外国人と住民との真の共生をめざして~福岡市の事例から~

2月7日、福岡市主催のボランティア研修のため福岡市を訪れました。福岡市にはたくさんのボランティアによる日本語教室があり、個人ベース、ボランティア団体間、行政とボランティア団体等、さまざまな形での「つながり」が生まれています。

市庁舎前の「プリマヴェーラ」(エスター・ワートハイマー)

市庁舎前の「プリマヴェーラ」(エスター・ワートハイマー)

今回頂いた講演テーマは「学習者が学びたくなる日本語教室をめざして~楽しい教室活動のデザイン」でしたが、今年もまたボランティアの方々は「少しでも学習者にとって魅力的な教室づくりをしたい」と熱心に取り組んでいらっしゃいました。そして、研修会の翌日は、福岡市国際課の方との話し合い、ここでは福岡市のさまざまな取り組みについて伺うことができました。いくつかご紹介したいと思います。

 

 ■「留学生から学ぶ外国語教室」の魅力

「留学生から学ぶ外国語教室」のパンフレットを見て、「わあ、いいですね。私も福岡市に住みたいです!」と思わず叫んでしまいました。語学が好きな私にとってさまざまな言語に関する「留学生を講師とする語学教室」は、本当に魅力的な企画です。これは、「公益財団法人福岡よかトピア国際交流財団(以下「国際交流財団」と称します)」が主催し、福岡市が共催という形で行っています。さすが総人口に占める留学生の割合が高い福岡市だけあって、留学生と住民とをつなぐ活動も活発だと感心しながら、担当者のお話を伺っていました。

博多祇園山笠の人形<福岡市役所ロビー)

博多祇園山笠の人形<福岡市役所ロビー)

 

今年度は17言語、32教室が開かれ、参加者数は545名でした。他ではなかなか教室が見つけられない言語の教室があること、そして、何よりも留学生から学べるということは大きな魅力です。ちなみに来年度は、以下のような言語の教室が開かれる予定だそうです。

 

インドネシア語  韓国語  スペイン語

中国語  アラビア語  カンボジア語

タイ語     ネパール語  ヒンディ語

びん南語(台湾語) ベトナム語

ポルトガル語  ミャンマー語

モンゴル語  ロシア語

留学生から学ぶ外国語教室

留学生から学ぶ外国語教室

 

 

 

 

■充実した「転入外国人ウェルカムキット」

区役所の住民登録窓口に転入のために訪れた外国の方に対して、生活に役立つ情報が掲載された冊子をはじめ、さまざまなパンフレットが入ったウェルカムキットを配布している所は、今ではどんどん増えています。しかし、福岡市で感心したのはその中身の充実度です。

 

・リビング福岡(109ページ)

・にほんごClass Map(日本語教室案内)

留学生講師からの一言

留学生講師からの一言

・レインボープラザ案内

・ごみルールブック

・ビジターズガイド

・歩きたばこ禁止チラシ

・福岡インターナショナルスクール案内チラシ

・外国人のための防災ハンドブック

・外国人ラジオ放送RP/緊急連絡先カード

・自転車通行ルールチラシ

 

もちろんそれぞれが多言語で記されており、初めて来た人も安心して生活が始められるように工夫されています。

 

 

■日本語ボランティア関連講座の開催

福岡市では、日本語ボランティア養成講座も実施しています。今年度は諸事情で開催されませんでしたが、毎回70名の枠はすぐに埋まってしまう人気です。昨年度は、全24回シリーズ70名が参加し、57名が修了書を授与されました。

 

また、既にボランティアになっている方々のブラッシュアップのための研修会も実施されており、その1つが今回私が講師を務めた研修会でした。ここで驚いたのは横のつながりの強さと、ボランティア教室の数の多さです。このことは福岡市の大きな強みでもあり、「次の課題」でもあります。つまり、つながりをもっと広く、深くしていくには、まだまだ課題も残されているからです。でも、熱いボランティアさん達の思いは、いつか大きなうねりになっていくことでしょう。

 

 

■「アジア太平洋こども会議・イン福岡」&「グローバル コミュニティ FUKUOKA」グローバルコミュニティ福岡

福岡市では1989年に「アジア太平洋こども会議・イン福岡」を始め、今年で27回目となりました。なんと毎年40を超える国・地域から子ども達が訪れているそうです。こうした小さな種蒔きが、アジアに開かれた町づくり、外国人にやさしい町づくりに繋がっているのだと思います。

 

そして、今年度は新たに留学生の地元企業への就職や創業の機会を増やそうということで、「グローバル コミュニティ FUKUKA」を10月に開催しました。日本で活躍できる場を探している留学生、優秀な人材を求めている地元企業、留学生の就職支援をさらに活性化させたい大学職員、こうした人達を行政がつないでいくという取り組みは、今後もっと広がっていくのではないでしょうか。

 

 

在住外国人へのマナー紹介業務(日本語学校向け業務)

国際交流財団では、来日後間もない日本語学校の新入生を対象に、ごみ分別マナーや自転車マナー等、生活に必要なマナーを伝えるため、出前講座を実施したり、マナー紹介のDVDを作成して配布したりしています。各地の日本語学校では、それぞれ自分達で新入生オリエンテーションなどで指導している現状を考えると、こうした行政も一緒になって留学生が快適に日本での生活が始められるようにと活動をすることは、素晴らしい取り組みです。

 

1枚DVDを頂いて帰ってきた私は、視聴しながら「自分達の自治体にないのなら、日本語学校の学習者で作った

DVDようこそ福岡市へ2016.2.8

DVDようこそ福岡市へ2016.2.8

らどうだろうか?」といったアイディアも浮かんできました。こうして動くことによって、新たな出会い・対話が生まれ、新しい発想が生まれます。人とのつながりの大切さを改めて感じました。

 

 

それぞれの都市には、長い歴史と文化があり、そこにしかない魅力があり、それが訪れる人々を惹きつけます。こうしたものに触れ合いながら仕事ができることは、とても幸せなことだと改めて思いながら福岡を後にしました。

 

 

参考: 出典「日本地域番付」より

全国外国人比率(2010年調査)

1位 東京都  2.423%

2位 愛知県  2.162%

3位 大阪府  1.858%

24位 福岡県  0.795%

 

福岡県内外国人比率

1位 福岡市東区      2.018%

2位 北九州市小倉北区 1.777%

3位 苅田町      1.603%

(※ただし、現在は九州大学の移転等の理由で「福岡市西区」が急増している)

2 Responses

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  1. 嶋田先生、先日はお疲れ様でした。
    このように福岡のことをご紹介いただき、とてもとても有難く思います。
    多くの方に福岡のことを知っていただけると思うとわくわくします。
    この「つながり」がより拡く、深くなっていくお手伝いが少しでもできるよう、私もしっかり精進致します。

    1. 溝部さん、コメントをありがとうございました。福岡市役所でお話を伺うことが出来、とても良かったと思っています。素晴らしい取り組みをなさっていますね。

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