笑い声が響く学校「ムンド・デ・アレグリア(南米外国人学校:浜松)」

日本の授業を受けています

日本語の授業を受けています

10月11日、日本語教師研修会のために浜松にあるムンド・デ・アレグリア学校を訪問し、久しぶりに授業を見学させていただきました。そこには、以前と変わらず、お昼休みともなると学内いっぱいに子ども達の笑い声が響いていました。

「ムンド・デ・アレグリア」とはスペイン語で「歓びの世界」を意味しますが、この学校が誕生したのは2002年。「マサミ、このままでは子どもがかわいそうだ。安心して通える学校がほしい」「お願いだ。子供達のために学校を創ってくれ」、といったたくさんの日系ペルー人の声が松本雅美さんの心を動かしました。そして、「今、私がやらなければ!子ども達の「今」を大切にしよう」と、松本さんはすぐに行動に移したのです。

幼稚園部

幼稚園部

今では、幼稚園の年少組から高校3年生まで210人の子ども達(日系ペルー人と日系ブラジル人)が学ぶ学校へと発展しましたが、それまでの苦労は並大抵のものではありませんでした。何度も危機を乗り越え、今の学校を作り上げてきたと伺い、その10年の歴史の重みをずっしりと感じました。それだけに、元気に響く子ども達の笑い声、明るい笑顔はとても印象的でした。

今日(10.11)は、「ブラジルの子どもの日」です

今日(10.11)は、「ブラジルの子どもの日」です

ちょうど伺った10月11日は、「ブラジルの子どもの日」でした。クラスでは、小さなパーティーが開かれていました。母国の習慣を大切にする、母語を大切にする……こうした配慮が随所になされていました。また、あるクラスでは、これから日本の小学校に入りたいと思っている児童に「お弁当」を食べながら、お箸の使い方を教えていました。ムンドについての詳しい説明は、どうぞホームページをご覧ください。http://www.mundodealegria.org/

 

 

日本の学校に行く予定なので、お箸の練習を・・・

日本の学校に行く予定なので、お箸の練習を・・・

私は、若い人達に少しでも日本語教育・支援の場を知ってほしいと思い、大学の講義でも、学生達が出来るだけ現場の話・生の声に触れられるように努めています。例えば、授業の一環として日本語教育機関や国際交流協会を見学し、授業等に参加をするというプログラムを実施しています。また、個人的に身近な日本語教室に参加し、ともに活動することを勧めています。

ここでは、清泉女子大学4年生の高畠理恵さんの感想をご紹介したいと思います。彼女がムンド・デ・アレグリア学校を訪れたのは、5月のことでした。自分の研究テーマのためには是非「ペルー人学校を見学したい!」と、わざわざ浜松まで出かけ、じっくり見学をさせてもらい、また授業にも参加してきたのです。そして、翌週の授業では、「クラスの仲間にも、浜松で自分が体験させてもらったこと・思いを伝えたい」と、パワーポイントを作成して発表をしてくれました。そこで、「ホームページにムンドのことを書くので、5月の学校見学について書いてほしい」と頼んだところ、早速以下のような体験記を送ってくれました。

自習時間でしたが、熱心に勉強をしていました。

自習時間でしたが、熱心に勉強をしていました。

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ムンド見学感想 (高畠理恵)

私は大学でスペイン語学科に所属し、日本語教員科目を履修しています。その過程を通して「日本にいる中南米につながりのある子ども達のスペイン語と日本語」をテーマに卒業論文を作成したい、と嶋田先生に相談したところ「Mundo de Alegria」を紹介していただき、見学に行く機会に恵まれました。

今回はその中で一番印象に残っているブラジル人高校生クラスでの体験授業についてご紹介したいと思います。

授業を受ける際、「何の科目の授業であるかということをあえて知らされず、生徒も日本語を一切使用しない」という条件で参加しました。まずは自己紹介です。実はポルトガル語で自己紹介をしようと思い準備はしていたのですが、緊張もあり「初めまして、こんにちは。」というのが精一杯でした。その後ブラジル人の先生に席を案内していただき授業に参加しましたが、ポルトガル語を知らない私は、何を勉強しているのかさっぱり分からず「化学かな?数学ではなさそう。なんとなく理系の勉強だろうな?」と思いながら授業を受けていました。しかし、粘土、毛糸と模造紙が出てきて、「えっ!?図工?まさかなぁ~。」と混乱しながら見ていると、どうやら染色体を作っている様子だったので「生物かな?」と思い授業後、先生に伺ってみると「生物」の授業でした。私は今までの学校教育で「染色体」を習って知っていたので、想像することができましたが、その知識が無ければ全く想像をすることができません。言葉が分からないまま、その空間に居続けることは退屈でもあり、何の意味もなしません。実際自分が同じ環境に置かれることにより、「授業はいるだけでは意味がない。」ということを痛感しました。

今回の体験と、目を輝かせながら自分たちの母語で勉強をしている子どもたちの姿を目にして、「勉強を楽しめる環境」を作ることの大切さをより実感し、まずはより多くの人に現状を知ってもらい、浜松のような外国人集住地域ではなく、母語での授業を受けることが難しいマイノリティ地域に住んでいる子どもたちの学習環境について、地域が一体となって考えることが必要であると感じました。一人ひとりの体験が、地域をつなぐきっかけとなり、多くのことを結んでいければいいな、と今回の見学を通じて感じました。

 

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