10月25日、栃木県国際交流協会主催の「日本語ボランティア情報交換会」がありました。午前中は、「ボランティア日本語教室の事例発表」、そして午後は、「学びたくなる教室をめざして」というタイトルでワークショップを実施しました。
事例発表会で発表してくださったのは「にほんごFriendly Class(以下、FC)」の柿沼さんと青木さん、そして10年前にFCで日本語を学んでいたというベトナム出身のハンさんのお三方でした。いろいろな活動について話してくださいましたが、その中で、「技能実習生がベトナムに帰った後も交流が続き、それが『ベトナムの子ども達に「日本の文房具」を持っていく活動』に発展し、何と7年間も続けられていることに感銘を受けました。
■ベトナムの留学生から聞いた話が心に残り……
もう何年も前のことになりますが、宇都宮大学に留学生として来ていたベトナム出身の女子学生に出会ったことが、「ベトナムに文房具を持って行く活動」のきっかけになったと、柿沼さんは語ってくださいました。留学生の論文のテーマは「技能実習生と日本語教育」ということでいろいろ話が弾み、さらには留学生からベトナムでの生活についてさまざまなことを聞かせてもらいました。電気のない生活、彼女を日本に留学させるために大切な水牛を売って留学準備をしてくれたご両
親……。柿沼さんにとっては、初めて耳にする話ばかりで、深く心に残ったと言います。
そして、このとき柿沼さんは、ともにFCを運営している青木さんが、以前カンボジアに旅行したときの話を思い出しました。実は、青木さんは、ずっと以前カンボジア旅行の際に、「せっかくだったら文房具を持っていくといいですよ。あちらでは、ちょっとした物でも、とても喜ばれますよ」という通訳のアドバイスを受け、いろいろな文房具を持って出かけて行ったのです。現地では、「ただ誰かに託すのではなく、小学校に行って、直接子どもさんに渡したらどうですか」ということで、山奥の学校に出かけて行きました。「そうだ! 私たちも自分達で小学校を訪れて、交流しながら手渡そう!」と、すぐに二人の気持ちは固まりました。
■教室で学んだ元技能実習生との交流を通して……
FCでは、外国にルーツのある子ども達、技能実習生、ビジネスパーソン、定住外国人配偶者など、さまざまな人に日本語支援を行っています。その中で、特に多いのが技能実習生だそうです。現在も、ベトナムからの技能実習生が40人以上参加しており、約7割を占めています。こうしたことから、この活動でも帰国した元技能実習生が、現地でいろいろサポートしてくれます。日本で一緒に日本語、日本文化、町のイベントなどを楽しんだ柿沼さん達が、自分達の国を訪問し、小学生のために学校を訪問し、日本の文房具を届けてくださる……と、みんなは大張り切りです。
ベトナムは社会主義体制であることから、勝手に小学校に出かけていって、何か物資を子ども達に上げることなどは許されていません。小学校を訪問するには、さまざまな許可や手続きが必要です。でも、めんどうな手続きやバスの手配などは、鹿沼市で技能実習生として働いてベトナムに帰った元実習生がやってくれるので大助かり!彼らにとっても、日本で生活した日々を思い出しながら、懐かしい人たちと語り合えるのは、とても楽しい時間です。
■地域社会の協力を得て、たくさんの物資が集まり……
たくさんの物資をベトナムの少数民族の学校に通う子ども達のために持っていきますが、品物を集めるのは、鹿沼市国際交流協会をはじめ、さまざまな方の協力があるのだそうです。
今年も、文房具、ボール、ぬいぐるみ、子ども服、タオル、せっけん……とさまざまな物が集まり、段ボールにして11個分を持って行くことになりました。今年は社会福祉協議会を通して、那須の中学生グループから、もう使わなくなった文房具が温かい手紙を添えて届きました。
いざ支援物資を運ぶとなるとかなりの送料がかかります。そこで、一緒に活動したい人の参加を募り、それぞれが預け荷物一人40㎏のうち20㎏を物資に充てるという方法を取っているのだそうです。毎年10人前後の参加があり、150~200㎏の物資を運んでいますが、こうした仲間を募るために始めたのが、鹿沼市のマイカレッジ講座「知ってから旅するベトナム北部」です。お二人の行動力、アイディア、そして継続性には感心するばかりです。
さて、物資はどんどん集まり、持っていけないほど物資が集まることがありますが、その時は、鹿沼市国際交流協会にお願いして、ベトナムには持って行けないものを「300円以下の値段」で売り、その益金の一部を寄付してもらっているのだそうです。こうしてさまざまな人々の理解と協力によって、この「ベトナムに文房具を持っていく活動」は続いており、2013年から始まった活動は、今年で7回目となります。
■現地では、小学生と一緒に交流しながら……
たくさんの物資を持ってベトナムに到着すると、ベトナムで仕事をしている元技能実習生たちが駆け付けてくれます。以前FCに通っていた懐かしい人たちと会えるのも、「ベトナムに文房具を持っていく活動」の楽しみの一つです。写真に写っている子ども達との出会いは、2年前に、ラオスとの国境に近いベトナム中部の山間部にある小学校に行ったときのものです。なんと、山奥の2つの小学校からは、麓の小学校まで歩いて出迎えてくれました。
笑顔いっぱいの子ども達を見ると、これまでの物資集め、資金集め、そして日本からの長旅もすべて忘れてしまいます。でも、子ども達の足元を見ると、靴を履いていない子ども達もいます。そして、今回は3年間鹿沼市で実習生として働いて3月に帰国したばかりのトゥーさんの協力で、すべてをスムーズに運ぶことができました。バスやホテルの手配、物資の調達や許可申請、そして通訳にと大活躍でした。
最後に、今年出発前に、FBに記されたお二人の文章を紹介します。
ここまで続いたのは、みなさんのお蔭です。物資を寄付してくださった方、一緒にベトナムに行ってくださった方、現地で通訳してくれた帰国した実習生、物資の取り次ぎをしてくださった鹿沼市国際交流協会の皆さん、すべての方に感謝しつつ今年も10月に行ってきます。
今回、那須の中学校からたくさんの文具の寄付がありました。きちんと書かれたお手紙に感動です。
ベトナムと私たちをつなげているのは、ひとつの縁です。大げさですが、こんなに広い世界の中で出会ったことは何かの縁です。よかったです!
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2日前にベトナムから帰ったばかりのお二人でしたが、心は既に「来年の活動」です。こうして、ただ日本語教室を主宰するだけではなく、出会った技能実習生が帰国した後も、ずっとその絆を大切にし、ベトナムでのさらなる「出会い」を大切にしている……本当に素晴らしいと思いました。
最近、何かと負のイメージで語られることが多い「技能実習制度」ですが、多くの技能実習生は、日本で3年間仕事をし、たくさんの日本人と出会い、帰国後は、自分の新たな人生を切り拓いていっているのです。そんなことを伝えたいと思い、「にほんごFriendly Class」の活動を紹介しました。
「にほんご Friendly Class」