海外だより<新型コロナ禍に向き合う>第1回「モンゴルの現場から」(中西令子さん&佐藤慶一さん)2020.5.6

海外だより<新型コロナ禍に向き合う>第一回「モンゴルの現場から」

(中西令子さん&佐藤慶一さん)

 

     新型コロナウイルス感染症の拡大による影響は世界中に広がっています。

  それぞれの国・地域では取り組み方も違えば、人々の行動の仕方も違います。

  そこで、海外で暮らし活動をしていらっしゃる方々から、「現状、教育上の取り組み」

などについて伝えていただきたいと考えました。

 

  第1回の「海外だより」は、ウランバートルで日本語を教えていらっしゃる中西さんと佐藤さんが寄稿してくださいました。

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 第1回 モンゴルの現場から:中西令子さん&佐藤慶一さん

(寄稿:2020年5月6日)

海外だより第一回「モンゴルの現場から」(PDF) 

海外だより第1回「モンゴル」

 

1.モンゴル国は、新型コロナウイルス感染症にどう対応しているか1

 

2019年12月末、中国で肺炎が集団発生しているとのニュースが流れました。

モンゴルは、中国と東西に渡り5000キロもの国境を接しており、特に国際列車がつなぐ中国とモンゴルの国境の駅である二連は人の行き来や物流の拠点になっています。

この前に、世界各地でインフルエンザが猛威を振るっているという理由により、モンゴルの初中等教育機関は、3学期に入って1週間授業をしたところで休校になりました。

それが1月27日からとりあえず3月2日までの期限付きでした。休校になって間もなく、新型コロナウイルスが中国で蔓延し始めたため、休校の理由は変りました。

初中等教育機関では、ほどなくテレビ授業が始まりました。

 

以下、在モンゴル日本大使館からの在モンゴル邦人に向けてのメールを時系列にまとめました。

 

2020年1月31日、政府発表では、

2月1日からは、中国からモンゴルへの入国が禁止され、3月2日までは、モンゴル人の中国への出国も禁止されました。(但し、物資の流通は対象外です)これが第一報です。


2月12日         教育省が全ての教育機関の休校を3週間延長する決定を出し、

休校は3月29 日までとなりました。

このとき、4月、5月は学校が再開されるだろうと誰もが思っていたのでしょう、4,5月は、土曜日も振り替え授業をやるようにと、教育省からのお達しも出たのです。

ですが、感染は広がる一方で、

2月14日から当面の間(期限は未定)中国―モンゴルの航空機、鉄道は完全に停止されました

(物流は続けられると言うことで)。

その時点では、3月30日には、出入国禁止措置も緩和、あるいは解除されるであろうと言ことでした。

しかし、コロナが世界で広がり始め、モンゴルの危機感は一層高まりました。モンゴルの全人口は3百数十万です。首都のウランバートル市は百万を超える、まさに密集都市になっています。

 

中国や韓国で新型コロナウイルスの感染者が増えるなかで、モンゴル政府は、

2月14日から、中国―モンゴル間の航空機、鉄道を完全停止、

2月20日、モンゴル国内、ウランバートルと各地方を結ぶ道路を封鎖

(自動車、長距離バス、列車) しました。

2月21日 モンゴル外務省は、過去14日以内に、中国及び台湾に滞在、通過暦のある外国人、

無国籍者に対してモンゴルへの入国を禁止し、ビザの申請・発給も止めました。

2月24日 2月25日から3月2日までの期限付きで、ウランバートルー韓国

(インチョン・プサン)間の飛行機の欠航措置をとり、

28日から3月11日まで ウランバートルー成田を欠航としました。

(これらは今も続いています)

3月1日 イルクーツク、ウランウデ(ブリヤート自治共和国首都)-

   ウランバートル間が欠航。3月11日まで(これも今でも続いています)。

3月2日 過去14日以内に韓国、日本、イタリア、イラン滞在歴のある外国人、

   無国籍者のモンゴルへの入国禁止措置、ビザの申請・発給停止

3月3日 モンゴル国内で、様々なイベント、デモ、集会の開催禁止

 各種施設の利用禁止、寺院も含まれる

    深夜営業の飲食店の営業禁止

 飲食店の営業時間制限、レストラン、カフエは午後10時まで

(3月30日までの期限付きで)

3月10日 ウランバートル市非常事態委員会から

サービス業全て(食料品店、バスのカードのチャージをする店以外)

営業停止命令が出ました。

3月11日 ロシアからの陸路入国禁止

3月11日 在モンゴル日本大使館から邦人へ連絡

日本へのチャーター便が出るかもしれないので、それに乗る希望者を

募っているということでした。

3月12日 モンゴル・日本人材センター閉館(今も続いています)。

3月16日 MIAT(モンゴル航空)チャーター便、成田へ。ここで、

JICAの協力隊員が全員帰国しました。

隔離中の人の中から1名感染者が出ました。

3月18日 隔離中の人の中から3名感染者が出ました(ソウルからの人と、

ベルリン、モスクワからの人)。

3月20日 教育機関の休校が4月30日までと延長されました。

この時点では、5月1日に学校は再開される見通しだと言われていました。

ロシアーモンゴル間の飛行機・鉄道の運航禁止措置が延長されました。

(4月30日までということで)

成田―ウランバートル、 インチョン・プサンーウランバートル、

モスクワ・イルクーツク・ウランウデーウランバートル

イスタンブールーウランバートル   カザフスタンーウランバートル

中国―ウランバートル

以上の都市との空路は封鎖になりました。

3月21日 感染国からの入国者は、全員14日間の隔離が決まりました。

隔離されていた人の中から4名が感染していたと判明しました。

3月16日にベルリン・モスクワで(チャーター便)帰国したモンゴル人です。

3月26、28日と、感染者が見つかり、この時点で12名が隔離中の病院で

みつかり ました。

4月1日 イベント、集会などの禁止措置が4月30日まで延長されました。

各種施設の利用も同じです。

 

隔離されている人の中から感染者が次々に見つかっていることから、隔離期間が3週間に延ばされました。このため、チャーター便を飛ばす予定が延びました。

(隔離施設が足りないのです)

ウランバートル市内では、マスクを着用する、3人以上は集まらないなど命令が出されました。消毒車も走っています。

 

4月18日~5月31日 マスク着用キャンペーン

マスクをしていない人は、店に入れない、バスには乗れないことになりました。

マスク警察みたいな人が街にいて、マスク着用を検査し、違反していたら15万tg(日本円で6000円位)の罰金です。

 

4月14日 教育機関の授業再開は9月1日からと決まりました

4月14日、18日、19日、21日、22日・・と感染者が見つかり、5月3日現在で感染者は39名です。

 

モンゴルで3週間の隔離後、今度は2週間の自宅待機です。そのとき、隔離されていた人は全員、自分のスマホにGPSをインストールしなければいけません。

1日に2回、検温して保健所に電話かネットで報告しなければいけないそうです。

 

4月30日 非常事態に備えた準備態勢 5月31日まで続きます。

 

5月1日、外国語学習センターは、10人以下であれば授業を行ってもいいと、

教育省が許可しました。

5月4日 隔離中の人の中からまた1名感染者が見つかりました。

感染者計40名

5月5日 在モンゴル日本大使館からのメール

サービス業などの時間制限措置が解禁になった3日後、店側と利用者双方に重大な違反行為があり、制限措置が元に戻ってしまった・・・とのことです。

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太字になっている部分だけとっていただいても分かるかなと思います。

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モンゴルでは、地方で家畜の病気、例えば、口蹄疫などが出た場合、即、ウランバートルとの交通を封鎖します。また、車のタイヤなどの消毒も徹底しています。

牧畜が主産業のモンゴルでは、人間の命も家畜の命も同じ重さを持っていると言っても過言ではないでしょう。

また、かつて社会主義だったこともあり、政府は有無を言わせず、制限、禁止措置をとっています。

 

2020年5月4日     (文責)中西令子

 

 

2.日本語育現場での取り組み(工夫や活動、課題など)【文責:佐藤慶一】

モンゴルでは国営放送のテレビチャンネルで毎日各学年に対応した教科の授業が行われていますが、日本語の授業は無いので学校独自に教員がオンライン授業を作成しています。

1月末から休校措置が決まり、1か月の延長。また延長ということで3月末から本格的にオンライン授業に力を入れ始めた教員が多いです。しかし、5月からモンゴルは暖かくなり始めたので家畜の世話のために地方へ行く生徒が増え、そのためネット環境がない生徒も半分ほどいるので持続困難な状況になりつつあります。また、小学生は基本的にネットに自分でつなぐことができないため、保護者が仕事から帰ってくるまで何もできません。保護者の教育への関心度によって、かなり差が出ているのが現状です。初中等の教員が行っている授業形態は大きく分けて3つです。
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一つ目は、動画を撮影しそれをYouTubeなどの動画投稿サイトにあげます。その動画を見た生徒は課題をGoogle DriveやFacebook上に提出するという方法です。この方法のメリットとしては映像を子供たちは自分のタイミングで見ることができるという点です。自宅にネット環境がない家庭も少なくないので、ネット環境があるところへ行ったときに見ることができます。また、転入生が非常に多いのがモンゴルの学校の特徴なので、そういった学生に自宅学習として見せることができる可能性も秘めています。デメリットとしては、コンテンツを面白くしないと子供たちが見てくれないため、教員の負担が非常に大きいということです。保護者の話では、初めは先生の授業のビデオを見ていても気づいたらアニメやほかの番組に変わっているとのことです。

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二つ目は、ZOOMやSKYPEなどの双方向なコミュニケーションです。メリットは、オンタイムの授業のため学生の集中力が高い点です。ネット環境があり学習意欲の高い学生にとっては効果があります。デメリットとしては、保護者が仕事、もしくは兄弟や親がパソコンを使用していて、その時間パソコンを使うことができない生徒がほとんどだという点です。大学生ではうまく使用できているという話も聞きます。


三つ目は、Google Driveやメッセンジャーに授業資料のPPTを貼り課題を提出させる方法です。顔を出したくない先生はこのような方法をとっています。PPTに声を録音させておくことによって子供たちは説明を聞くことができます。JLPTなどの試験を受けたい学生のグループを作り、そこに課題を提出すると一生懸命やってくれます。採点が大変で小さい画面を見ながら採点するので先生たちはみんなが目が痛いと言っています。

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全てをオンラインでやることから回線の問題やデータの容量制限が問題視されています。50名分くらいの宿題提出が来ると容量がいっぱいになってしまうので困っています。ほかの教科の先生たちともデータが共有されてしまうため、早くデータを消すようにと抗議の電話が来ることもあります。また、課題を出しても採点していない、という保護者のクレームも多いです。オンライン授業をみんな初めてなので、食わず嫌いの保護者や違うフォルダに宿題を提出してしまう人も多いです。そうなると、提出された宿題がどこにあるのか探し出すのは大変です。教員が課題を出したり、子供が何かをポストしただけで通知のお知らせが来るので2Gmailには毎日100件以上のメールが届きます。通知をオフにすると誰が宿題を提出しているのか判断するのが困難になります。

初中等においては、特に保護者との連携が大切になりますが、今すぐにどうこうするのは難しいのが現状です。対策として、私たちは自分たちのYoutube上に頑張って宿題をした子に対して保護者に確認を取ったうえで、その映像を載せるようにしています。それを見た子供がじぶんもやりたいとやる気を出してくれると嬉しいです。今のところは、私のクラスでは200人中10人弱ほどが宿題を提出してくれました。(小学校1~6年生)ほかの学校のモンゴル人の先生たちも多くても50%以下の提出率だそうです。

評価やテストに関しては、先学期のものを使い定期的にGoogle Formで小テストを行っています。高等教育機関ではZOOMを使用し、ノートに問題用紙を書かせ、問題をスクリーンシェアで見せているようです。時間になったら写真を撮って送ってもらうとのことです。テスト中は学生の顔がカメラに映るようにすることでカンニングの防止に努めているとのことですが、十分とは言えないようです。採点は自動でしてくれるので楽です。


3. Nihongo DE Ganbaru MON  【文責:佐藤慶一】

最後に私たちが作ったYouTubeチャンネルに関して少しだけ説明させていただきます。まず、作るに至った経緯ですが一人でオンライン授業をひたすら作っていくのは非常に精神的にも大変であるということが根本にあります。せっかく作ってもレスポンスがほとんど見られないので作りながら、需要があるのか、もっと出来ることがあるのではないのかと悩みました。日本人にとってはモンゴル語で訳や資料を作成するのが特に大変で、保護者からは何が宿題かよくわからないという意見が多かったです。また、他の科目では莫大な宿題が出ており、宿題をする時間がない。インプットばかりの課題に追われているということから、日本語を使いながら楽しく、学びのある授業をしたいと考え、このチャンネルを作りました。このチャンネルのコンセプトは外に出られない子供たちが家でも出来る実験や工作を日本語で学ぶというものです。身近な、簡単に出来るを目標に毎日投稿をしております。時には手品も行い、子供たちに「どうして、そうなるのか」を自らの頭で考えさせるということも行っております。見て考えさせる、自分の五感を使って実際にやってみる、ここにポイントを置いております。


また、学校間を超え、多くの先生方や子供たちにも見てもらうため、より多くの先生方に協力を仰いでいます。基本的には日本人2人(モンゲニ学校 中西令子 ノムトナラン学校 佐藤慶一)、モンゴル人1人(オロンログ学校 ブルガン)の計3人で行っていますが週に何回かほかの学校の先生たちにゲストで来てもらっています。その際に情報の共有を図っています。多くの学校の先生方から支持を得ております。先生たちも何をしたらいいのか分からない人も多いので、出来るだけ協力してみんなで乗り越えたいと考えております。


さらに、実際に作ってみた、やってみた子供たちの映像をYouTube上に載せさせてもらっています。もちろん、事前に保護者に確認を取っております。 それを見た子供は「自分もYouTuberになれるかな~」とスイッチが入り、より多くの子供たちが試してくれます。今のところ、100回を目指して続けようと話しております。自分たちにとっても勉強になるし、本当に作っていて楽しく笑顔が絶えません。

以下はチャンネルのURLになります。ご参照いただけますと幸いであります。

https://www.youtube.com/channel/UCbGc38Ts7gWMzucEY_gKXkA

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