「人をつくり文化をつなぐ俳句の魅力」<日本語教育学会秋季特別プログラム(プレイベント)>

10月8日(土)、9日(日)に松山で日本語教育学会の秋季大会が行われました。今回もパネルディスカッション、口頭発表、ポスター発表などさまざまな形態の発表があり、大いに会場は盛り上がりました。

チラシ今回は通常の発表に加え、土曜日の午前中に、<パネルディスカッション:「人をつくり文化をつなぐ俳句の魅力」>という特別プログラムがありました。これは2017年度にスタートする「秋季特別プログラム」のプレイベントとして行われたものです。素晴らしい内容だったので、ぜひ皆様にお伝えしたいと考えました。また、このパネルを知ったことで、「私も授業に取り入れてみよう!」と思ってくださる方が増えることを願っています。

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秋季特別プログラムは、大会が実施される地域の方々とご一緒に企画し、話し合い、作り上げていくプログラムです。さまざまな方々に気軽に、気楽に参加していただき、「一般の方々に日本語教育を知っていただく場」「日本語教育関係者と一般の方々との対話の場」とすることを目指して企画されました。

では、パネルの紹介です。

パネル1「俳句の力持ち」を育てる~心の力・ことばの力・筆の力~」

          高山佳子さん(松山市教育委員会)

パネル2「俳句の魅力とその可能性~句会を中心として~」

         中西淳さん(愛媛大学教育学部教授)

パネル3「留学生と楽しむ俳句の魅力」

         菅長理恵さん(東京外国語大学大学院国際日本学研究院准教授)

【高山さん】%e5%ad%90%e8%a6%8f%e3%80%8c%e7%b4%ab%e3%81%ae%e3%81%b5%e3%81%a3%e3%81%a8%e3%81%b5%e3%81%8f%e3%82%89%e3%82%80%e6%a1%94%e6%a2%97%e5%93%89%e3%80%8d

小学校に長くお勤めになった高山さんは、学級づくり・学校づくりに俳句を取り入れてこられました。松山市さくら小学校校長時代には「卒業五七五」を実施しました。これは、6年生の4月にまず「子規さん俳句」を楽しむことから始め、小学生がわくわくしながら俳句づくりに取り組むようにさまざまな仕掛けをしながら、1年かけて「卒業五七五」の作成までもっていくのです。

 

→「紫のふっとふくらむききょうかな

   (子規)

その特徴の一つに「筆の力」を活用するということがあります。つまり、「感動した言葉を大きく、力強く表現する」ことで、俳句で思いを表現することの素晴らしさを子どもたちに伝えていくのです。ことばの力、俳句の力を知るとともに、友達と共有・共感・共振・共鳴することの素晴らしさを感じ取ることをめざしていきました。

                           ・   

俳句づくりは「か=感動、き=季語、く=句のリズム、け=景色、こ=個性」とおっしゃる高山さんは、ハンドアウトに次のように書いていらっしゃいます。

卒業五七五

卒業五七五

                                                                                                                                                                             .

 本実践は、松山市制作「子規さん俳句かるた」を通して、「朝会の話」「のぼさんとあそぼ秋祭り」「子規記念博物館ロビー展」「卒業五七五」へとつながる、1年間かけての俳句活動です。子どもたちは、「人・もの・こと」と出会い、心が動き、ことばや俳句が感動として生まれます。自分の思いを豊かに表現したり、ことばの背景にある他者の思いを感じ取ったりしながら内面の世界を広げていきました。「生きるとは学ぶことなり春夏秋冬」の五七五を学校の経営方針にした取組から、俳句でつながる楽しさを伝えたいと思います。

                                                                                                                                                                .

【中西さん】

「俳句の魅力は句会にある」と言う言葉から始まる中西さんの発表は、カナダでの俳句授業に加え、カナダの教室と日本の学生の教室と

展示①

展示①

をつないだ句会についてでした。授業および句会の流れは、以下のようになっています。

①   日本の教室とカナダの教室で、それぞれ俳句作り。

②   それぞれから13句ずつ出し(カナダの俳句は日本語に訳し、日本語の俳句は英語に訳す)、それぞれ鑑賞する。

③   鑑賞をする。

 ・教師または学習者が俳句を読み上げる。

 ・学習者が俳句の情景やそのよさを述べる。

 ・教師が学習者の読みを深める発問をしたりコメントをつけたりする。

 ・日本の俳句かカナダの俳句かを問う。また、自国の俳句であればだれのもの

  かを予想させる。

 ・その俳句の国と作者を明かす。

                                                                                                                    .

1つ例をあげてみましょう。

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    春夕焼焼きたてパンのいいかおり

        spring sunset

        good smell

        bread just baked

 この俳句はカナダでは「家の中でパンが焼けるよいかおりがする情景」であり、日本では「学校帰りにパン屋さんから・・・」という意見が出たそうです。このあたりに文化の違いも出てきます。

                                                                                                                                                                     .

【菅長さん】

菅長さんは、「はいく」とは「は=発見したこと/はっとしたこと」を、い=「いつ」かわかるように『季語』を使って、く=組み立ては5、7、5」と言いながら、さまざまな俳句授業の工夫について語ってくださいました。

展示②

展示②

 「花が咲いたよ!」ってどんな気持ちでしょうか?

  「花が散ったよ!」ってどんな気持ちでしょうか。

 「嬉しい気持ち」「悲しい気持ち」ですね。その気持ちを景色が伝えてくれるんです。

                                                                                                                                           .

ふはふはのふくろふの子のふかれをり」(小沢実)という句は、どんな気持ちがしますか?

「かわいい!」という思いがよく出ています。

 

また、「穴埋め俳句」も、導入にはとても有効だそうです。こんな穴埋め俳句実践を紹介してくださいました。

 

「金風や(    )より生(あ)るる詩が一つ」(横井理恵)

 

autumn wind

from (        )

a poem has born

 

学生達からは「酒、恋、山、海、川、紅葉、響」などいろいろな答えが飛び出したそうです。作品は「誤字より生るる」でした。

また、季語に穴を開けておくことで、季語によって俳句がまったく違ったものになることを学ぶという仕掛けもありました。

 

最後にお三方が話されたメッセージもとても心に響くものでした。

 

高山さん

春夏秋冬、俳句のおかげで退屈しません。心に色があるならば、俳句でいろんな色があることを、子ども達と一緒に考えていきたいです。

 

中西さん

俳句で人と人とがつながっていく。人がつながって楽しむことから伝統文化が生まれます。海外の方のほうが固定観念がないので、俳句にすっと入っていけるとも言えます。俳句で世界中がつながっていくといいですね。

 

菅長さん

少ない言葉に世界が込められているのが俳句、言葉は少ないけれど表現できる世界の大きさ、深さ。とっつきやすさと奥の深さが俳句の特徴です。人と人をつないで世界を平和にすることができる力を持っています。

 

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         松山や秋より高き天守閣  (子規)

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