海外だより<新型コロナ禍に向き合う>第3回「中国の現場から」(笈川幸司さん)2020.5.12

 海外だより<新型コロナ禍に向き合う>第3回

  「中国の現場から」笈川幸司さん(2020.5.12)

新型コロナウイルス感染症の拡大による影響は世界中に広がっています。   

それぞれの国・地域では取り組み方も違えば、人々の行動の仕方も違います。   

そこで、海外で暮らし活動をしていらっしゃる方々から、「現状、取り組み方、

特長など」について伝えていただきたいと考えました。

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昨夜、NHK『逆転人生』の緊急企画で、「コロナ禍に立ち向かう日本語教師」として取り上げていただきました。本当に緊急のことで、収録日は連絡をいただいてすぐのことでした。 武漢封鎖が1月23日。その日を境に、私たちの生活は一変しました。外に出ても全く物音がしない状況が二ヶ月ほど続きました。

当時、いち早く反応したのは若者たちでした。マスク、手洗い、うがい。すぐそれらに取り組んでいました。学生たちのSNSを見ていて、反応が数日鈍いと感じたのは、意外にも私と同年代かその上の世代のようでした。「お母さんは、私がいくら言ってもマスクをしてくれない」「大丈夫とか言ってる!」などという若者たちの嘆きが響き渡りました。

しかし、1月26日くらいには、ほとんどの人が「これはまずい」と考えたのでしょう。春節休みだというのに、楽しそうな様子を報告する人はほとんどいませんでした。 その頃、日本から温かいメッセージ付きの支援物資が中国に届きました。それらを中国に送ったのは私ではなかったのですが、学生たちや先生方から、私宛にたくさんのお礼メールをいただきました。その頃、私は二週間くらいしたら状況が好転するだろうと思っていました。数字を見ると、確かに二週間後あたりがピークでしたが、ピークというのは一番ひどく先が見えない真っ只中の状況です。

そんな中、「よし、これで大丈夫だ!」と言えるのは専門家の方だけだと思います。私が家にこもるようになってから最初の二週間は、SNSもしませんでしたし、日本の友人から「中国は大丈夫か?」と聞かれても、「よくわからない」としか答えられませんでした。

私がオンライン授業を始めたのは1月下旬でした。たまたまそこに武漢出身の学生がいたことから、武漢とその周辺の湖北省の大学の先生方に連絡をすることを思いつきました。中には、涙声で話す先生もいました。ちょうど1日の新規感染者数がピークを迎えていた頃ですから、何も聞きませんでしたが、大変な状況になっていることを想像し、武漢・湖北省の学生たちに授業することを決めました。 日本で爆発的に感染者数が増え始めた3月、私の住む杭州市では、まだ完治していない患者さんが4名だけとなり、他の都市でも感染者数が日に日に減っていて、明るい未来が見えはじめていました。 喜ぶべきことでしたが、今度は日本が大変な状況になってきました。

その頃、Yahoo!ニュースを見ていて、「それは違うだろう!」という記事やコメントが結構ありましたが、何が正しいのかまではわからなかったのでSNSで自分の考えを述べることはしませんでした。 杭州市でもしばらく新規感染者が出なくなった頃、海外から戻ってきた多くの人が感染していたことがわかり、杭州市でもまた緊張が走りました。現在、感染者はゼロ人ですが、今でも隣のマンションとの間に壁があって、自由に行き来できない状態です。マスクはしなくても良いとされていますが、マスクをしない人を見かけるほうが少ないです。

さて、話題を番組に戻します。急に連絡があり、ディレクターさんが「今、どんなことをしていますか?きっと、何かすごいことをしているでしょう?」とおっしゃるので、「実は、武漢と湖北省の学生を中心にオンライン授業をしています。とても地味なんです」と答えました。 日本ではZOOMが主流で、顔出し授業が当たり前かも知れませんが、中国の学生はあまり顔を出したがりません。授業は当然地味なものになってしまいます。私の授業は300名まで参加できますが、集合写真を撮っても私以外は真っ黒です(笑)。

半年前まで、学生たちの多くは、「オンライン授業を受けたい!」と言っていましたが、いまは誰も喜んでくれません。コロナ疲れと同時にオンライン疲れに陥っているようです。ですから、ハードルはますます高くなってきていると感じます。でも、この状況は二ヶ月後、世界中のどの先生も実感されるのではないかと思いますので、その時、またゆっくりとお話ができたら嬉しいです。

最後になりますが、番組を見てくださった皆様にお礼を言わせてください。どうもありがとうございました。また、声をかけてくださるだけで嬉しいです。でも、「ずっと言いたかったんだけど、ヤマザトさんじゃなくて、マヤサトさんですよ」なんて言われた日には、穴があったら入りたい気持ちになります。すぐに「違うよ!ヤマサトさんだよ」と言ってもらいたいです。

どうぞ、遠慮しないで、なんでも言ってください。なんでも聞いてください。 私はわからないことがたくさんありますし、日本語教育をしっかり学んで来られた先生方と比べたら、知識が足りませんので、知識面での質問に対応する自信はありませんが、誰もしたことのない経験や実験的なものにつきましては、割とこなしてきた方かと思いますので、そういう質問でしたらすぐに対応できると思います。

メディアの皆さんは、私を知らない多くの人に向けて「カリスマ」という言葉を使いますが、実際は番組を見てくださったイメージ、あるいは実際に会った時のイメージが正解で、「どこがカリスマなの?」という見方が正しいと思います。 ですので、いつでもお声がけください。私もわからないことがあれば、色々質問させてください。よろしくお願いいたします!

 

 

参考: NHK「緊急企画!新型コロナウイルス 逆転の秘策」

 

逆転人生の主人公たちは、新型コロナウイルスの逆境とどう立ち向かい、どのような「逆転」を成し遂げようとしているのか。目からウロコの秘策が満載の緊急特番!2020-05-12 (1)

山里亮太が、さまざまな逆境を乗り越えてきた3人の主人公たちに新型コロナと立ち向かう逆転の秘策を聞く緊急特番。中国の日本語教師・笈川幸司さんは、震源地・武漢の学生たちにオンライン授業を行うなど精力的に日本語教育を続けている。海外に羽ばたく日本酒を作り上げた桜井博志さんは、中国で1000人規模のオンライン飲み会を開催。偏差値35から東大に合格した西岡壱誠さんは、とっておきの自宅学習術を伝授する。

5月18日(月)に再放送があります。

https://www.nhk.jp/p/gyakuten-j/ts/JYL878GRKG/schedule/

NHK笈川

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