11月に、イーストウエスト日本語学校の「俳句コンテスト」の選句をお願いしました。
たくさんの方に、選句にご参加いただき、感謝致します。本日、年末パーティーで表彰式がありました。以前にも書きましたが、選句はご近所にお住まいの方、近くにあるお店、ボランティアで来てくださっている方々、先生方やご家族等、さまざまな方がしてくださいます。その中から、たくさんの票を得た人から第一席、第二席、第三席と選ばれました。さらに、皆さんから頂いたコメントを参考にして、特に共感してくださる方が多かった句に「共感賞」、思わず笑いが出てしまう楽しい句に「ユーモア賞」が送られました。
第一席 秋寂し 月光を見る 国思う
曹 茂忠(中国・男性)
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第二席 紅葉降り 葉の音を聴く 歩き止め
黄 庭愷(台湾・男性)
第三席 鳥が飛び 舞い散る落葉 森の歌
楠 迪(中国・女性)
共感賞 母いつも 柿の苦さを 飲みこんだ
黄 小凱(中国・女性)
ユーモア賞 満月を 見上げて飲めば うまいだろう
金 東煥(韓国・男性)
ユーモア賞 酔ったまま 落ち葉に倒れ 星見よう
W.S.ディリープ D.S.(スリランカ・男性)
今回は、「共感賞」を取り上げてみたいと思います。まずは、
作った黄さんの声をお聞きください。
(表彰式の後、インタビューをしました)。
黄さんは、今年10月にイーストウエスト日本語学校に入学し、
『できる日本語 初中級』から勉強し始めた学生さんです。
まだ日本に来て2ヵ月半ですが、「日本の生活も日本語の勉強も、すごく楽しい。日本に来て良かったです」と笑顔で言ってくれました。
「母いつも 柿の苦さを 飲みこんだ」
嶋田: どんな気持ちで作りましたか。
黄さん:お母さんは、いつもおいいしいものを家族にあげて、自分はまずい物や残ったものを
食べています。お母さんは家族のために苦労しています。
私のお母さんもそう、そして、全部のお母さん、中国のお母さんはみんな、いつも、
子ども、家族のことを考えます。
(言葉が出ないので、紙に「比喩」と漢字を書きました。)
ああ、比喩、そうそう、比喩です。「柿」は「生活」のことです。柿の苦さは、
生活の大変さです。でも、お母さんは、大変さを全部飲み込んで、子どものため
に明るく頑張ります。
嶋田: 今、お母さんは中国で何をしていますか。
黄さん:今、55歳です。仕事を辞めました。
嶋田: どんな仕事をしていましたか。
黄さん:教師、中国語の先生でした。でも、もう仕事終わったから、今は、毎日、本を読ん
でいます。今は、もう、ゆっくりしています。
少し、選句してくださった方のコメントを記します。
◆忍耐と辛抱強い作者の母親の姿と重なったのでしょうか。母親のすごさを感じさせてくれる句です。すばらしい!
◆お母さんが苦労して自分を育ててくれた。そのお母さんが苦労を飲み込んだ。“苦労を飲みこむ”の表現がとても意味深いです。
◆お母さんの頑張っている姿を見ている様子が感じさせられます。
◆自分の経験と他者の気持ちを思う心がにじみ出ています。
俳句づくりは、全校あげて11月に実施するため、10月に入学し、『できる日本語初級』1課からスタートした学生さん達にとっては、日本語の学習を始めて1か月半程度。でも、知っている日本語を使って、それぞれ気持ちを表しています。それでは、10月に初級からスタートしたクラスの代表句を紹介しましょう。「くつろぐ」は、辞書を見て、自分の気持ちを表す言葉を選んだのでしょう。知っている言葉、辞書で調べた言葉を使って、みごとに自分の気持ちを表しています。
・好きな絵は 紅葉の赤と 君の顔
・秋のビル 木はまだ青い ざんねんね
・恋人と きれいな川で まるい月
・くつろぐね 星空をみる あきのそら
今年は、ご近所にお住まいの大石さんにもクラスの句会に参加していただきました。クラスの先生以外の方に、コメントをいただくのは、学習者にとってとても刺激になるようです。
また、ボランティア団体「風の会」にも参加していただき、みんなで色紙を持って楽しそうに記念撮影をしていました。こうした短い時間にできる「日本語を使った創作活動」が、さらなる学習意欲につながっていくのだと思います。(※ボランティア団体「風の会」は、もう20年近く、毎週火曜日の午前と午後に、「日本語サロン」を開いたり、学習者と一緒に「お出かけ」をしたり、イーストウエストの学生さんのために、活動を続けています)。