5月研修の報告「地域日本語教育の展開と複言語・複文化主義」

 

話をする野山さん

話をする野山さん

5月10日(金)のアクラス研修は、地域日本語教育関連でした。タイトルは「地域日本語教育の展開と複言語・複文化主義」、講師は国立国語研究所の野山広さんでした。参加者は東京近辺だけではなく、名古屋、浜松、松本、栃木・・・と、さまざまな地域で日本語教育・支援に関わる方々でした。

■マジョリティ側から変わること―ひと声掛けよう!

多文化共生社会づくりを目指した地域日本語教育を実践する際に、最も重要なことの一つとして、マイノリティーの外国人住民が日本社会に合わせていくことだけを求めるのではなく、状況に応じてマジョリティ側が変わることが挙げられます。例えば、マジョリティ側がひと声かけるだけで、互いの関係性が変わっていき、みんながより住みやすい社会になっていく可能性が高まります。多くの外国人に出会うとひと声掛けているという「大阪の声かけおっちゃん(岩崎さん)」のビデオを見ながら、みんなで考えていきました。ポイントは、1.物おじしないで話しかける、2.共通の話題を見つける、3.誘われたら、とことん付き合う、この3点だと岩崎さんは言います。ここには、日本人がなかなかできないことが明確に提示されています。「とことん付き合う」まで行かずとも、表現的な付き合い以上に進むのが苦手なマジョリティ側、もっともっと努力が必要だと改めて思いました。岩崎さんの「日本は良い国だと思って帰って行ってほしい」という思いは、みんな一緒なのですが~~~。

■人と人とをつなぐことの大切さ!~コーディネーターの存在~

熱心に話を聞く参加者

熱心に話を聞く参加者

多文化共生社会づくりで大切なのは、自己肯定感や自尊感情を大切にすることです。自文化を誇りに思い、自分自身を大切に思う心から、他者への配慮も生まれます。しかし、定住外国人配偶者は、ただ生活に慣れることに明けくれる場合が多く、言葉を学ぶチャンスもそれほど多くはありません。ある中国人配偶者は、ある時「出身地の雲南省昆明について話してほしい」と言われ、語り始めたことからさまざまなことが変わっていったと言います。「どう地域社会と関わっていったらいいのか分からない外国から来た方々」「どう声をかけたらいいのか戸惑っている日本人側」、その架け橋になり、きっかけを作るのがコーディネーターです。

中国から能代に結婚のために来たIさんも、地元のコーディネーターによって、生き生きとした毎日を送るようになりました。必死の努力で日本語力を身に付けたIさんに、コーディネーターは中国語を教えることを提案したのです。こうした定住外国人と地域とのつなぎ役であるコーディネーターの役割は、さまざまな意味でますます重要になってきています。

ペアで話し合い

ペアで話し合い

■「地域に貢献できる“人財”育て」の大切さ~能代の事例から~

外国人はサポートしてもらう(だけの)存在という捉え方ではなく、ともに地域社会を作っていく存在(でもある)という捉え方が重要です。地域に定住する外国人配偶者は、ともに地域社会を作っていく大切な人材であり、また、その子どもたちは「将来のまちづくり」になくてはならない存在なのだという意識がとても大切だと考え、能代のコーディネーターである北川さんは活動し続けてきました。そして、彼女は「この地域で生きていこうとする外国人らの必死さに接するうち、逆に私が生きる力をもらうようになった。与えるより得るものが多いから続けてこられた」と、新聞の取材に答えています。「のしろ日本語学習会」に関しては、野山さんの論文「日本語使用者としての対話力を育てる」『対話とプロフィシェンシー』および当日配布資料(PDF)をご覧ください。

■「対話」を大切にしよう!

対話と会話は違うということから始まり、多文化共生の社会づくりには、日本語を使用する「日本語人」同士としての「対話」がいかに求められているかについて話が進んでいきました。1.いかにして異なり(異なる言語・文化背景や違う価値観等)を持った人々に対する偏見や差別を軽減する工夫をすればいいのか、2.いかにして同じ地域内に生活する隣人として共存していく覚悟を決められるのか、といった2つの重要なことがあげられました。アチコチの地域日本語学習支援の現場を見ると、まさに日本の多言語・多文化化の拠点であり「水際」となっているのです。印象的だったのは、講師の「その水際に関係した人たちって、なぜかみんな輝いているんですよね。みんなキラキラしている!」という言葉でした。北川さんの言葉と呼応して、「水際」「共存」「対話」「輝く」……いくつものキーワードが心に響きわたりました。

最後に、もう一度今回の研修のリード文を読みたいと思います。今回参加なさった方はもちろん、参加できなかった皆さんも、地域の日本語交流・支援の現場はどうあるべきかについて、さらに考えていきませんか。

          ♪ ♪ ♪  リード文  ♪  ♪  ♪

日本の多言語・多文化が進む中,同じ地域内に生活する隣人として共存し,対話してゆく覚悟を決めることの重要性がますます高まっています。こうした覚悟を決めた人が多い現場の一つが,地域の日本語交流・支援の現場です。この水際に関係した人々はなぜか,輝いて来る人が多いのですが,そのなぞに,以下の資料を主な参考文献として踏まえながら迫りたいと思います。

資料:当日使用のパワーポイント 5月アクラス研修パワーポイント

          当日配布資料   当日配布資料   多文化共生推進プログラム(総務省)pdf

 

懇親会で

懇親会で

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