<『できる日本語』を使っている先生・学校の「声」⑤>高橋道恵さん(千葉科学大学留学生別科)

銚子にある千葉科学大学留学生別科で教えていらっしゃる高橋道恵さんから「声」が届きました。先日、研修に伺いましたが、「『できる日本語』に変えてから、先生方の対話が増えました」とおっしゃっていたのが、とても印象的でした。

 

<『できる日本語』を使っている先生・学校の声⑤>     (2017.11.5掲載)

      

 『できる日本語』に出会うまで

 

千葉科学大学留学生別科

 高橋 道恵

 

私たちの留学生別科は2010年に開学し、5年間『みんなの日本語』を使っていました。

1クラスに講師5人のチームティーチングです。いつの間にか、ヘッドの講師が作ったスケジュールに沿って、時計を見ながら授業スケジュールをこなすことが、私の授業の目的となっていました。授業は1コマ90分が4コマあります。午後の授業を聞く学生の眠たそうな目に「語学の授業ってもっと面白くていいはず。学生がわくわくしながら勉強できる授業にしたい」と思いつつ、時間に追われて授業をしていました。ある日、パキスタンの学生に「先生、教室で文の代入練習はよくできるけど、文の意味が全くわかりません」と言われ「私のやり方が問題かな」と反省し、「変えなくちゃ。でも、どうやって?」と真剣に考えました。

ちょうどその頃、同僚の講師に誘われ、嶋田先生の朝日カルチャーのセミナーを受け、『できる日本語』を知りました。「学習者の発話力を引き出す」「教師は教えるのではなく、学習者と並走していく」という嶋田先生のお言葉に、私は学生に文型を教え込もうとしていたことに気が付きました。そういう意図はなくても、自分がそうやって教えられてきたので、つい教え込む方向に行ってしまうのです。

翌年、嶋田先生のACTFL-OPI試験官養成講座を受講しました。受講後、授業のやり方が変わりました。学生から引き出す授業を心がけるようになりました。もう、ここまでくると、教科書は「できる日本語」以外考えられません。さっそく、ミーティングで2015年度の教科書として、提案しました。幸い、OPIに興味を持っている講師が複数いたのと、ほとんどの講師が本学で早稲田大学の川口先生のセミナーを受け『みんなの日本語』の問題点を知っていたことが追い風となりました。講師全員が同意し、真剣に取り組んでくれました。でも、初めての教科書です。どう使ったらいいのか、とまどいがありました。そういう私たち全員を嶋田先生は、快くアクラスに招いてくださり、教え方やポイントを教えてくださいました。初級、初中級だけでなく中級のときも、教えていただきました。さらに、ヘッドの講師だけ「イーストウエスト日本語学校」の授業見学もさせていただきました。

『できる日本語』にしたばかりの時は、絵カードとCDプレイヤーを使い慣れるのに精一杯でした。それで大切なことを見落としていました。たとえば、「やってみよう」の意図するところを把握せず、聴解問題と考えたり、「できる」を課によってはスキップしてしまったりしました。嶋田先生に注意を受け、「やってみよう」の聴解は次のタスクへの準備とヒントであることに注意して行いました。「できる」を新学期前に決め、しっかり授業でやったところ、今までになく、学生同士が仲良くなったのには驚きました。夏休み前には「みんなに会えなくなると寂しい」と言う学生までいました。

「できる」では外部の人や、学部の学生にも参加してもらうときもあり、かなり授業は盛り上がります。学部の留学生を呼んだ時には、先輩の日本語力に圧倒され「自分もそうなるんだ」と学生の勉強の励みになりました。私の家でパーティーをしたこともありました。『できる日本語』はまさしく学んだことを実践し、対話と繋がりを作ると実感しております。

講師としても学ぶことは多く、これからも『できる日本語』とともに進んでいきたいと思っております。

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