。

 

日本語学校では大勢の外国人が学んでいます。初中級の終盤ともなると、

 

・コロナウイルスが留学生活に与えた影響

・2020 留学生活と10万円について

 

などのテーマで、周りの外国人を対象にアンケートを実施し、それをまとめてグラフを作成し発表したりしています。こうした「学び」を軸に、地域社会とも連携することによって、日本人学生にとっても、日本語学校の留学生にとっても、深い学びにつながるのだと思います。中野区におけるさまざまな「つながり」に期待したいものです。

(※「初中級」とは、いわゆる初級後半を指します)

追記:明治大学のサイトに記事が掲載されました(2020.7.10)

https://www.meiji.ac.jp/nippon/info/2020/6t5h7p000034ghqw.html?fbclid=IwAR0w9qWCijhqJLkuYcrG0mCQFraZ76yeoph9OOio23n6JtPG5coQVqf5kbc

区長との懇談会2020.7.1※写真は、山脇さんが送ってくださいました。

 

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