「地域日本語教育〈起業家〉育成講座」は、平成24年度文化庁「生活者としての外国人」のための日本語教育委託事業として実施されました。これは、浜松にあるCRIATIVA主催の講座であり、グローバル化が進む中で、地域の課題解決を目指し、それに取り組むことができる人材を育てることを目的として始まりました。受講生の自主性・創造性を重視し、ともに学び、ともに活動することをモットーにして開かれた講座であり、講座後半では、受講生がグループを作り、地域社会で実際に教室を立ち上げるという「大仕事」が企画されていました。
受講生が企画・運営したのは、次の5つの教室です。
1. 外国人研修生のための日本語教室
2. 日本語を始めて学ぶ人のための日本語教室
3. ビジネスで役立つ日本語教室
4. 命を守る日本語教室
5. 進学のための日本語教室~目指せ!10点アップ
自分達で「今、多文化共生町づくりという視点で、どういう日本語教育・支援が求められているのだろうか。どんな日本語教室を立ちあげることが望まれているのだろうか」と、まず問いを立て、それぞれが実現可能な教室のデザインを描き始めました。そのためには、まずは二―ズ調査が必要です。そこで、各グループは二―ズ分析のために町に出かけ、さまざまな人にインタビューをしながら、教室を作り始めたのです。
これまで「日本語教育の人材育成」関連の講座で、日本語教室を立ちあげることをシュミレーションするということはあったものの、実際に地域住民を巻き込み、教室開設に繋げたという例は聞いたことがありません。「百聞は一見にしかず、されど百見も一験にしかず」、実際に動いてみることが大切です。こうした講座が全国的にどんどん広がっていくことを願わずにはいられません。
実施していく中で、「こういう教室はぜひ継続してほしい」という声が上がったり、自治会から「これはみんなの為にぜひ続けるべきことなので、今後は公民館を使ってください」という申し出があったり、大きな成果をあげました。それぞれに仕事があったり、大学生活があったり、今後いくつの教室が続けられるかは定かではありません。しかし、今回蒔かれた種は、いずれ各地で大きな花を咲かせてくれることでしょう。
とはいえ、最初から順風満帆だったわけではありません。開講当初はゼロ、一人といった教室もありました。しかし、そこでめげるのではなく、二ーズを再度分析したり、教室設定をもう一度やり直したり……。そこには粘り強い努力がありました。こうした苦労を重ねる中で「地域に暮らす日本人や関係機関を巻き込むことの重要性」をしっかりと認識したのです。
本講座の責任者である堀永乃さんは、次のように語ってくれました。
「自分達で考え、動き回り、チラシも自分達で作っていきました。地域住民、行政機関、企業も巻き込んだ教室運営が出来たのは、本当に素晴しいと思います。『命を守る日本語教室』では、自治会長との話し合い、公民館との折衝、消防署とのやり取り……本当にいろいろなことがありました。そういえば、静岡県にない資料が三重県にあることを知った受講生は、それを三重県から無料提供してもらえるように交渉していました。こうした体験こそ、これからの活動の原動力になっていくのだと思います。」
では、5つの教室の中から、2つの教室についてご紹介したいと思います。
(CRIATIVAから資料を提供していただきました)
<外国人研修生のための日本語教室>
活動のまとめ:浜松「外国人研修生のための日本語教室」
2月10日~2月17日 毎週日曜日
全14時間
当初外国人参加者は1人・日本人ボランティア2人という状況から、最終回には27人(うち日本人ボラ5人)に成長を遂げた!第4回には、松韻亭の案内ボランティアの協力を得た。第5回には、受講者とボランティアとでバスツアーを企画するまでに至った。地元の遠州鉄道株式会社は、中型バスを通常の8割の金額で提供し、遠鉄百貨店はお弁当を安値で提供してくれた。
回 |
いつ |
なにを(にほんご) |
かんじ |
たいけん |
① |
2月10日(日) |
知り合いになる・自己紹介 |
数/ 位置 |
折り紙 |
② |
2月24日(日) |
役所・銀行・病院での言葉 |
植物 |
折り紙 |
③ |
3月3日(日) |
買い物で使う表現 |
動物 |
お茶/雛祭 |
④ |
3月10日(日) |
バス・電車・タクシーでの言葉 |
筆で字を書いてみよう! |
|
⑤ |
3月17日(日) |
日常生活でのいろいろな会話 |
友だちを誘って出かけよう! |
<命を守る日本語教室>
活動のまとめ:浜松「命を守る教室」
2月12日~3月19日 毎週火曜日
全12時間
当初14人(遠州浜1丁目団地に住むブラジル人が中心)でスタート。コーディネーターが自治会や消防署などと交渉を行い、教室をリアルなものにすべく消防士・救命士の協力を得られた。その日はもともと2人程度の消防士と救命士が参加することになっていたが、結局は6人が参加してくれた。外国人参加者から、自発的に119番の電話の仕方が自分の言い方で合っているかどうかという質問があったことで、模擬体験をすることになった。言ってみたい、やってみたいという外国人の要望に対して、即座に対応してくれるなど、距離感の近い教室づくりができた。
また、第5回目にはブラジル人がマジョリティの状況下でHUG(避難所運営ゲーム)を実施。自治会から1人、地元遠州浜に住む日本人2人が参加。
回 |
月日 |
目標 |
① |
2月12日(火) |
災害が起きる前に / 災害についての基本的な知識と言葉の紹介 |
② |
2月19日(火) |
災害にあったら(屋内編)/ 避難方法と安全確保の為の言葉 |
③ |
2月26日(火) |
災害にあったら(屋外・乗り物編)/ 避難方法と安全確保の為の言葉 |
④ |
3月5日(火) |
災害が起きた後に / 安全確保・避難・救出・救護方法と必要になる言葉 |
⑤ |
3月12日(火) |
避難所で / 避難所での生活に関する知識と必要になる言葉&会話 |
⑥ |
3月19日(火) |
防災お役立ち情報&ツール紹介 / 避難地図確認・日本語と多言語メディア、体験 |
【CRIATIVAの堀永乃代表、教室をサポートする大学生松下貴之さんと浜松にて】