<『できる日本語』を使っている先生・学校の声④>虞安寿美さん(中国文化大学 社会人生涯学習センター:台湾)

台湾の中国文化大学で『できる日本語』を使って教えていらっしゃる虞さんから「声」が届きました。

海外でどのように使っていらっしゃるかがよく分かるすてきなレポートです。どうぞお読みください。

 

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<『できる日本語』を使っている先生・学校の声④>

(2017.10.17掲載)

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いろんな意味で私を唸らせる『できる日本語』

                  (台湾)中国文化大学 社会人生涯学習センター

                              兼任講師 虞 安寿美

 

私が『できる日本語』と出会ったのは、今から3年前の2014年でした。たった3年ですが、『できる日本語』を通して、学習者にも私にもすばらしい変化が起こっているように思います。自画自賛ですみません。

 

■学習者を掴んで離さない『できる日本語』

ほかの教科書で初中級レベルを勉強していたときです。私は消化不良を起こし始めていることに気づいていましたが、うまく対応できないでいました。ある日、学習者が「先生、いっぱい文法出てきたけど、どうしたらいいかわからない」と口々に話し始めました。そんな中、『できる日本語』で勉強したことのある学習者が「『できる日本語』っていう本は、文法を使う場面とか状況がよくわかる。だから、次の学期は『できる日本語』で勉強しよう」とみんなを説得し始めました。

また、主婦が多いクラスでは、『みんなの日本語』の第25課が終わった後でしたので、教科書を『できる日本語<初中級>』に変更して勉強しました。それまで大変静かなクラスでしたが、初中級の第2課くらいから雰囲気が大きく変わりました。第2課終了後、日本へ旅行した学習者がいたのですが、彼女は旅行から戻ってきて開口一番、「みんな!この本、すごいよ!!」と興奮気味に旅行の報告を始めました。彼女は教科書持参で旅行に行き、習ったフレーズを実際に使ってみたら、いつもより何倍も買い物が楽しめたそうです。その後も、第8課を勉強したときには、私が提案するより先に、日本でお世話になった人へお礼の手紙を書いていました。

社会人学習者は受動的になっていることが多いように思いますが、『できる日本語』を使うと自然に能動的になって、習得の様子や継続率も全然違うように思います。

 

■「文法理解」から「プロフィシェンシー」へ

さて、ここからは、私に起こっている変化についてお話ししたいと思います。

台湾は親日家が多く、日本文化や日本語への興味も高いです。日本統治時代の影響で、台湾語になった日本語もあります。日本を身近に感じられる環境ですが、学習者が学習を継続できる環境づくりに関して、特に努力しなければならないと最近思うようになりました。

学習者の興味は「旅行」「買い物」「ドラマ」「(言語学習が)趣味」などです。社会人学習者は週に1〜2回、働きながらあるいは子育てをしながら日本語を学んでいます。周りに溢れることばは中国語・台湾語。日本語を意識するのは、授業のときか宿題をするときだけになりがちです。そのため、学習意欲を持続させるのが難しくなります。

また、「やってみよう」「できる」などでも、学習者が場面を「教科書の中だけ」と思ってしまうようで、今ひとつ盛り上がりません。私はよく「旅行で」「日本人観光客をサポートしよう」と言って挑戦してもらいますが、このおまじないもそう長くは効きません。日本では外国人と見たらすぐに外国語で対応してくれるし、日本人観光客も学習者もガイドブックやインターネットの情報を参考にして旅行するので、よほどのトラブルでも起こらない限り、日本語を使うチャンスがないからです。私は次第に、「日本だったら、教室にいろいろな国の人がいて、日本語を共通語して必然的に話すんだろうな」「日本にいたら、台湾のことや自分のことをもっと話したくなるんだろうな」と、日本の学習環境をうらやむようになりました。初級、初中級、中級と進むにつれて、その思いは強くなりました。

この気持ちは一見ネガティブですが、私に大きな変化があった現れだと思います。『できる日本語』に出会う前の私は、導入と文法練習について考えることに時間を費やし、教える側のアウトプットにばかり気が取られて、学習者が実際に使いたくなるような工夫ができていませんでした。しかし『できる日本語』の授業では、導入や練習は教科書という強い味方がいますから、私は自然と「やってみよう」や「できる」に意識が向き、学習者側からアウトプットを引き出せないことが悩みになっていたのです。つまり、プロフィシェンシーを考え、「コミュニケーション力を高める」授業に変えようとしているということではないでしょうか。

 

■つなげる『できる日本語』

もう一つの変化は、『できる日本語』の目標でもあり、嶋田先生がおっしゃっている「つながる」についてです。IMG_3977

私はつい最近まで、「地域とつながる」「日本人とつながる」ことばかり考えていました。この凝り固まった考えをほぐしてくださったのが、『できる日本語』の経験豊富な同僚の先生です。私が勤務している学校では、50音クラスから持ち上がりでクラスを担当し、教師間での情報交換などがほとんどありません。ところが、お互いに学習者の様子を報告しあい、台湾でもできる活動を一緒に考えるうちに、「教師のつながり」「クラスのつながり」に私もワクワクしてきました。そして、2017年8月に台湾で開催されたOPIシンポジウムに向け、台湾の銘伝大学の先生と同僚の先生と共同で、シンポジウムに参加される先生方に対して、学習者が淡水を案内するプロジェクトを企画しました。このプロジェクトには大学の日本語科の学生3名と社会人学習者6名が参加し、「学校や年代を超えてつながる」が実現しました。

今、私の頭の中に、壮大な「つながる」構想が生まれつつあります。この教科書にはいろいろな「お話しの種」があ3るのに、私はこれまで「台湾で勉強しているから」と、一人外交をしようとしていました。教室に台湾人しかいなくても、インターネットを使えば、世界中のいろいろな国の人とつながることができます。この便利な道具を利用して、これからは、ご近所さんから世界まで視野に入れて「日本語でつながる」をめざしたいと思います。

 

 

最後に、『できる日本語』の私がいちばん気に入っているところを紹介させてください。それは、初中級の第14課です。いろいろな日本語教材がありますが、「七五三」が取り上げられている教科書は見たことがありません。最初は「なんてマニアックな!」と思いましたが、「七五三」の由来がこの課で習う「〜と言われている」の用法と見事に合っていて、「なるほどー!」と唸ってしまいました。『できる日本語』は本当に奥深い本ですね。もっともっと読み込んで、私も学習者ももっとワクワク勉強できるような環境づくりをしたいと思います。

PDF →『できる日本語』の声④(虞安寿美さん)2017.10.17

11回OPIポスター

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